積極投資派vs貯蓄派 「資産運用」にベストな投資法
プレジデントオンライン / 2016年7月28日 9時15分
■派手な値動きは投資結果にマイナス
昨今の株高をみて、「すぐに投資を始めなくては」と考える人も多いだろう。「株式投資で儲かった」という人が近くにいたらなおさらだ。だが飛びつく前に注意が必要だ。
(図1)では様々な資産のリスク(横軸)とリターン(縦軸)をまとめている。投資の初心者は、右上にある「ブラジル株式」や「中国株式」といったリターンの大きいものに惹かれやすいが、そうした投資には大きなリスクがある。目安は横軸に示した数値の2倍程度。つまり、上下の振れ幅は「ブラジル株式」では80%以上にもなる。
そこで、まずは左下の赤色で囲んだゾーンから投資を始めたい。いずれも日本と海外先進国の株式と債券、あわせて4つの資産に「分散投資」をするもので、リスクとリターンが一定の範囲に収まる。その際、便利なのが指標と同じ値動きを目指す「インデックスファンド」だ。具体的には「TOPIX(東証株価指数)」、先進国22カ国の株式市場をカバーする「MSCIコクサイ・インデックス」、新興国23カ国の株式市場をカバーする「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」に連動する投信が候補となる。この3つを組み合わせるだけで46カ国・約4000社に分散投資ができる。
なぜ分散投資をすすめるのかといえば、値動きを小さく抑えたほうが結果的に投資結果はよくなるからだ(図2)。一見すると、派手な値動きのAのほうが有利にみえるが、実際にはBのほうが投資結果はいい。一時的に大きくプラスになっても、その後マイナスになると「複利効果」が落ちてしまい結果は悪くなる。
リスクを抑えても、「リーマンショック」などで短期的には資産が減ることはある。投資は10年以上の長期で考えるべきものだ。(図3)では国内株式・債券、先進国株式・債券の4資産に25%ずつ、10年間保有した場合の投資成果を示している。1970年からの40年には様々な経済変動があったが、10年投資した場合には元本割れはしていない。このように分散投資は「長期」と組み合わせることで補強される。
また投信の買い方としては、毎月一定額を積み立てるのが簡単だ。30年間、毎月1万円を積み立てると360万円になる。例えば、1984年末から2014年末まで、毎月4資産に25%ずつ積み立てた場合、運用結果は884万円となった(図4)。最も結果が悪かった1981年末からの30年でみても運用結果は607万円となり、積み立て元本を上回っている。
■インフレ環境では預金が「目減り」する
一方、株式や投資信託への投資に抵抗感をもつ人もいるだろう。だが、これからは銀行にお金を預けているだけでは、資産が目減りする恐れがあることを理解してほしい。
かつては物価が下がる「デフレ」だったため、投資の必要性は小さかった。だが2014年4月以降、日銀の金融緩和の影響で、物価が上がる「インフレ」へと環境が変わりつつある(図5)。これからは銀行預金だけではなく、株式を含めた投資にも目を向ける必要がある。そのときの投資先は日本だけでなく、海外の株式や債券に分散させたい。
危機感に煽られ、闇雲に投資商品を買うことは避けたい。資産形成は「公的保障」「企業内保障」「自分で準備」という3段階で考えるのが基本だ。まずは公的年金や勤務先の退職給付制度について調べよう(図6)。
公的年金は2015年4月から物価上昇に連動した給付増が望めなくなった。企業の退職給付も、会社員の7人に1人は「企業型確定拠出年金」が導入されている。将来の退職金や年金を自分で運用する時代にシフトしつつある。これからは誰もが資産運用と無縁ではいられない。焦らず一歩ずつ、投資を学んでいこう。
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大学卒業後、出版社や新聞社などを経て独立。2000年、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。LIFE MAP,LLC代表。著書に『新・投資信託にだまされるな!』『年利15%でふやす資産運用術』などがある。
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(プレジデントオンライン編集部 星野 貴彦 ファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子 星野貴彦(プレジデント編集部)=文)
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