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なぜ伊丹十三作品はネットフリックス配信をしないのか? 宮本信子、会長、社長が明かす「伊丹プロダクション」の経営方針

NEWSポストセブン / 2024年7月20日 11時15分

 伊丹プロダクションのように監督作すべての権利を自分たちで有しているのもまれだろう。玉置氏は、いまや全盛となった動画配信サービスに伊丹映画がない理由も教えてくれた。

「僕らからすると、配信は映画の“垂れ流し”に近いんです。洪水のように作品があって、ものすごい量の選択肢。観るほうは便利かもしれないけど、その中から選ばれなければいけない。そうじゃない、もっと大事に1本1本を観てもらえるような形の配信があれば、それは考えていきたいです。また配信の次の時代に変わる可能性もある。だから慌てる必要もないのかなと思っています」

 作品の送り手として深く考えた結果だった。10本もの映画を遺した伊丹だが、今後、新作が作られることはない。だからこそ“品位”を保つべく、あえて配信には“乗らない”。こうしたブランディングも、伊丹プロダクションが10本すべての権利を握っているから実現できたこと。

判断基準は「伊丹さんが生きていたら?」

 もうひとつの理由は、伊丹プロダクションが日本映画放送との縁を大事にしているからだという。同社は2022年に伊丹プロダクション全面協力のもと、全10作品の4Kデジタルリマスター化を実現。日本映画専門チャンネルで独占初放送するなど密接な関わりがある。玉置氏が語る。

「僕らは常に『伊丹さんが生きていたら?』を考えているんです。もし伊丹十三が生きていたら、どういう選択をするだろうか、が指針なんですね。このインタビューを受けるかどうかの判断もそうですよ(笑)。日本映画放送さんは、配信が普及する前から、すごく熱心に取り上げてくれていました。伊丹さんは1回信用するとどっぷりという人だったから、僕らもお付き合いを大事にしています」

 一度、信頼した人にはとことん仕事を任せたのも伊丹の流儀。そんな仲間に囲まれた伊丹の姿の中で、玉置氏にはもっとも印象に残っている姿があるという。

「伊丹さんっていつもニコニコしながら喜んでいた気がしますね。僕は伊丹組のスタッフしか知りませんけど、彼らも間違いないなく伊丹さんの笑顔を見たい、伊丹さんが喜ぶ姿を見たいと思っていたはず。喜び方が上手というか素晴らしいんですよ(笑)。

 僕がテレビの放映権の金額を交渉したときも、伊丹さんには結果を伝えるだけで『すごいね。シャンペン飲みましょう』と言ってくれるわけです。全部任せてくれて、本当に人使いも喜び方もうまい。一緒に仕事をしていて、嫌な思いは一度もしたことはないんです」

 途中「ある意味で伊丹さんの掌の上だったかもしれませんね」と話していた玉置氏。いま、伊丹のような大きな掌を持った逸材はどこにいるのだろうか。

※文中敬称略

取材・文/奥富敏晴

撮影/塩原洋

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