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書店経営者・辻山良雄さんによる“書店経営者との対話集”「解像度の高い仕事の話って、どんな仕事の話でも面白いと思う」

NEWSポストセブン / 2024年8月25日 7時15分

 インタビューは、スタジオジブリの雑誌『熱風』に連載された。

「『熱風』で何か書きませんか、とお話をいただいてから、何を書けばいいのかが決まらず、1年近くモヤモヤ考えていました。自分の店で起きるできごとは、別の媒体で書いていますし。

 2016年にこの店を開いて、仕事にも慣れて、これでいいのかなと思うようになったんです。コロナ禍でなかなか外に出られない時期とも重なっていたので、他の人の言葉を聞いて、この仕事がどういうものか考えなおすことならできるんじゃないかと今回の旅を思いつきました」

 連載時のタイトルは「日本の『地の塩』をめぐる旅」。「地の塩」とは聖書に出てくる言葉で、派手さはないが世の中に必要なものという意味があり、書店に対する辻山さんの思いがうかがい知れる。

自分を大切にしながら働く人たちがここにいる

「連載中、『辻山さんの連載、読んでいます』と言われることはあっても、『日本の「地の塩」……』と正しくタイトルを言ってもらえることはなかなかなくて。やっぱり言葉になじみがないんですかね。私も本を売る立場の人間ですから、本にするときに変えた方がいいかなと思いました。

 いまの時代って、人間を人間として扱わないところがあります。たとえば数字みたいに扱ったり、AIに置き換えればいいんじゃないかと考えたり。働く場面で人間性が次第に失われつつあるいま、自分を大切にしながら人とのかかわりを持てる働き方をしている人がいる。手前味噌かもしれませんが、そういうわれわれの仕事の実相を知ってもらうことで、何かのヒントになればいいなと思います」

 同業者どうしの率直なやりとりが興味深い。たとえば京都の丸太町にある誠光社の堀部篤史さんの「個人として生きたい人と、それを消費しようとする人たち。それって戦争みたいだなと……」という言葉。SNS用に写真を撮ろうと個人の店に押しかける人たちについて、見えているようで見えていなかったものを見せられ、どきっとした。

「京都の人は一見さんに対して木で鼻をくくった対応をすると言われたりしますけど、一方で仲間どうしの絆がしっかりあって、自分たちの生きる場所を守るみたいな気持ちが強いように思います」

 インタビューする側の辻山さんが逆に質問されることもあり、話はどんどん深く掘り下げられていく。

「解像度の高い仕事の話って、どんな仕事の話でも面白いと個人的に思っています。同じ仕事の人間どうしですから、リアルな話がガツンとできた。話を聞いているときはぼんやりした印象だったのに、文章に起こしてみたら、すごく光る言葉が多くてびっくりしたこともあります」

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