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作家・岸田奈美さんのエッセイが名門校の入試に相次ぎ出題 なぜ取り上げられる?本人に見解を聞いたら…「受験生のみなさんに、ごめんという気持ち」

NEWSポストセブン / 2024年6月18日 11時15分

 特に医学部は患者さんの気持ちや医療的なケアを考えないとならないし、そこで適性を見ることが必要ですよね。中学生にとっても、これから福祉について知っておくことは大事だから、時事問題として出しやすいのかもしれません。

 社会が今、バリアフリーのことや障害者、自分からは想像できない人の気持ちを考えましょうという流れになっているのだと思います。アルバイトをする、会社に入るといった社会に出ていく立場になったときに、障害者=感動の対象ではなく共生する視点が必要だという世の中へのメッセージなのかなと」

岸田奈美が考える「受験生に必要な力」

 岸田さんは、自身の作品が取り上げられた入試問題を、自信を持って解けなかったという。担当編集者と解答を導き出す過程で、受験生に必要な力に気づいたと話す。

「<『二人でわんわんと泣いた』とありますが、『弟』と『私』はそれぞれどのような気持ちだったと思われますか>という設問に、私もそこまで考えてないよ……と編集さんに言ったんです。そうしたら、無意識であれ、作者の気持ちは入っているんだよと返ってきて。

 編集者の仕事は、作者が文章化した気持ちが読者にきちんと伝わるか、読んだときに矛盾がないか精査することなんですよね。伝えたいことが途切れていたり、何を言いたいかがブレてしまったりしているときに、整理をしてくれる。私の担当編集者曰く、この編集目線というか、情報がエラーなく伝わっているかということを入試では聞いているそうなんです。

 素直に作者の気持ちを考えるのではなく、編集目線で『作者はこういうことを言いたい』『だからこの文章がある』ということを理解しているかを問われているのだと教えてもらったときに、なるほどなと思いました。

 本を読むときはなにを考えても自由ですが、入試においてはきっと設問の中から矛盾がない答えを導き出すことが重要なんでしょうね」

編集者目線は日本人全員に求められる能力?

 編集者目線が入試には必要なのだと語る岸田さん。この目線は、入試を終えたあとの人生にもきっと役立つという。

「人に何かを伝えたい時って、誰でも少なからず編集をしていると思うんです。バラエティ番組の『すべらない話』もそうだし、役所でなにかの助成金を受けたいときだって、自分のすべてを長々と話すのではなく、要点をまとめて『だからこれが必要だよね』『つまり言いたいことはこうだよね』とわかりやすく伝わるように編集して話しますよね。

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