【新刊】プロレタリア作家と呼ばれた佐多稲子が歩んだ昭和文壇史『美しい人 佐多稲子の昭和』など4冊
NEWSポストセブン / 2025年1月14日 7時15分
もはやお正月ムードも消え去る1月半ば。読書でもして頭の中をリフレッシュしてみては? おすすめの新刊を紹介します。
『美しい人 佐多稲子の昭和』佐久間文子/芸術新聞社/3300円
30代以降の女性は美人ではなく美しい人と呼ぶべきだと言った作家がいる。中身が“顔”だからだろう。長崎生まれ、小学校中退で東京の工場やカフェ、書店で働いた佐多稲子(1904~1998年)。プロレタリア作家と呼ばれ、戦後名だたる文学賞を次々と受賞した。最初の結婚での心中未遂事件や、再婚した夫の浮気などを派手なドラマにせず、淡々と描く筆が敬愛に満ちて清々しい。
『人魚が逃げた』青山美智子/PHP研究所/1760円
銀座の歩行者天国。愛する年上女性に贈ろうとティファニーに入る青年、N.Yで舞台メイクの仕事を得て、明日嬉々として旅立つ娘と過ごす母親、熟年離婚した初老の男性、文学賞の発表を喫茶店で待つ作家や銀座のママ。和光、カフェーパウリスタなど銀座の顔となる場所で5人の男女の人生が交差。人魚を探すファニーな王子様の存在が銀座にかけられたお茶目な魔法のよう。
『人生の壁』養老孟司/新潮新書/968円
87歳の養老先生が子供や青年の壁、政治の壁などについて語る。5歳上の湘南の石原慎太郎がデビューしたとき鎌倉の養老青年は“海で青春を謳歌、一体どこの話だ!?”と思ったとか。お金目的の仕事はしたくなくて解剖学へ、壮年期は頑張って空気に抵抗したが、今は「世間の空気を利用するほうが現実的」とも。“ま、プンプンせずゆったり生きましょうや”と言われた気がする。
『日本美のこころ』彬子女王/小学館文庫/1210円
オックスフォード大学にて海外流出の日本美術に関する研究で女性皇族初の博士号を取得。帰国後も日本美と日本文化に携わる彬子女王。本書の扉写真に驚く。飛行機の模型に見えてボンボニエール(ボンボン入れ)だったとは。前半はそんな工芸品を扱い、後半は正絹の白生地を染めようとした時の“テンヤワンヤ”など、職人さんの工房を訪ねてのルポ。初春気分が一層華やぐ。
文/温水ゆかり
※女性セブン2025年1月16・23日
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