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《デビュー35周年》今なお熱視線を集める漫画家・安野モヨコ 幅広い作品に共通して描かれる“女の生き様”とそれを支える“欲望”

NEWSポストセブン / 2024年9月7日 11時15分

「1998〜2003年にかけて美容雑誌で連載されていた『美人画報』も、いまでも何度も読み返しますがいつ読んでも夢中になってしまう。ダイエットやファッション、メイクについて描かれていたものなので情報そのものは昔のものなのですが、廃れないんです。

 それは、『美人画報』が単にブームやトレンドを取りあげているからではなくて、安野さんの持つ美意識が詰まっているから。キャラクターの解像度が高いことと通じるかもしれませんが、安野作品は表面的ではないリアルなキャラクターの生き様が描かれているんです」

 だからこそ、冒頭にあるように時代を超えてなお、描写やセリフが決して古くさくならない。それも安野作品に私たちが心惹かれてやまない大きな理由だといえるだろう。自身を「安野先生の作品で人生が変わった」と語るほどの安野ファンで、東北芸術工科大学准教授のトミヤマユキコさんが語る。

「安野先生の漫画は『ハッピー・マニア』のようなラブコメから、『働きマン』のようなお仕事ものまで幅広いジャンルがある。その中で共通しているのは、“女の生き様”と、それを支える『欲望』がしっかりと描かれていることです」

欲望に呑まれると女は破滅する

“究極のダイエットコミック”とも名高い『脂肪と言う名の服を着て』では、ふくよかな体形を気にする主人公・花沢のこがダイエットにのめり込み、やせることにとりつかれていく様子が生々しく描かれる。同僚や彼氏から容姿を揶揄されないよう始めたはずのダイエットに心を蝕まれ、何もかも失う結末は、決して読後感がいいとはいえない。

「“あと○kgやせたら好きな服が着られる”といった自分軸の欲望ではなく、《やせられれば全てが変わるはずなの やせさえすれば何もかもすっきりとウマくいくはず 美しくて楽しくて満ち足りた日々がやってくる》と、やせること自体が目的になり“やせてどうなりたいのか”という本音を見失った結果、自分の欲望をコントロールできなくなってしまった。欲望が持つ“影”の面からも目をそらしてはいけないんだ、と感じます」(トミヤマさん・以下同)

 心をえぐられるのは、無理なダイエットの結果が見え始めた「のこ」に周囲がかけた言葉だ。

《気持ち悪い》
《やせたからって何も変わんないのよ》
《あんたは醜いの》

 いつの時代も脈々と繰り広げられる女同士の嫉妬や差別、マウントの取り合いが端的かつリアルにあぶり出され慄くほど。やせることに執着する「のこ」も、常に自分が優位に立っていなければ気がすまない同僚も、己の欲求にからめとられて破滅していく様が強烈に、また容赦なく描かれている。

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