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《追悼》知の巨人・松岡正剛さん、週刊ポスト連載最終回を振り返る「日本の大切な面影がどのようなものであったか」現代に問う課題は重く響く

NEWSポストセブン / 2024年9月3日 11時45分

 焼跡も琉歌も、幕末維新も室町文化も、静御前もアテルイも面影だったはずだ。そろそろこれらを束ね、つなげた“面影ネットワーク”が浮上すべき時が来ている。

〈御簾(みす)は、神前、宮殿などで使う高級な簾(すだれ)。細く削った竹を赤い絹糸で編み、綾、緞子(どんす)などで縁(へり)をつけたもの。簾には、この縁がつかない。また、簾は日よけに用いるが、御簾は境界に用い、寒風をさえぎり、外見を避ける。一般に普及したのは室町時代。寝室ではひさしの内側、母屋では外側に掛け、御簾内の男女同席は、親密な関係でなければ許されなかった〉

“禅問答”のようなアイデア打ち合わせ

 連載『百辞百物百景』の撮影を担当した元小学館写真室のカメラマン・太田真三が初めて松岡氏に出会ったのは、東日本大震災直後のことだった。

「連載の方向性を詰めるために訪れた青山の事務所は、何万冊という本に囲まれていて圧倒されました。打ち合わせでは震災も話題にのぼり、『日本を新たに見直そう』というコンセプトが決まりました」(太田、以下同)

 第一印象で強く残ったのは鋭い眼光。それでいて、丁寧な話しぶりに思わず惹き込まれたという。

「撮影した写真を見せた時に、松岡さんがポロッとこぼす『これ、いいんじゃないですか』というのは最大の褒め言葉。とても優しい言い方なんです。普段笑わない方ですが、時折見せるニヤッという笑顔が魅力的でした」

 松岡氏は言葉の意味や最近話題になっていることをホワイトボードに書き込み、おおまかなアイデアを出していたという。

「まるで禅問答のようで、難解。ほとんど理解できませんでした(笑)」

 言葉が決まり太田が撮影する、という進め方で、撮影する被写体について松岡氏から直接的なオーダーはほとんどなく、打ち合わせから得たインスピレーションを頼りに自由に撮影させてもらった、と振り返る。

「日本を新たに見直す」ことを主眼に続けた連載は100回を数えた。最後のテーマは「面影」。「われわれは日本の大切な面影がどのようなものであったかを、いささか忘れてしまっている」──“知の巨人”が現代に問う課題は重く響く。

【プロフィール】
松岡正剛(まつおか・せいごう)/編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。ブックアーカイブ「松岡正剛の千夜千冊」は1500夜を突破。世田谷区赤堤通り・ISIS館では「蘭座」「輪読座」「参座」「そ乃香」「門前指南」など、公開イベントを精力的に実施。

写真/太田真三 取材・文/小野雅彦

※週刊ポスト2024年9月13日号

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