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99歳で死去の桂米丸さん 新作落語に懸けた人生「奇抜なネタを作っても現実が追い付いてくる難しさ」を経て辿り着いた「人間をテーマにする」という考え方

NEWSポストセブン / 2024年8月8日 11時14分

 新作落語は「10本作って1本が残ればいい」と話す米丸さんだが、「10本に1本がウケたとしても、生活様式や社会がどんどん変わっていく…。だから今の話(流行)は新作ではしないのが鉄則なんですが、今の話がウケるんですよね」とジレンマに陥るという。

「以前、オレオレ詐欺のネタをやったんだけど、手口がどんどん進んでいるので、ネタが追い付けなくなってしまう。泥棒の話でも鍵がかかっていても、今は家の中のデータを盗んでしまう。耳鼻科に行くと、鼓膜に穴が空いているという。細胞が再生して障子みたいに張り替えられたらいいのに…と先生と会話したことをネタにしたが、半年もすれば医学が進んで現実のものになってしまう。自動車だって自動運転の話を作ったことがあるが、それが現実になってしまったからネタにならない。昔は奇抜なことは、客席から“そんなバカな”と受け入れられないので新作にならなかったが、今は奇抜な話がウケるけど、すぐに現実が追い付いてしまう。そんなことの繰り返しですね。

 自動車が自動運転になり、電話番号を入れるだけでそこに連れて行ってくれるようになると話していたら、その通りになっている。ナビの指示通り運転しないと“なぜ曲がらないんですか”と指導されると話していたのに、今は“ここです”と連れていってくれるんだからね。大阪では関西弁のナビが活躍すると話をしていても、現実が追い付いてしまう。いろんなものに加速度がついて凄い世の中です」

人間の進歩は遅いから、新作のネタになりやすい

 そこで行き着いたのが「人間をテーマにした新作」だったという。

「ケチな男の話や嘘つきの話とかがいい。それをオーバーに描く。師匠の“ラーメン屋”や私の“食堂風景”“びっくりレストラン”というのがそういう人間観察の話。人間の進歩が遅いということなんですけどね。

 だから私はひとりでいても退屈しないんですよね。ひとりで映画を観ているとネタが浮かんだりしますね。風景物は楽だし、ウケた。相撲風景とかもそうですね。電車風景、風呂屋風景となんぼでもある。ボーッとしてられないんですよ。

 90歳になったからと休んでいる場合じゃないですからね。どんどん作らないと…。ネタより現実のほうが前に進んでいるので大変だし、ウケなければどんどん捨てなければならない。それだけに作ったネタがウケた時の楽しさ、喜びは大きい。若い者のために高座を減らそうと思っているんですが、ネタができちゃうとみんなの前で話したくなってしまう。因果な商売です。

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