【逆説の日本史】「新ロシア帝国」の成立を阻止すべく「皆殺し」にされたニコライ2世一家
NEWSポストセブン / 2024年10月14日 16時15分
ただ、この二月革命はフランス革命と同じくブルジョアジーによる専制政治打倒であり、共産主義体制をめざすものでは無かった。また、このとき各地に自然発生的に生まれた労働者と兵士の合同組織をロシア語で「ソビエト」といった。のちに国号が「ソビエト連邦」になるのは、それが由来である。
当初成立したこのブルジョワ政権は、弁護士出身のアレクサンドル・フョードロヴィチ・ケレンスキーが首班となり、ケレンスキー政権と呼ばれたが、この二月革命は長続きはしなかった。戦争継続の姿勢を取り、国有財産の分配も徹底したものでは無かったからだろう。そこで、弾圧を逃れてスイスにいた革命家ウラジーミル・イリイチ・レーニンは、「敵の敵は味方」とばかりにドイツと交渉しロシアへの帰還を支持するよう求めた。
前にも述べたように、ドイツはロシア攪乱の好機と考え、レーニン一行を「封印列車」でロシアへ送り込んだ。ロシアに戻ったレーニンは、その後紆余曲折はあったものの同士のボルシェビキ(本来は「多数派」の意味)のリーダーとなってケレンスキー政権を打倒し、新たな共産主義に立脚する政権を樹立した。これが十月革命であり、ソビエト連邦の始まりである。
ただし、ソビエト連邦はすんなりと成立したわけでは無い。まったく新しい理念の国家を作ろうというのだ。ついていけない者もいれば、徹底的に反対する者もいる。そこで一九一七年から二二年までの五年間、ロシアは内戦状態となった。共産主義を象徴する色が「赤」であるため、ソビエト連邦を支持する側は「赤軍」、ロシア帝国を支持する側は「白軍」と呼ばれた。
また、帝政を支持するロシア人は「白系ロシア人」と呼ばれた。いまでもときどき誤解している人がいるが、これは人種的な呼称では無い。白人であろうと黄色人種であろうと、ロシア帝国を支持するロシア人のことを「白系」と呼ぶのだ。
ただ、同じく滅んだ清帝国の場合、孫文が理性的な措置を望んだこともあり、さすがの袁世凱も「皇帝一家皆殺し」は実行しなかった。何度も説明したように、袁世凱は孫文から「中華民国の総統」の座を受け継いだとき、すでに「新中華帝国の皇帝」になる野望を抱いていたと考えられるのだが、それでも「清王朝の皇族皆殺し」に走らなかったのは、孫文の時代から革命運動のスローガンとして「漢民族の(支配)復興」が掲げられていたからだろう。
清の皇族はすべて漢民族とは違う満洲族だからだ。つまり、王朝復興を掲げて清の皇族を立てても、漢民族の支持は得られない。逆に言えば、だからこそ満蒙独立運動(実態は清朝再興)は日本人が主導することになり、最終的には満洲国の建国にまで進んでしまったのである。
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