役員に「昇りつめる人」の小さな共通点【2】
プレジデントオンライン / 2013年10月2日 8時45分
役員になれる人と中間管理職で終わる人の違いは、意外と小さなところにあった!エグゼクティブクラスのヘッドハンティングを担う敏腕ヘッドハンター10人が、役員に昇りつめる人たちの共通点を激白する。
仕事力■心地よい世界からあえて茨の道に踏み出したことがあるか
■会社のために自分は何ができるか
ヘッドハンティングされる一流の人々には、共通の「企業を選ぶ基準」が存在する。たとえば、あなたが転職を考える際、もっとも優先する項目は何か思い浮かべてほしい。
役員まで昇るような人は、まず「そこで自分が何を提供できるか」を考えることが共通している。
「私心がなく、会社や社会のために何ができるか、過去の成功体験に縛られずに次の企業が自分に何を求めているかを考える」と、金融・コンサル系企業を主な顧客に持つ、コトラの大西利佳子代表は言う。
役員になる人物にとって、財務状況を読み解くファイナンス感覚とコンプライアンス関連への意識の高さは基本スキルだろう。
「加えて企業が抱える問題、課題は何か、どう自分が役立てるかの視点が、部課長クラスの転職サポートと大きく異なっています」(日系企業のグローバル人材を支援する、ロバート・ウォルターズ・ジャパン 大山良介人材支援室室長)
特に外資系エグゼクティブは未経験の分野でも飛び込む強さがある。
「あくまでもポテンシャルを先に買ってもらう。そこにリスクがあっても能力があればお金は必ずついてくると考える傾向にある」(外資系企業を担当するロバート・ウォルターズ・ジャパン 岩屋広志朗マネージャー)
与えられるポジションと年収にこだわるだけでは経営者はもとより役員の視点にはほど遠い。さらに給料と福利厚生中心の「会社からのリソース」を最優先事項とするのは、万年平社員の思考でしかないのである。
■左遷、挫折、苦労……不遇な経験を経て
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20代の頃の評価は
こうした思考、視点の高さの違いと同様、役員に昇る人たちの「仕事力」は、20代の頃から傑出しているようだ。特にベンチャー企業は、突出したアイデア力がものをいう世界でもある。ケンブリッジ・リサーチ研究所でベンチャー企業を担当する丸尾洋祐シニアコンサルタントは「一歩先をゆく革新的アイデアを事業化、具現化するため想像以上の努力をしている」と語る。また同社、代表取締役社長の橋本寿幸さんは、「大企業でも、役員になりさらにトップが目の前にあるような人は、左遷など不遇なポジションを経験している。逃げず挫折せず全力でやり切ったから今がある」と語る。
役員になる人は総じて「優秀」だ。が、メジャーな花道で順風満帆に評価を挙げてきた人間と、時に世間がマイナスと捉えるような道で実績を積んできた人間では、大きな問題が起きたときの耐性が明らかに違う。
「自分の心地よい世界で、手の届く範囲の仕事をしてきた人は部長以上にはなれない。環境の変化に遭い、自分の信条を曲げてでも、目前の壁を乗り越えなければならない経験をしたかどうかが重要」(クルートエグゼクティブエージェントのリテーナーサービス担当、中村一正シニアディレクター)
多くの役員が「20代で優秀なマイノリティ」であり苦労や挫折を味わっていると、大西さん、IT系企業を多く顧客に持つキープレイヤーズの高野秀敏代表も言う。策略がうまいだけのマジョリティでは、せいぜい本部長止まりがいいところだ。
人間力■小手先の政治力より、辛酸を乗り越えた強さで勝負できるか
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人間の器が
「仕事力」も重要だが、トップになる人の資質の根本は「人間力」につきる。どんな苦労でも心の糧にできるかどうかで人間の器の大きさは決まる。部下の功績をわが手柄にし、自分を大きく見せるようでは、役員の資質を語るどころではない。
「限界状態を若い頃に1度は経験している。それも数年の時間軸で。そうでなければトップに立てても部下に優しくなれません」と中村さん。
逆境を乗り越える力は、最終的に「胆力」であり、精神的体力である。
「逆境を逆にチャンスと見なす柔軟性と、どん底から這い上がる強さがある」(メディカル系大手のエグゼクティブサーチを担当するケンブリッジ・リサーチ研究所、長谷川淳史取締役副社長)。これが役員たるべき人の器のようだ。
「危機に直面したときに人間の本質が出る。知性だけでなく危機をバネにして改革できる『腹の力』が備わっています」と、橋本さんも言う。
こうした「人間の器」の大きさは、生まれつき決まっているわけではない。人生の辛酸を嘗め、それを乗り越えてこそ大きくなるのである。
■「泳ぎ」上手だけでは信頼は得られず
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海外では
上に立つ者として英断を下さなければならないとき、その人間の「精神の癖」が出る。若い頃から社内政治が得意で、上司に諂(へつら)いながらうまく泳いできた人は、危機的状況に面したときでも「泳ぎ」を考える。しかし、こうした行動は部下をはじめ周囲がしっかりと見ており、信頼関係は構築できない。結果、部下の評価、外部の評判が上に伝わり、役員に昇れないという事態にもつながる。
熾烈な出世競争の裏には当然「嫉妬」や「妬み」心が渦巻く。そういった感情につぶされない精神力も役員になる人には必要のようだ。
「かわすというより『無視できる』人が人間的にも本物。危機に面したときはもちろん、外国企業とも十分渡り合えるでしょう」(リクルートエグゼクティブエージェントで大手メーカーを担当する森博禎ディレクター)
グローバル化がさらに求められている昨今、海外企業との折衝も重要ファクターだ。しかし近年、海外自体に興味がない若者も増えている。
今の日本企業の敗北は、グローバルに渡り合える人間が経営に携わらなかった結果だと厳しい指摘もある。国内で満足するだけの経営では通用しない時代になっている。
「日本人はとかく英語力や肩書で商売しようとしますが、英語は挨拶程度でも充分。あとは日本語で堂々と折衝すればいい」と森さんが語るように、語学力はさほど問題にはならない。現に大阪弁をまくし立て海外で契約を取る社長の逸話もある。
また、先方の担当者が自分より格下の「肩書」の場合、「バカにされた」と憤慨する日本人も多い。こうしたケースは部長クラスによく見られるという。こういう人物は、自分の語学力を駆使しようと奮起する傾向もあるが、程度によっては多々誤解を生む。海外交渉で求められるのは起動力と情熱。外国語は通訳に任せてもよい。要はグローバルな目で見ても「肝が据わっている」ことが役員の前提条件なのだ。
(プレジデントウーマン編集部 戌亥 真美)
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