1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

【パリ五輪柔道「待て」の合図後も絞め技で失神、一本負け】「国際審判員の技術レベル」と「男子の試合を女性審判員がジャッジすることの是非」レジェンド国際審判員の見解

NEWSポストセブン / 2024年7月29日 19時15分

 言葉の壁だけではなく、「国籍の壁」をめぐる騒動も体験した。

 1995年の福岡国際女子柔道選手権48㎏級の決勝、田村亮子(現在は谷亮子)とサボン(キューバ)のカードで正木は主審を務めた。

「大会名は“福岡国際”ですが主催は全柔連だったため、審判員はほぼ全員日本人で、決勝の副審2人も日本人でした。ところがキューバ陣営から“日本人選手が出場する試合なのに、なぜ主審が日本人なのか”と抗議を受けたのです。“五輪や世界選手権ではないので外国人の審判員を招くことが難しく、日本人の審判をローテーションから外せば審判員の数が足りない”と説明し、了解されました」

 だが、こうした指摘を踏まえて「試合に出場する選手と同じ国籍の審判は避けよう」ということになり、五輪では選手と同地域の審判まで外すようになった。

「選手や観客に“自国選手を有利にしている”という誤解を招かないためにやむ得ない措置だと思いますが、皮肉にもシドニー五輪の“世紀の誤審”のようなことを引き起こす原因にもなっている。特に男子の国際試合の審判員には、日本人に限らず“元トップ選手”が少ない現実があります。一方、女子の国際審判員は五輪のメダリストが多く、審判としての技術も高い。本来は男子の審判もそうあるべきだと思います」

 そうした事情も影響しているのだろうか、近年は女性審判が男子の試合の審判員を務めることも増えている。2021年の東京五輪では、個人種目の大トリとなった男子100㎏超級決勝の主審を天野安喜子(国際柔道連盟審判員、東京五輪では唯一の日本人審判)が担当した。だが、正木は否定的な見解を持つ。

「どんなに優秀でも女性審判が男子の試合を担当するのは反対です。審判の人員の兼ね合いもあるとはいえ、その逆(男性審判が女子の試合を担当)も賛成できない。男子選手と女子選手では力も動きも違う。男子は男子の試合、女子は女子の試合の審判をやったほうがいいと考えています」

(了)

※『審判はつらいよ』(小学館新書)より一部抜粋・再構成

【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。主な著書に金田正一、長嶋茂雄、王貞治ら名選手 人のインタビュー集『巨人V9 50年目の真実』(小学館)、『貴の乱』、『貴乃花「角界追放劇」の全真相』(いずれも宝島社、共著)などがある。柔道の審判員のほか、野球やサッカー、飛び込みといった五輪種目を含む8競技のベテラン審判員の証言を集めた新刊『審判はつらいよ』(小学館新書)が好評発売中。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください