なぜ、東京都知事選には多くの人が立候補するのか 出馬は前回の22人を上回る史上最多となる見込み
NEWSポストセブン / 2024年6月19日 7時15分
さらに東京都は無党派層の有権者が多くを占め、浮動票も選挙戦を左右するので人気投票といった一面もある。
実際、お茶の間に顔が知られている有名人が選挙に出馬すると、街頭演説には多くのギャラリーが集まる。握手を求めて黒山の人だかりができたり、一緒に写メを撮ろうと長蛇の列ができたりする。多くのギャラリーが集まれば、政策を広めやすく、支持を得られやすい。
現職の小池百合子氏はニューキャスターから政界に身を投じた。蓮舫氏もグラビアアイドルとして活躍し、その後はニュース番組のキャスターを務めた。清水国明氏も「噂の!東京マガジン」といった時事問題も扱うテレビ番組で活躍している。
YouTubeやTikTok、Instagramといったネットの発信力が力を増している2024年においても、テレビに多く出演してお茶の間に顔を知られていることは選挙でプラスに働く。顔も名前も知らない候補者は、街頭で演説をしても道行く人たちに見向きもしてもらえない。どんなに素晴らしい政見を訴えても有権者の耳には届かない。選挙において知名度がない候補者は、大きなハンデキャップを負っている。
簡単には成功しない「売名」
筆者は有名・無名、政党支援の有無といった候補者のステイタスによらず、時間・体力・財力の許す限り多くの候補者を取材しようと努めてきた。なかには届出だけして選挙活動をしない候補者もいる。特に、都知事選は候補者が多く乱立するので、選挙期間中に会えない候補者は少なくない。
そうした候補者は当選する可能性が低く、一般的に“泡沫候補”と呼ばれる。筆者は候補者に対して敬意を払って”泡沫候補”という呼称を使わないことにしているが、なぜ当選する可能性が低いのも関わらず立候補するのだろうか。
すぐに思い浮かぶ理由は、都知事選に立候補することによって知名度を上げることだろうか。平たく言えば、“売名”ということになるが、よくよく考えれば都知事選に立候補しただけで世間に名前を売ることはできないことは誰でも理解できる。政見放送をきっかけに注目を集め、売名に成功したと言える人がいないわけではないが、ごく一部だ。売名なら、先にSNSで人気になることを狙った方がコスパはいい。
過去5回の都知事選に遡ると2007年が14名、2011年が11名、2012年が9名、2014年が16名、2016年が21名も立候補しているが、当選者以外で名前を覚えている人は何人いるだろう。相当な政治通・選挙マニアでなければ、せいぜい1人か2人だろう。都知事選後、大半の候補者は人知れず日常生活へと戻っている。都知事選に出ただけで、売名なんてできないのだ。
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