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テノール歌手 榛葉昌寛「日伊国交150年、音楽で世界を動かせ」

プレジデントオンライン / 2016年11月23日 11時15分

テノール歌手 榛葉昌寛氏

■キリスト教の総本山も認めた!

オペラ歌手になるためミラノに移住して、今年でちょうど20年になります。海外にいると、どうしても日本人の仲間で集まってしまいがちですが、イタリアの音楽を表現するには身も心もイタリア人になりきるしかない。そこではじめの2年半は、もっぱらイタリア人とだけつきあい、食べるものも彼らとまったく同じものしか食べないと決め、日本食は一切食べませんでした。おかげで15キロ太りましたが、今ではイタリアにしっかりと根をおろすことができたように思います。

そんな私が日本のために何かしたいと思うようになったのは、東日本大震災がきっかけでした。私にできることは歌で人々の悲しみを癒やし、元気づけること。そしてイタリアにはキリスト教の総本山であり世界中から年間11万人が訪れるバチカンがある。

もしバチカンでコンサートができれば、世界中に情報が発信できる。そう考えて音楽仲間に協力してもらい、伝手をたどった結果、バチカンのフランチェスコ・モンテリーズィ枢機卿にお会いすることができたのです。枢機卿は即座に、バチカンの四大聖堂のひとつである聖パオロ大聖堂をコンサート会場に使うことを許可してくださいました。聖パオロ大聖堂はキリストの二番弟子であるパオロのお墓の上に建てられたという由緒あるもので、カトリックの信者ではない者、しかも日本人の催し物のために使うのは前例がなかったそうです。

そうやって2013年3月11日に第1回が開かれた「バチカンより日本へ祈りのレクイエム」ですが、今年で第4回を迎えることができました。

昨年は仙台、石巻など東北を含め、日本で7公演を行いました。被災地の会場は体育館など音響設備が十分でないところも多いのですが、いずこも超満員。

イタリア人オーケストラの太陽のような明るさが、東北の人たちを笑顔にするのかもしれません。

イタリア人は音楽を聴いて感動すると、涙をポロポロ流しながら「ブラーヴォ!」と叫ぶけれど、日本人は感動すればするほど声が出なくなる。そんな反応の違いも面白いですね。

私は静岡県掛川市の出身で、掛川市ふるさと親善大使も務めています。今年は日本とイタリアの国交が始まって150年。

これを機に、掛川市とイタリアのペーザロ市が姉妹都市提携を結びました。ペーザロ市は数々のオペラを作曲したロッシーニの生まれた街です。ふつう、姉妹都市になる前は1年ほど友好都市として提携するものだそうですが、今回は市長同士が意気投合し、ぜひ150周年の今年のうちに姉妹都市になろうということでそれが実現しました。これも音楽の力のおかげでしょう。

11月27日には鎌倉の覚園寺でコンサートを開きます。紅葉を愛でつつ音楽を楽しみ、この日のために調合したお香と、イタリアのラ・モンティーナというフランチャコルタ(スパークリングワイン)を味わうという五感を満たす贅沢なひと時になりそうで、私も期待しています。

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テノール歌手 榛葉昌寛
1966年、静岡県生まれ。東京芸術大学卒業後、国際ロータリー財団奨学生としてイタリア国立ミラノヴェルディ音楽院で学ぶ。99年、テーラモ市立劇場での「椿姫」アルフレード役でイタリアの劇場にデビュー。日伊両国を中心に活躍中。ミラノ在住。

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(テノール歌手 榛葉 昌寛 長山清子=構成 本多ハル子=撮影)

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