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【老老介護殺人】視力を失い、認知症が進んでしまった妻の節子さん デイサービスで家をあける近隣高齢者との浮気を疑われ… 「白杖で叩かれても周囲に頼ることができなかった」 涙ながらに吉田友貞さん(80)が振り返る殺害直前の介護の日々 

NEWSポストセブン / 2024年7月30日 10時56分

 買い物に行っただけでも浮気を疑われたと吉田さんは話す。

「スーパー2軒ぐらい寄って1~2時間かかりますよね。すると『どこに行っていた。遅いじゃないか』と始まってしまう。認知症の影響とわかっていても何度もあると辛くなるんです。正論が通らないから反論のしようもないんです。『私が寝ている間、どこに行ってるんだ。隣の奥さんとおかしいんじゃない』と言われたり、デイサービスで家を空けている近隣の方との不倫を疑われたり……。

 一方で、調子のいい時は『買い物行ってきてくれてありがとう。私が足引っ張ってるからごめんね』……とか言うわけなんです」

徘徊が始まり、エスカレートしていった行動

 さらに徘徊も始まった。

「俺はずっとシルバー(人材センター)に行っていたんだけど、節子は去年の5月くらいから1人で勝手に外に出ていき始めちゃって。買い物に行って、帰って来ないんです。2階の人が探してくれたりさ。さっきあの辺にいたよとか。だんだんそれが増えてきたもんだから、1人にしておけなくなってね」

 定年退職後の生き甲斐だったというシルバー人材センターの仕事も辞めた吉田さんだったが、節子さんの行為はエスカレートしていった。

「家を出て行こうとするから、止めるじゃない。そうすると怒って白杖で俺を殴ったりね。玄関にチェーンをかけといても、隙間から白杖を出してバタバタ叩いて『助けてください』って言うんだよ。周辺の人がびっくりしてしまって。

 表に出たら出たで、近くにいる工事の人のところに言って『すみません、警察に電話してください』とか言ったこともあったな。奥さんがこんなふうになっている俺もみっともないけれども、節子本人もみっともないわけじゃない。2人とも見栄っ張りだったからね。俺は節子のかっこ悪いところを人様に見せたくないと思っていたし、節子だってそうなんだろうって」

 壮絶な生活を振り返る吉田さんは、聞き取るのが困難なほど、細い声になったり沈黙することも増えた。

「本人が嫌がってるからヘルパーや外部に頼るのをやめたというのは、優しさじゃないね。やっぱり古い考えだった。嫌がっても、2回目も心療内科の先生に来てもらっていればよかった。俺が引っ張っていくぐらいの、その強さがなかったんだ……」

 “老老介護”の現場では、高齢者が他人の手を借りることを「恥」と考え、自分たちですべてを抱え込み、取り返しのつかない事態になることがしばしばある。吉田さんもまさに、「家庭の問題は家庭内で解決する」ということに固執してしまったようだ。

 吉田さんと節子さんは、周囲に助けを求めることができずに、いよいよ“運命の日”を迎えることになる──。

(第3回に続く)

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