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【北陸新幹線の敦賀~新大阪延伸計画】建設費が想定の2倍の3.9兆円に膨らみ費用対効果激減 整備委員会議員は「そんな数字は意味ないから」

NEWSポストセブン / 2024年8月7日 10時59分

 北陸新幹線でも同様の不安はないのか。与党整備委員会委員長の西田昌司・参院議員に直撃すると、「まだ国交省から聞いていない」と断わった上で、懸念を一蹴した。

「建設費2兆円が4兆円になったとして、何の関係もないよ。経済がインフレに転じているわけだから、(建設)単価が上がってあたりまえ。政府が金を出すことで経済は進展するわけで、止めること自体が間違っている」

──着工後に7兆円、8兆円に増えても?

「同じですよ」

 積極財政派の西田氏は「国の借金は国民の資産」という考え方の持ち主。国の借金が将来世代の負担になることを懸念する立場とは、議論がなかなか噛み合わない。だが、聞かないわけにいかないのは前述の朝日記事が「国交省と与党の関係議員は、費用対効果の計算方法を変更する方向で調整中」と報じた点だ。事実であれば、過去の事業との客観的な比較などが難しくなる。

──B/Cが1を切るのではないか。

「1以下であろうが10あろうが、やるべき事業はやるべきなんだよ、当たり前じゃない」

──いくらに増えても断行されるなら、新たな計算方法でB/Cを出す必要もないのでは?

「それも含めてなくしたらいいんですよ。そんな数字(従来の計算方法のB/C)は意味ないから」

──としても従来の計算も公表すべきでは?

「(従来の計算は)間違いがある、意味のない数字。北陸新幹線は東京・大阪間の鉄道を日本海側にも通して(災害時の)ダブルルートができるっちゅうことに意味があるんだから、B/Cをやるにしても、当然東京と大阪間(を含めた便益)で見なあかん」

 事業ごとに場当たり的に鉛筆を舐めて計算すれば、客観的指標ではなくなる。国民にメリット・デメリットが見えなくなれば、透明な議論の前提を損なうのではないか、という懸念が残った。

 いま、与党・自民党の政治家が数字を無視して豪腕で事業を推し進めれば、昭和の国鉄や道路公団の赤字タレ流し体質が復活するだけで、時代錯誤の誹りを免れない。資材高騰や人口減が避けがたい以上、政治家は批判の矢面に立つ覚悟で、“コストがかかってもその事業が必要な理由”を国民に丁寧に説く責任こそ問われる。そうして合意を得る作業を通じてしか、新しい公共事業の考え方は見えてこないのではないか。

【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。近著に『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社)。

(了。前編から読む)

※週刊ポスト2024年8月16・23日号

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