【独白70分】盟友・山崎努が明かした映画監督・伊丹十三との“濃い関係”「今でも、夢に出てくるよ」
NEWSポストセブン / 2024年7月22日 16時15分
俳優、エッセイスト、イラストレーター、テレビマンなど、数々の分野で類稀なる才能を発揮した伊丹十三。「映画は僕の全人生の煮こごり」と語ったように、彼が最後に辿り着いた仕事の集大成が映画監督だった。あまりにも不吉なタイトルで世間の度肝を抜いた初長編『お葬式』(1984年)の公開から40年。伊丹が絶大な信頼を寄せた俳優・山崎努(87)に在りし日の思い出を聞く。(崎は正式には「たつさき」)
「ものを作る人間同士の付き合いってね、濃いものがあるんです。必ずしも“仲良しさん”ばっかりで通すわけにもいかない。互いに自己主張して、うまく組めれば理想だけど。今、考えてもね。伊丹さんは僕にとっても特別な人、とても大事な人なんだ」(山崎さん。以下同)
年齢は伊丹が3歳上だが、映画デビューは同じ1960年。山崎が黒澤明の『天国と地獄』の誘拐犯役で一躍脚光を浴びた1963年には、伊丹も『北京の55日』出演でハリウッドへの進出を果たす。
「時代的に言ってもね。新しいタイプの俳優が出てきていい時期だったと思うんだ。それまでの職人的な役者や新劇の俳優とは違う。『今までにないタイプの俳優になりたい』と。それまでよしとされていた演技は、例えば500人に感想を聞いても、答えがひと通りしかないようなものなんですよ。だけどおかしいじゃないですか。人間が人間を見ていて、答えがひとつしかないって。
見る人によってみんな違うのが人間でしょ。見る人によってそれぞれ微妙に違うように、登場人物が生き生き見えることが大事なんですよ。これがみそなんです。でもそれまではそうじゃなかった。僕らの時代から変わってきた。500人が見たら500通りの答えがあるのが理想なんです。伊丹さんとは、そういうところで一致していたような気がするね」
「自分たちには面白い役が来ない」
しかし、俳優として演技することの喜びについては異なる考え方も持っていた。
「彼は『俳優はどんなにうまく演じても、自分の姿が見えない。だからストレスが溜まる』と考えた。でも僕はカメラの前でも舞台の上でも、前後左右上下どこでも行けるような、自由で、理想的な状態があると思う。相手役との呼吸が合ったり、何かいい風が吹いたり。そういう瞬間ってあるんですよ。調子のいいときは、天にも昇る気持ち。僕には俳優の喜びはある。彼は自分で見なきゃ納得できない。伊丹さんらしいでしょ」
共演回数は少なかったが、ふたりは「自分たちには面白い役が来ない」という不満で気心が通じ合う。ならば自分で映画を作ると動いたのが伊丹だった。そして生まれた映画が『お葬式』だった。伊丹の妻であり、女優の宮本信子の父の葬儀が着想となった本作では、主役の夫婦を宮本と山崎が演じた。
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