自動改札機で失われた“駅員の職人芸” 「大阪駅にはタンゴのリズムで改札バサミを空打ちする駅員がいる」《関西私鉄の秘話》
NEWSポストセブン / 2025年2月12日 10時53分
佐伯の指示で始まったさまざまな取り組みの中でも、ビスタカーは大当たりだった。
「日本初の二階建て」と「日本一の眺望が楽しめる」のキャッチフレーズは、関西人をはじめ全国の観光客の心を大きく揺さぶったようだ。
2階建ては近鉄の“専売特許”になった。
1962(昭和37)年には団体専用電車「あおぞら」にオール2階建て車両がお目見えした。
「あおぞら」は主に修学旅行で使用されたため、関西の小中学生にはなじみ深く、思い出に残る電車だ。
1960~70年代の大阪の小学生の卒業文集を見ると、「あおぞらに乗って伊勢志摩に修学旅行に行った」という記述であふれている。
大阪-名古屋間は東海道新幹線の開通で、国鉄が圧倒的な優位に立った。スピード競争では国鉄に勝てなくなった近鉄は、「安くて快適、そしてぜいたくな鉄道の旅」へと舵を切る。ビスタカーはその中核となった。
日本初の自動改札機(阪急)
昭和の駅の音は「カチ」「カチ」「カチ」だった。
「カチ」は、切符に切り込みを入れる改札バサミの音。
「大阪駅にはタンゴのリズムで改札バサミを空打ちする駅員がいる」とか、「天王寺駅の音は8分の6拍子だ」とか、どうでもいい噂が流れた。
時代は移り変わり、駅の音は「カチ」「カチ」から「ピッ」「ピッ」というICカードの電子音に変わってしまった。
大阪万博が開かれるちょうど3年前の1967(昭和42)年3月、日本で初めての自動改札機が、阪急電鉄の北千里駅(大阪府吹田市)に設置された。
改札のほか券売機まで、すべての機器が自動化された「世界初の全自動化駅」だった。万博の会場に近く、未来都市として建設が進む千里ニュータウンの中心部だったことから、“壮大な未来実験”として注目を集めた。
当時、鉄道駅の抱える大きな課題の一つが、改札口で人流が滞ることだった。特に朝のラッシュ時はひどかった。改札口を増やすのも限界があり、駅員の職人芸でスピードアップを図るしかなかった。
ここに目を付けたのが立石電機(現オムロン)だった。立石電機は近鉄と共同で自動改札機の開発を進め、導入へあと一歩というところまでこぎつけた。ところが国鉄線との乗り継ぎにどうしても対応できず断念したという経験があった。
次にチャレンジしたのが、開発が始まったばかりの千里ニュータウンだった。「これからの街には、これからの技術がふさわしい」と阪急電鉄と共同で、新設される北千里駅への設置を決めた。
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