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宮島未奈氏、疾走エンタメお仕事小説『婚活マエストロ』インタビュー「私にとって小説を読むことは発見だから、自分の本で嫌な気分にはさせたくない」

NEWSポストセブン / 2024年11月16日 7時15分

 そもそも浜松で人が集まるのか自体、健人には謎だったが、社長からHPを見せられた途端、〈疑問の泉がストップした〉。その画面は〈これ、阿部寛のアレじゃん〉と田中が言うほど古く、しかもそこには今夜のパーティの告知があり、思わず〈マジか〉と声が出た。

「阿部寛のホームページという慣用句を知らない方もいるとは思ったんですけど、あれを見た時に湧きおこる感情はそうとしか言えない唯一無二のもの。それでも調べる人は調べると思って、そのまま書いてみました」

 ともかく一度パーティを覗いてみることにした健人は、人の相性を〈匂い〉で嗅ぎ分け、驚異の成婚率を誇る婚活マエストロとしてSNSでも噂の40歳、鏡原と出会うことになるのだ。

その気になればどこでも書ける

「取材はしていなくて、一通り調べはしましたけど、基本は全て私の想像です。そもそも私が書いたのはフィクションの婚活業界で、仮に違ってもいいと思った。成瀬シリーズでも現実の大津とは細部が微妙に違っていて、成瀬が住む大津と私の住む大津が同時に存在し、でも実際に会ったりはできないんですね。パラレルワールドみたいに。

 今回の舞台の浜松も実は行ったことがなくて。同じ静岡でも富士市出身の私が、規模的にピッタリだと思った浜松をグーグルマップを参考にして書き、ケンちゃんが鏡原と行ったなか卯が実は存在しないとか、ちょっとずつ嘘をついているのも、フィクションの浜松だからなんですね。

 地名はその方がイメージが湧きやすいから使っているだけで、この世界のどこかにあり得たかもしれないもう一つの大津や浜松として楽しんでくれたら嬉しい。私は大の旅嫌いなんですが、その気になればどこでも書ける自信はつきました(笑)」

 ある時は臨時係員として琵琶湖バスツアーにも同行し、かと思えば自ら向学のために婚活アプリを試して撃沈したり、〈勉強会〉詐欺に遭いそうになったり……。押しは弱いが根は真面目な健人の奮闘は本人が本気だけに笑いを誘い、鏡原との関係も含めてつい応援したくなるが、その先をあえて書きすぎないのも宮島流だ。

「誰かがくっついたり離れたり、いろんなパターンがある中で、1つしか書けないわけですよ、小説には。書くとなるとその分岐から先のことまで決まってしまうし、それこそ実際の婚活を取材してドロドロした話を書くこともできたとは思う。でも未婚とか既婚とか子供がいるいないとか、そんなことを書き出したら対立を煽るだけですし、私にとって本や小説を読むことは発見で、嫌な気分になりたいためじゃない。だから、自分の本ではそうさせない。その点は安心して読んでいただければと思います」

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