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河崎秋子さん、羊飼いだった作家前夜を綴る初エッセイ集についてインタビュー「傍から思い切りよく見えているときでも内心はビビり倒しています」

NEWSポストセブン / 2024年11月24日 16時15分

 羊飼いの先輩や、作家の先輩など、河崎さんの文章からは道のない道を進んだ先人に対する深い敬意が感じられる。

「それは私がビビりで小心者で器が小さいからだと思います。だからこそ先輩方の忠告はまじめに聞かなきゃと思うんです。ビビりだからこそ決断するときはきちんと決断しなきゃと思うし、傍から思い切りよく見えているときでも内心はビビり倒しています」

 我が道を行くという言葉がぴったりくる河崎さんが、ビビりだというのはにわかには信じがたいが、そういう気持ちがあってこそ、思い切った決断ができるのかもしれない。

 小説は重厚で骨太な筆致で描かれるが、エッセイは飄々とユーモラスに内心の声が(丸がっこ)で吐露され、くすりと笑いたくなる箇所がたくさんある。

「小説の視点人物は私ではないので、よほどコメディを狙った話でない限りまじめに書いていますが、エッセイは私自身、林望さんとか、ふっと笑えるものを好んでいましたので」

 羊飼いはやめたが、羊肉を販売していたレストランや羊飼いの先輩たちとの関係は続いている。

「こないだも、本に出てきたのとは違うお店に行ってきました。羊の肉を生産しなくなっても縁が続くのはありがたいと思います。羊がちゃんと美味しかったから続く縁なので、羊のおかげ、羊様様です」

【プロフィール】
河崎秋子(かわさき・あきこ)/1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を、2014年『颶風の王』で三浦綾子文学賞とJRA賞馬事文化賞を、2019年『肉弾』で大藪春彦賞を、2020年『土に贖う』で新田次郎文学賞を、2024年『ともぐい』で直木賞を受賞。ほかの作品に、『絞め殺しの樹』『介護者D』『愚か者の石』『銀色のステイヤー』など。いまは≪北海道の十勝で物書きをしながら一人で暮らしている

取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2024年12月5日号

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