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《ゾンビタウンも》トランプ大統領が関税措置の理由に挙げた「フェンタニル」問題 日本にとっても他人事ではない背景

NEWSポストセブン / 2025年2月11日 16時15分

 ここまでアメリカの薬物、とくにフェンタニル中毒の事情について述べてきた。そもそも日本より薬品への規制がゆるやかで、薬物中毒がまん延している度合いが違いすぎるから、日本で暮らすぶんには縁遠い話だと思うかもしれない。だが、実は身近な問題だと我々は知っておかなくてはならない。

 十数年前に日本国内で流行し、乱用者自身が死亡するだけでなく、彼らが引き起こす事故が続出したことでも知られる「危険ドラッグ」のことを思い返してほしい。危険ドラッグを追って取材すると、使われていた原料は、ことごとく中国から輸入されていたものだった。2024年に摂取した人が救急搬送されるなどして問題になった「大麻グミ」の陶酔成分についても、複数の製造者や販売店に確認をしたところ、そのすべてが「中国」、もしくは東南アジア等の第三国を経由した「中国」から輸出されたものだったことも、筆者の取材で明らかになっている。

 さらにいえば、流通や販売の過程には、日本国内の暴力団構成員や中華系マフィアとも関係のある半グレがなども多数関与している。米国でのフェンタニルを含む合成麻薬問題に、カナダルートも含めてメキシコの麻薬カルテルが関わっているとみられていることと比較すると、日本でも似たような仕組みを持つ人たちが、中国原産の薬物を違法に持ち込むビジネスを展開していることが分かる。

 現時点では、がん患者の鎮痛剤として使われるほど強力なフェンタニルのような麻薬が、中国から違法に大量に持ち込まれているとか、乱用者が増えているといった話は、日本国内では聞かない。ただし、風邪薬などの市販薬の乱用が若い世代の一部で横行していたり「合法大麻」などと銘打った、得体の知れないドラッグは今なお繁華街で気軽に購入できてしまう現状がある。こうした「ニーズ」を、売人の連中は絶対に見過ごさないはずで、一気に強力な麻薬が、日本国内に蔓延してしまう可能性は捨てきれない。

 アメリカが関税措置を実行したことについて「やり過ぎだ」という声もあるだろう。自国民の薬物乱用にストップをかければ済む話だと、アメリカを非難する声もある。だが、劇薬なのに規制をあまりせず、注文があるからと製造して輸出を止めない中国にまったく責任がないと言えるのだろうか。追加関税に対して報復措置を中国はとった。「現代のアヘン戦争」ともいえるフェンタニルをめぐる米中のせめぎ合いは、どのような形で「決着」を迎えるのか。

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