春爛漫! ハイボールブームに続けるか? ピンクのアイツがやってきた
プレジデントオンライン / 2016年3月31日 15時15分
■悪く言えば「こうもりワイン」?
今年も桜の季節がやってきました。この時期には、一部の飲料メーカーや飲食店で「ロゼワイン」に力を入れるところが出てきます。ロゼワインはきれいなピンク色が特徴ですが、それと桜とをひっかけたプロモーションを行うのです。確かに、ロゼワインの華やかな雰囲気は、花見の気分を盛り上げるのに一役買ってくれることでしょう。
ところで、ロゼワインとはそもそも何なのでしょうか。その前に、赤ワインと白ワインの違いについてごく簡単に見てみましょう。赤ワインは黒ブドウ(皮の色の濃いブドウ)を使うのに対して、白ワインは白ブドウ(皮の色の薄いブドウ)が原料となります。また赤ワインは皮や種を一緒に醸造するのに対して、白ワインではそれらは最初から取り除かれます。その結果、液体の色、そして味わいがまったく異なる2種類のワインが生まれるのです。
一方で、ロゼワインにはいくつかの製法があります。代表的なのは、赤ワインと同様に黒ブドウを原料として醸造するものの、その途中で皮や種を取り除くという作り方です。赤ワインと白ワインの製造方法の合わせ技であり、結果的に色合いや風味も両者の中間的な存在となっています。
よく言えば「いいとこ取り」ですが、裏を返せば「どっちつかず」と受け止められてもおかしくありません。そのことが、実際の消費にも影響を与えているようです。メルシャンが発表しているデータによれば、2012年の国内ワイン消費における色別比率は、赤ワインが54%、白ワインが37%なのに対して、ロゼワインは9%に留まっているのです。
■ロゼはいつ飲むべきか
ところが、ワインの本場であるフランスでは、状況が異なっています。統計データにより多少の違いはあるものの、フランスのワイン消費におけるロゼワインの割合は実に30%を越えており、この数字はなんと白ワインよりも多いのです。しかも近年は、ロゼワインの消費が拡大傾向にあります。
かの地でも「若者のアルコール離れ」は進んでいるようですが、それは当然「ワイン離れ」も意味しています。酒類関係者によれば、特に「高級な赤ワイン」に対しては、それを敬遠する傾向が強まっているようです。権威性やウンチク、重厚な味わい、そして何よりその高い価格に対して、興味を持たない若い世代が増えているというのは、世界共通なのかもしれません。
そんな中、ロゼワインは手頃な価格の銘柄も多く、またそのすっきりした味わいが好まれていて、夏場には定番のポジションを獲得しています。実際、フランスに暮らす知人に聞いても、「暑くなると、カフェとか家で気軽にロゼワインを飲んでいる人は多い」とのことです。
果たして、こうした「ロゼワイン人気」の流れは日本にも訪れるのでしょうか。個人的には2つのアプローチによって、それは起こるかもしれないと考えています。
ひとつは「食べ物との組み合わせ」、いわゆる「マリアージュ」の提案です。私を含めて多くの日本人にとって、ロゼワインを選ばない理由は、「いつ飲んだらいいのかわからない」ということでしょう。ワインの飲み方にルールはありませんが、「魚には白、肉には赤」という緩やかな指針があることは、ワインを選ぶうえでは手がかりになりやすいのも事実です。
ところが、今のロゼワインには多くの人がイメージするような、料理や食材とのマッチングがありません。送り手としてロゼワインを飲んで欲しいのでれば、意図的にそうした組み合わせを提案していく必要もありそうです。例えば、「野菜にはロゼワイン」という打ち出し方をすれば、反応する人はそれなりにいるのではないでしょうか。実際、軽くてすっきりした味わいのロゼワインは野菜との相性も良く、またテーブルの彩りがとても華やかになることでしょう。
■飲み方革命は起こせる?
そしてもうひとつのアプローチは、「新しい飲み方」の提案です。ハイボールは今でこそ、居酒屋などにおける定番ドリンクとなりましたが、10年前には一部のウイスキー好きが飲むマイナーな存在でした。しかし、サントリーが「ウイスキーの炭酸割り」を「ハイボール」という名称で、しかもジョッキで飲むというスタイルを提案したことで、「新しい飲み物」として普及していったわけです。
世の中には白ワインを炭酸で割った「スプリッツァー」というカクテルがあります。ロゼワインのすっきりした味わいを生かして、より軽やかに楽しむには、このように炭酸で割るスタイルを押し出すことも、ありなのかもしれません。
またフランスでは、ロゼワインをグレープフルーツジュースで割った「ロゼ・パンプルムース」という飲み物が人気を得ているようです(パンプルムースとは、フランス語でずばりグレープフルーツのこと)。日本でもワインを出す店では「サングリア」という、主に赤ワインにフルーツなどを組み合わせたカクテルが定着しつつあります。ロゼワインとフルーツやジュースとの組み合わせにも可能性はありそうです。
まだまだマイナーな存在のロゼワインですが、果たして日本でもブレイクする日は来るのでしょうか。おいしい選択肢が増えること自体は、素直に歓迎したいと思います。
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子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食プロデューサー。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/
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(カゲン取締役、飲食プロデューサー 子安 大輔)
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