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臨床心理士・東畑開人さん『雨の日の心理学』インタビュー「経験を重ねると、やっぱり大事なのはバランスだなと思う」

NEWSポストセブン / 2024年11月1日 16時15分

「心って、気候と重ねて語られることが多いと思うんですよ。心が曇っているとか、晴れ晴れとするとか。

 天気の気は気持ちの気でもありますし、奈良時代、平安時代ぐらいから、世界の質感に自分の心の質感を重ねる想像力ってずっと変わらずあるものなんじゃないかと思うんですよね」

 5日間続く授業という設定で、「こころのケアとはなんだろうか」から始まり、「晴れの日」のケアとは、「雨の日」とは、と続いていく。

「ケアの本ってたくさん出ていると思うんですけど、元気な人がもっと元気を出すための自己啓発書か、病気の人にどう接するかの本の、どちらかになりがちです。『晴れの日』の本か『雨の日』の本かってことなんですけど、人は晴れの日と雨の日を行き来しながら暮らしているんだということをぼくは一番言いたかったですね。ふつうに暮らしているときは、みんな結構、きちんとケアできているのに、時々、雨が降って、相手のことがわからなくなってしまう。そういうときにどうしたらいいんだろう、みたいなことがこの本の大きなストーリーになっています」

「PSポジション」のときにメールを書いてはいけない

 ケアをする人が元気じゃないとケアできない、という思いが根底にある。

「この本では、結構、技術的なこともいろいろ細かく書いています。技術というと小手先の話ではあるんですけど、たとえば包丁研ぎの職人が研ぎ方に一家言あるみたいに、それぞれの技術にその人らしさが表れるじゃないですか。具体的な技術を、何を考えながらそうしているかを書くことで、結構哲学的な話になっていくんじゃないかと思ったんです」

 実際にオンラインで行われた授業の内容がもとになっているが、書籍化にあたって全面的に書き直したそうだ。

「本にするために編集者とやりとりしてわかったんですけど、ぼくってものすごく人にわかってほしい人間なんですよ。考えていることをわかってもらえないのが苦しくて、『これだとわかってもらえないに違いない』みたいな強迫観念が生まれてきて。絶対にわかってもらえるようにしたいという思いが強いから話もくどくなるし長くなるんですよ。とはいえ、あまりくどいと読む気をなくすじゃないですか。そのあたりを考えながら書き直しました」

 バランスのいい本でもある。わかりやすくて考えさせる。面白くて具体的にも役に立つ。バランスという言葉は本の中にも出てくる。

「結局、ケアってバランスなんですよね。若いときはバランスって言ってる人は軟弱だ、なんて思ってたんです。ふざけるな、もっとロジカルに話せよ、なんて思ってたんですけど、経験を重ねていくと、やっぱりバランスだな、と。

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