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なぜ高学歴女性が風俗に走るようになったか

プレジデントオンライン / 2016年4月1日 9時15分

規制が強化されるたびに新業態が生まれる…… 1985年、新風営法施行を2時間後に控え、新宿・歌舞伎町をパトロールする警察官。

■風営法改正で出現、無店舗型デリヘル

──新商品やサービスは、時に法改正を逆手にとる形で生まれる。風俗産業もまた同様だ。

風俗産業は規制を設けられては対象業種が廃業し、法に抵触しない新業態が生まれる、という法と業者の攻防の中で発展してきました。

最近では、2005年の風俗営業法の改正が大きく、店舗を構えることが難しくなり、繁華街の雑居ビルに入っていた店舗型の風俗店のほとんどが撤退を余儀なくされました。

これに代わって台頭してきたのは、電話やネットなどで予約をした顧客のもとへ風俗嬢を派遣する「無店舗型デリバリーヘルス」です。ホームページと電話さえあれば誰でも開業できるので、IT関連など一般企業も多く参入しています。

08年には改正暴力団対策法が施行され、「みかじめ料」という縄張り内での営業許可代を上納させていた暴力団が弱体化。地域によって無店舗型の風俗店から手を引いたため、ますます開業しやすくなりました。

かたやインターネットの発達で風俗嬢のなり手も格段に増えています。メールで簡単に応募できるため、参入障壁が一気に下がったのです。

■新規参入やIT化で供給過多、デフレに

──江戸時代の花魁は地位が高かったが、遊女の大半は悲惨な境遇にあった。いまや風俗嬢は特別な事情のある人が身を落としてなる職業ではない。
社会的地位が高かった上級遊女・花魁 花魁は幼少から高度な教養・芸事を仕込まれ、社会的地位は高かった。江戸時代の吉原は幕府公認の遊郭であり、その職業ゆえに、遊女が蔑まれることはなかったとされる。

09年以降はリーマン・ショックの影響で、大学生や専門学校生が学費や生活費を稼ぐアルバイトとして、風俗産業で働くことが珍しくなくなりました。性交経験の少ない(あるいはない)女性の応募、高学歴化、高齢化も進んでいます。

供給過多はこの業界にもデフレ化をもたらし、風俗嬢の平均月収は2000年の平均70万円から、今は平均36万円まで落ち込んでいます。稼げる人とそうでない人の二極化が激しく、容姿に恵まれ営業力やコミュニケーション能力が高い一握りの女性しか、高収入を得られないのが実情です。

収入面で最下層にいる女性は個人売春に流れたり、売春を斡旋する犯罪組織に取り込まれることもあります。最近の動向としては、介護業界との兼業が多いことが挙げられます。

また日本では実入りが悪いので、売春が合法のオーストラリアやアメリカへ、英語の勉強も兼ねて稼ぎにいくという動きも見られます。

東京オリンピック開催に際し、公の場から風俗業を駆逐する政策が取られることは必至です。現在の風俗産業は外国人観光客を積極的に受け入れていません。しかし、新たな規制が設けられれば、そこから逃れる形で外国人向けの新業態が生まれる可能性も、十分にありえます。20年は、風俗開国元年になるかもしれません。

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中村淳彦(なかむら・あつひこ)
1972年生まれ。ノンフィクションライター。主著に『名前のない女たち』『ワタミ渡邉美樹 日本を崩壊させるブラックモンスター』など。新潮新書『日本の風俗嬢』は1位書店が続出してベストセラーに。

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■鎌倉時代から続く規制と欲望の攻防史

【1193年】源頼朝が遊女取り締まりのため、里見義成に遊女別当を命じる。

【1585年】豊臣秀吉が「人心鎮撫の策」として遊女屋を積極的に認める。

【1617年】徳川幕府が庄司甚右衛門に「葭原(吉原)遊郭」の設置を許可。

私娼は禁止だが宿場の旅籠では「飯盛女」による売春があった。

【1859年】横浜に外国人相手の「港崎遊郭」ができる。

【1873年】公娼婦取締規則施行。後に取締権限は各地方長官に移される。

【1945年】終戦。「パンパン」と呼ばれる売春婦が全国に7万~8万人。

【1947年】東京・新宿の帝都座で「名画アルバム」と題する初のストリップ。

【1951年】東京・東銀座にトルコ風呂「東京温泉」が開店。1984年、トルコ人留学生の訴えにより「ソープランド」に改称。

【1958年】売春防止法により、赤線内の「カフェー」などが一斉に廃業。

【1963年】東京オリンピック開催を控え、風俗営業の取り締まり強化。

【1969年】家電各社が統一「U規格」によるVTRを販売。市販ソフトの9割はポルノ作品。

【1975年】古書店がグラビア雑誌をビニール包装し販売。ビニ本の先駆け。

【1978年】京都・西賀茂に「ノーパン喫茶」登場。全国の繁華街に広まる。

【1984年】風営法改正。「のぞき部屋」や「ファッションマッサージ」が届出対象になる。

【1985年】東京・新宿などに「テレクラ」急増。都内だけで100軒以上営業。

【1990年】東京、名古屋、京都、神戸、大阪などに「ブルセラショップ」出現。

【1991年】村上龍『トパーズ』のヒット等により「SM」がファッションに。

学生がバイト感覚で風俗に応募する時代に 首都圏のコンビニや書店で販売された高収入アルバイト情報誌「てぃんくる」(1992年創刊)。風俗店への応募のハードルが格段に下がった。

【1992年】女性向け高収入アルバイト情報誌「てぃんくる」が創刊される。

【1999年】警視庁が啓発ビデオ『ガラスの青春 援助交際の悲劇』を制作、都内の中学高校に配布した。

【2008年】暴対法改正。暴力団が風俗店から手を引き、参入障壁が下がる。IT企業等の風俗参入が相次ぐ。

【2009年】「リーマン・ショック」の影響で、風俗で働く一般女性が急増。

(ノンフィクションライター 中村 淳彦 編集=渡辺一朗 構成=奥田由意)

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