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横関大さん、最新刊『誘拐ジャパン』インタビュー「現実の犯罪とは一線を画す、芸術点のある犯罪小説を描きたかった」

NEWSポストセブン / 2024年11月8日 16時15分

 といった議員なども。“あぁ、あの一件!”と即座に思いあたってしまう、現実社会とリンクした描写も積極的に盛り込まれている。

「政局への関心は人並みではありますが、この作品はミステリーであると同時にエンターテインメントでもあります。現代の政治への皮肉や社会風刺として、海外へ研修に出かけた女性議員の実態やコロナ禍で銀座のクラブ通いが問題になった議員といった、時事ネタを交えました。

 面白かったのが、内閣支持率が20%を割ったらまずいと書いていたら、裏金問題などの発覚で岸田内閣の支持率が10%台へ突入。現実の政治が小説の先へ行ってしまったことです。フィクションの政治家のほうがパーティー券のキックバックなどしないぶん、ましかと。執筆しながら日本の政治にある種の奥深さを感じてしまいました」

 420ページという読み応えのある物語は、桐谷家や総理周辺の関係者、警察、マスコミ、そして犯人グループと、多様な視点が交錯しながら展開していく。横関さんにとってこれほど視点の多い小説を描くのは、初めての試みだった。

「登場人物の視点が多いと読んでいて頭が混乱しがちですが、今回は多角的に誘拐事件を描いたほうが面白くなるのではと、挑戦してみたんです。結果、たくさんのキャラクターを描くことができたのでとても楽しかった。人物造形は綿密に計算せず、書き進めていくうちにキャラクターが個性を発揮しました」

 視点が多いことでテンポよく展開し、登場人物が入れ替わることで誘拐事件の実態がじわじわ見えてくる。静岡県の富士宮市役所に勤めながらミステリー作家の登竜門とされる江戸川乱歩賞に挑んだ横関さんは、元公務員として、執筆中には総務省の官僚にシンパシーを感じたと明かす。

 今作では、前代未聞のユニークな企画も連動していた。ブックデザイナー・鈴木成一さんが東京・下北沢の書店B&Bで開いた「超実践 装丁の学校」に協力し、20人弱の受講者らによる作品から実際の装丁を決定したのだ。選考には横関さんも加わり、最優秀賞に輝き本作のカバーを飾っている、佐々木信博さんの装丁を推したという。

「デザインそのものがいいなって。同じような装丁を他で見たことがなく、目新しさにも惹かれました」

担当編集者と二人三脚ではなく今作は受講者たちと

 装丁のワークショップは今年の6〜8月に行われ、受講者による解釈は作品にも反映されたとか。

「帯にある《読んでるあなたも共犯者?》というフレーズは、ある受講者のかたの『誰一人欠けても誘拐は成功しなかったから、“みんなが共犯者”なのかな』という発言から生まれました。本作品のエピローグに収録された、事件の1年後についてもそのひとつ。WEBマガジンでの連載を単行本へブラッシュアップしていく段階で、担当編集者から他の人物のその後も知りたいとリクエストがあって大幅に書き足し、ある登場人物のエピソードでせりふに『共犯者』が出てきます。

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