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4200%のリターンを生む男、ジム・ロジャーズの情報源

プレジデントオンライン / 2015年3月23日 11時15分

ジム・ロジャーズ氏

ウォール街で巨額の富を得た後、地球を2度1周した世界的投資家は、これまでどんなところから学び、どのように情報を取り、それをどう分析して巨額の富につなげたのだろう。その情報術について探ってきた。
――金融の世界に入られて数十年経つと思いますが、どうやって投資に関する情報を入手してこられたのですか。

今のようにインターネットがない時代は、複数の米紙を読むのに加え、英国やカナダ、日本などの新聞を取り寄せて毎朝読んでいました。そして、できる限り多くの個人や企業を訪ね、彼らの競合相手からも話を聞きました。このやり方は今も変わっていません。

たとえばトヨタ自動車について調べるなら、フォードや日産からも話を聞いて異なる視点に触れる。競合相手のことになると、とかく人は饒舌になるので思わぬ収穫があります。コンファレンスコールなどない時代には、1日に15社訪問したり、1週間で5都市をまわったりしましたが、まったく苦にならず、むしろ楽しくてしかたがありませんでした。

私がウォール街で働き始めた1960年代当時は、それこそ永遠に続くのではと思われたほどの好景気で、誰もが「いとも簡単に稼げる」などと調子のよいことばかり口にしていたのです。でも、バブルはあっけなく崩壊した。

このことで、私は物事に対して疑いの目を持つべきだと悟ったのです。メディアで見聞きしたことを鵜呑みにせず、まずは可能な限り多方面から情報を得ることです。そうすれば、現実に起こっていることの核心を見つけ出すことができるのですから。

70年代にジョージ・ソロスと立ち上げたヘッジファンドが成功したのも、ほかの人が目もくれないようなところに投資したからです。当時はまだ、たとえば日本に興味を持つ投資家は非常に少なかったのですが、2人とも海外に目を向けていました。空売りもやっている人はほとんどいませんでしたが、私たちは積極的に行いました。

今振り返ると、多額の借り入れがあっていつ倒産してもおかしくなかったのですが、投資先の選択が正しかったので利益を得ることができたのです。もし間違っていたら、1日ですべてを失っていたでしょう。

最近の例を挙げると、私はアップル社の株を2012年9月に空売りしました。多くの人々が同社に対して過度に期待していましたが、天井知らずで上がり続けるものなど存在しません。私は今後、競争が激化するだろうと考えました。すでに同社の製品はみんな持っているのですから、マーケットは飽和状態に陥りつつある。サムスンなどの競合他社がさらに良い製品を出すかもしれない。これから悪くなる、衰退すると思ったら、私はその企業の株を売ります。下がっていきそうなときに空売りすると儲かりますからね。

――たくさんの情報の中から、正しい答えを探し出すのは容易ではないと思うのですが。

今、どのような変化が起きていて、それがどうやってお金を生み出すかを考えればいいのです。

価格が低く抑えられて落ちこんでいる業界で起こりつつある変化の兆しをつかみ、ポジティブな動きが生じていないか注意深く分析するのです。たとえば今の日本における農業がまさにそうです。日本に限らず、世界各国は食料を生産した量よりも多く消費していますが、貯蔵量は歴史的に低い状態が続いています。農業従事者の平均年齢は米国では58歳、日本や韓国では66歳と高く、世界中で農業従事者が不足しています。その理由は、農業が長く悲惨なビジネスであり続けたからですが、だからといってこの先も同じ状態にあるとは限りません。

肝心なのは変化を起こす「触媒」を探すことです。70年代においても食料はさかんに消費されていましたが、当時はもっと貯蔵量があったので、作物の価格が上がり始めると人々は備蓄を売るので価格が下がりました。そもそも、当時は農業従事者も多かった。しかし備蓄も働き手も少ない現在においては、触媒の性質はまったく異なってきます。

――「変化の触媒」をキャッチしたとき、何を基準にその将来性を見抜き、儲けることができるのでしょう。

政府が何かに多大な投資をしているときは、それによって儲かる人たちが存在することを意味します。たとえば今、中国では大気汚染が深刻で、政府は環境の改善に多額のお金を使っています。だから必ず、このビジネスで儲ける人が出てくるのです。どんな人たちがお金を儲けるのかを見極めることができれば、あなた自身も彼らと関わって利益を享受することができるでしょう。

私はつい最近、ニューヨーク株式市場に上場している中国のエンターテインメント企業・FABユニバーサルの役員に就任しました。検閲が行われている中国でエンターテインメントビジネスに関わるなんて正気の沙汰ではないと、過去50年くらい誰もが思っていたでしょう。しかし北京では12年以来、中国文化を再生させようという動きがあるのです。これまで商標や著作権を保護するという考えは浸透しておらず、海賊版や盗用などが横行していましたが、中国政府はダイナミックな自国文化の再構築を目指し、作家やアーティストたちを保護するために動き出しました。長年野放しにしてきたところに、いよいよメスを入れたのです。まさに歴史的な変化が中国で起ころうとしています。FABは将来、ディズニーのような企業に成長するかもしれない。

■なぜ調べることをやめなかったのか?

――自分が理解したと思うまで、徹底的に学んだり調べることを習慣にしているそうですね。

投資をやっていると、歩みを止めることはできません。常にもっと多くのことを学ぼうとし続けなければならないのです。この姿勢は、私がイェール大学に入学したときからです。決して優秀な学生ではなかったから、できる限りの知識を得たと思える瞬間まで、勉強の手を緩めないと決めたのです。仕事をやり続ける、学び続けるというのは、狂気と紙一重ともいえるくらいのこだわりです。別の言葉に置きかえるなら「粘り強さ」でしょうか。

世の中には、とても頭がいいのに成功していない人たちがたくさんいます。容姿端麗でも、才能に恵まれていても、学歴が高くても、まったく芽が出ない人がいる。成功するのは、粘り強くやり続けられる人だけです。だからあきらめてはいけません。

――では、若い頃、これを勉強しておけばよかったと思うことは。

外国語を操る能力がないことは、自分の弱点だと常に感じていました。その国の言語がわかれば、もっと情報が入ってくる。相手が密かに話しているつもりの内部事情なども、理解できるでしょう。

自分が後悔しているからこそ、娘たちにはバイリンガル(英語と中国語)になってもらいたい。中国語を学ばせたのは彼女たちが生きる時代は中国語が世界でもっとも必要とされる言語になるからです。100年後に英語が世界でもっとも使われている言語であり続ける保証はない。以前はフランス語が世界でもっとも強い言語でしたが、すでに変わってしまったのですから。

特に日本人にとって外国語を習得することはきわめて重要です。みなさんが将来頼るのは国内ではなく、海外の市場だからです。すでに英語が話せる人は、さらに中国語やスペイン語をやるといいでしょう。スペイン語がわかればイタリア語なども理解できるようになるでしょうし、ラテンアメリカの人口は減少していませんから。

朝鮮語を学ぶという選択肢もありますね。私はおそらく5年以内に、朝鮮半島の統一が実現するのではないかと予想しています。中国は北朝鮮北部でインフラを充実させるために多額の資金を投じていますから、北部の人たちはすでに外の世界に触れており、闇市も存在します。こうやって、少しずつ開けてきているのです。統一されれば、今後30年において朝鮮半島は大きな力を持つでしょう。北朝鮮には、高い教育を受けてよく訓練された安い労働力がありますし、天然資源も豊富です。韓国には巨大な資本がある。日本はとても彼らに勝てないでしょう。

■過去の情報から、日本の未来を占う

――外国語のほかには何を学ぶべきでしょうか。

世界は常に変化してきたことを理解し、将来を見通せるようになるために、歴史を学ぶべきです。どの年でもいいから選んで、それから50年後の世界は実際にどうなったか調べてみてください。驚くべき変化が起きたことに気づくでしょう。「やがてこうなる」と当時の人々が聞かされていたことは、50年経つとその通りにはならず、劇的に異なる世界になってしまった。そもそも、世界が変わっていくとはどういうことなのか。それを考える力を養うために、哲学も同時に勉強すべきですね。「ちょっと待てよ、この変化はどう将来につながるのだろう、もしこのまま変わらないとしたら?」と考える習慣をつけることが大切なのです。

――では過去の歴史から見て、日本はどうなっていくと思われますか。

私は日本が大好きですが、この国は少子高齢化が進み、非常に深刻なペースで衰退しています。人口が減り続けるまま世界から隔離されていてはいけません。出生率を上げる努力をしないで移民も受け入れず、借金を増やすことをやめない国に、明るい未来はない。

かつてビルマ(現ミャンマー)はアジアで最も豊かな国の一つでした。しかし62年、クーデターによって軍が政権を握り、外国人を追い出して門戸を閉ざし産業を国有化してしまいました。自分たちはとてもリッチで成功しているからと「鎖国」を続けたために近代化が遅れ、もっとも貧しい国になってしまった。強大な帝国だったエチオピアも17世紀、宗教対立から鎖国を実施し、次第に衰退してしまったのです。

移民たちは一般的に勇敢で野心家が多い。頭もよくて冒険好きです。日本の若者も外へ出て、誰も知り合いがいなくて言葉も通じない国へ行ってみるべきです。冒険しないと、つまらない人生になってしまいますよ。

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Jim Rogers
1942年、米国アラバマ州生まれ。イェール大学卒、オックスフォード大学ベリオールカレッジ修了。ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを立ち上げ、4200%という驚異のリターンを上げる。37歳で引退、世界を旅する。最新刊は『ストリート・スマート』。

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(投資家 ジム・ロジャーズ フリーライター 原賀真紀子=インタビュー、構成 澁谷高晴=撮影)

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