《若林豪が見た昭和俳優たち》「渡哲也クンとは別荘で言えないことばかりやって…」現場で初めて台本を手に取る大先輩に驚愕した過去
NEWSポストセブン / 2024年12月31日 7時15分
今年85歳となった俳優の若林豪さん。30代は刑事ドラマ『Gメン』シリーズ(TBS系)、50代からは『赤い霊柩車』シリーズ(フジテレビ系)と、深く渋い演技で多くの人の記憶に残る活躍を見せた。刑事ドラマや時代劇に出演している印象が強く、これまで並み居る名優らと共演してきた。そんな若林さんに自身の俳優人生を振り返りつつ、思い出に残る共演者や現在の胸中を聞いた。
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『Gメン』『十津川警部シリーズ』『赤い霊柩車』……最近は刑事ドラマが多かったですね。刑事役は楽でいいんですよ。ムスーッとした表情で真っ直ぐただ立っていれば誰だって刑事のようになるんですから(笑)。まあ、それは冗談として、原作は必ず読み、台本をなるべく何回も読むことで理解が深まり、役に膨らみが出ますよね。
でも、1970~1980年代は忙しくて、セリフを覚える時間はなかったです。当時はスケジュールがグチャグチャでした。そんなとき、大先輩の俳優・大川橋蔵さんが「翌朝の最初の一番のセリフだけ覚えておけばいい。全部覚えようとしたら身体を壊すから」と言ってくれましてね。その通りにして何とか乗り切りました。覚えてこない代わりに、撮影の待ち時間におしゃべりなんかしないで、一生懸命に覚えていましたけど。
面白かったといえば、『Gメン』の海外ロケ。香港に1~2カ月滞在したことがあり、知り尽くしていた東京の下町より詳しくなりました。あと、スラム街・九龍城でも撮影したんですよ。汚くて、怖いところでね。スタッフに「怪しい建物の中に引きずり込まれないよう、気をつけてください」なんて言われながら、手前のほうの道をサーッと歩いて撮ったりしました。路上にはへたり込んでいる人も見かけましたね。それから、亡骸が普通に転がっていて、朝になるとトラックがゴミのように集めていくんでギョッとしましたよ。
パリに行ったこともありました。撮影の合間に、主演の丹波哲郎さんがルーブル美術館に誘ってくれました。「おい、豪。ルーブルに行くぞ」って。ところが、私が館内をゆっくり観て回っていると、丹波さんはひとりでどんどん先に行っちゃうんです。そして、私はまだ下の階で観ているのに、丹波さんは上の階からトントン……と降りてきて、「ここは絵ばっかりで何もねえや。もう帰ろう」って出て行っちゃいました(笑)。
丹波さんは格好良くて、セリフを喋らせたらピカイチ。でも、セリフは全然覚えてこない。覚えてこないどころか、現場に来てから、東映から届いていた台本が入った封筒を受け取って、封筒をビリビリ破り、初めて台本を開くんですから(笑)。だから、台本はキレイなまま。それでも、一言喋らせたら独特の魅力がある。声が大きくて、面白くて。こんな人がいるのか、天才だ、と思いました。
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