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《伝説の女性編曲家・山川恵津子さんインタビュー》「小泉今日子の『100%男女交際』は59時間不眠不急の“修羅場”を経て完成した」

NEWSポストセブン / 2024年9月6日 16時15分

「編曲は並大抵ではない労力がかかるんです。それでいてどんなに大ヒットしても、インセンティブが支払われることはなく、1曲20万〜30万円で買取契約というのが相場。

 なぜこんなに編曲家の権利が弱いかというと、まだモノラルレコーディングの時代のこと、編曲家は存在するもののレコーディングスタジオに譜面を届けるにとどまり中に入ることなく、代わりに指揮者が現場でその仕事を担っていた歴史があるそうで、そうして編曲という作業が曖昧に始まったせいだと言われています。それとコンサートやテレビ番組で演奏する際、アレンジを変えることも多いから、1つの編曲に決めきれないというのもあるのかもしれません。そういう意味で、好きじゃないとできない仕事ではありますね」

 ただでさえ女性の少ないハードな現場であるうえに、複数の案件を掛け持ちできるスピード感と胆力がなければ自立は難しい職業だといえる。それゆえに苦労しつつも、山川さんは「マイルール」をもって果敢に道を切り拓いてきた。

「まず依頼されたら締め切りを守ること。破ったら次がないですから。病気とか自己都合でキャンセルしたこともありません。

 そして『そこまでの仕事じゃないから適当で』とか『○○と同じでいいよ』と言われたとしても、120%、200%の力を尽くすということ。編曲の仕事は多岐にわたり、歌謡曲だけでなくアニメの劇伴もあればデパートで流すためのBGMのような自分の名前が出ない仕事だってある。だけど依頼してくれる人は私だとわかっているわけだから、その人たちに山川に頼めば落とさないし、失敗がないし、依頼した以上のことをやってくれるって思ってもらいたい。それでも力を尽くして喜ばないかたはいないじゃないですか。どうしても立て込んでいるときは力及ばずということもあったと思いますけど、自分の中での合格ラインというのは絶対に守ったし、そのラインはプロが見ればわかるんですよね。

 100%じゃ減っていくだけだから、120%、200%と常に心がけていないと仕事をもぎ取れないと思うんです」

若者に「一歩踏み出す」大切さを届けたい

 フットワーク軽く積極的に、という姿勢はプライベートでも変わらない。家電ショップで新しい機材をチェックしたり、SNSで若い同業者とやりとりをしたりは日常茶飯事。山川さんのもとには「ボカロP」をはじめとする若い世代の音楽家が多数集まる。

「時代に合った音というのはあるので、常に感性をアップデートし続けないといけないですし、そもそもクリエイティブな現場では、年功序列ってないんですよ。10代20代の音楽家と横並びで仕事をして、“なんか古い”ってなったら振り落とされちゃうだけですから。でもそれとは別軸で、これまで培った歴史だったり、昔の良いところは若い子たちにもどんどん伝えるべきだと思っています。

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