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【川崎 八丁畷・カクウチクボタ(久保田酒店)】街の進化と共に変容する創業100年超の老舗酒屋は「地域の人たちが笑顔を交わす場所」

NEWSポストセブン / 2024年11月26日 16時15分

シックな店構え

 京急線とJRが乗り入れる川崎の八丁畷(はっちょうなわて)駅から徒歩2分ほど。シックな店構えの『久保田酒店』は、創業100年超の老舗だ。

 3代目の窪田(くぼた)隆太郎さん(53歳)は、「初代は『窪田』より読みやすい『久保田』を屋号にし、配達トラックを赤く目立たせて、工場街の名物にしたアイデアマンでした」と語る。その後、一大繁華街である川崎のホテルや飲食店など、約700店への卸売りに力を入れ、店は発展してきた。

 今年、市制100周年を迎えた川崎は、古くから東海道の宿場町で、ここ八丁畷は、松尾芭蕉が、江戸を離れ故郷・伊賀へ旅立つときに、門弟たちと別れた場所でもある。店の近くには、芭蕉が別れを惜しんで詠んだ「麦の穂を たよりにつかむ 別れかな」と刻まれた句碑が建立されている。八丁畷の地名は、八丁(870メートルほど)畷(田んぼ道)が続いていることに由来する。

 今なお賑やかに人が行き交うこの地で商い、栄えてきた久保田酒店だったが、3年前のコロナ禍で転機が訪れた。

 店主は語る。

「酒類販売がほぼ止まりまして、酒屋としては、この先の日々を考える大きな契機となりました。従業員の生活をどう守ろうかとも悩みました。その時期、うちの倉庫には、売れないお酒が溜まりましてね、そうしたところ、ある日、従業員のひとりから『ガレージセールをやりたい』とアイデアが出たんです」

 配達業務が止まった中、店で酒類のセールを開催した。「酒を買いに来てくれた近隣住民の方たちと改めて顔を合わせて、声を聞いて、会話をしながらの商売は、とても活気が出たんです。うちで働く皆が、やってよかったと口々に言いました」(店主)。

「この店を、地元の人に喜ばれる酒屋の原点に戻そう」という気持ちが高まったのだと振り返る。

 そこからの行動は早かった。それまで、店は、お弁当なども販売する「よろずストア」として営業してきたが、趣を一気に変えて、「立ち飲みができるお酒の専門店」に大改造したのだ。

「人と人が笑顔を交わす場所にしたくて」と想いがこもった店は、2021年4月に、酒蔵をイメージした、黒基調のモダンな角打ちへと変わった。

 紫の大きな店頭幕が目立つ新店舗が完成すると、近所に住む人からは、「変わると聞いたけど、まさか、こんな別の感じになるとはびっくりです。うちからすぐのところに、いい雰囲気のお店ができてうれしい」(40代)、「子育てを一旦忘れて、デート感覚で、ここで一杯やれるのはいいね」(40代の夫婦)と、評判も上々で、「家飲みの延長としては最高!」と人出が少しずつ戻ってきた。

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