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「嘘」自体を楽しむフェイクドキュメンタリーの世界 意図的に仕込まれた“余白”を視聴者が考えてみんなで補完していく“共犯関係”

NEWSポストセブン / 2024年10月25日 11時15分

 こうして「どこからが嘘なのか」「どこまで嘘が本当に見えるか」「どれくらい嘘の世界に没頭できるか」を楽しむ「嘘が混じっていることが自明」のコンテンツとしてフェイクドキュメンタリーは花開いた。『タイムスクープハンター』(2009~2015年、NHK)や『山田孝之の東京都北区赤羽』(2015年、テレビ東京系)といった、かつて「川口浩探検隊」が持っていたデタラメな悪戯心を継承しつつも、緻密な作り込みで精緻な世界観を構築した作品が生み出されていった。

 テレビ番組のみならずイベントでも異物感丸出しの不気味な作品を生み続けているテレビ東京・プロデューサーの大森時生は自らの作品について次のように語っている。

「僕が作ろうとしている映像や違和感は、テレビの中ですごく異物になりやすい。ちょっと余白をあけて、視聴者に補完してもらうというか、自分で考えてもらう。そういう余白があるから、SNS上で感想をつぶやいたり、周りの人に『見てよ』って勧めていただいたりして、ありがたいことに話題にしていただいている」

 SNS上で何かを言いたくなるというのが、重要なポイントだろう。昨今のいわゆる考察ブームと相まって、その「余白」をひとりで、ではなく、みんなで埋めていく。だから話題はより広まっていく。その主体性が幸福な“共犯関係”を生んでいくのだ。

フェイクドキュメンタリー手法の番組

●『イシナガキクエを探しています』(2024)
電話番号も公開した「嘘の公開捜査番組」

 55年前に突如姿を消した女性「イシナガキクエ」を探し続けた老人・米原実次が志半ばで亡くなったため、その遺志を継いで捜索するという、公開捜査番組を模した番組。スタジオ後方には電話オペレーターも並ぶ。

●『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』(2021)
包丁・血・家庭不和……不審すぎる 「大家族密着バラエティ」

 BSテレ東にて4夜連続で放送。「悩める奥様の元に、Aマッソが芸能界のおせっかい奥様を派遣!」と銘打たれた「笑いあり、涙ありのハートウォーミング」な主婦向けバラエティ。しかし、次第に不穏な展開に……。

●『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』(2022)
コンプラ必至の昭和深夜バラエティから“呪い”が伝播

 いとうせいこうが司会を務める、最近よくあるアーカイブ紹介系番組。いかにも“昭和”な架空の番組『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』が発掘されるのだが、それを見ていくうちに奇妙なことが起こり始める。

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