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管理職とリーダーの「決定的な違い」とは

プレジデントオンライン / 2017年11月7日 9時15分

会社のヒト・モノ・カネを振り分けるのは「マネジャー」の仕事です。一方、「リーダー」の仕事は、ビジョンを描き、社員のベクトルをあわせること。日本ではどちらも管理職の仕事だと捉えられがちですが、2つの違いを知ることで仕事のやり方は大きく変わります。人材開発のプロが、これから3回にわたって「リーダーシップ」について解説します。(前編、全3回)

■AI時代にますます必要なリーダーシップ

「働き方改革」に苦戦している企業が多いようです。実際のところ、仕事の量を減らさずに、残業時間を減らすのは難しいでしょう。ただし近い将来、こうした状況を「AI(人工知能)」が変えてくれるかもしれません。

というのは、AIは、これまで多くの時間がかかっていた「判断業務」のサポートに役立つと考えられているからです。たとえば、ある投資案件にゴーサインを出すのか、出さないかという大事な判断を想定しましょう。人間の場合、情報収集や分析には膨大な時間がかかります。ところが、AIは大量の情報を読み込み、そこからすばやく相関を見つけ出すことができます。判断の前提となるシナリオを複数示すことは、人間よりAIのほうが得意です。人間はAIの分析をもとに、判断だけを行えばいいわけです。

こうしたAIの発達を背景に、「AIが人間の仕事を奪う」という予測があるようです。心配はいりません。AIにはできそうにないスキルがあるからです。それが「リーダーシップ」です。

そう聞くと、「リーダーシップってスキル? 自分で磨けるものなんだっけ?」と意外に思う人もいるかもしれません。米国を中心にリーダーシップの研究は経営学の大きな分野で、その成果としてリーダーシップは後天的に学ぶことができると結論づけられています。それも、特訓形式で汗を流さずとも、日々のちょっとした努力で驚くほど身につくものなのです。

■リーダーシップとマネジメントは別物

ではここで、代表的なリーダーシップ論として、ハーバード大学のジョン・コッター教授が1980年代後半に打ち立てた理論を紹介しましょう。その理論は、「リーダーシップ」と「マネジメント」を分けたところに特徴があります。

実はこの理論には裏話があり、そのヒントが発表された時期と関係します。1980年代と言えば米国経済が絶不調の時期。多くの米国人が、「一体何が間違っているのか?」という問題意識を持っていました。その答えが、リーダーシップ。つまり、これまでの延長線上で考えて、粛々と効率的にビジネスを行うだけでは米国経済の復活は望めない、むしろ大規模な変革が求められているのだと結論づけ、そのためにそれまで重視されていた管理のためのマネジメントよりも、大規模な変革を実現する役割、すなわちリーダーシップを重視するようになったのです。これを念頭に、リーダーシップとマネジメントの違いを記した図表を眺めてみると、「米国経済回復のためにはこれまでとは違うことをやるのだ」という迫力が伝わってきます。

さてここで、冒頭の働き方改革とAIの話に戻りましょう。実はAIが得意としているのが「マネジメント」の分野です。たとえばマネジメントには「必要な資源を配分する」というテーマがあります。大量の情報を分析し、すばやく最適解を導くのは、人間よりAIのほうが得意です。

一方、リーダーシップが実行すべきことは「動機付けと鼓舞」とされています。コッター教授の定義によれば「障害や組織の壁を乗り越えるべく人材を勇気づける」、「組織のメンバーに承認を与える」といった仕事であり、すくなくとも短期的にはAIでは対応できないでしょう。このため「AIに仕事を奪われるのではないか」といった心配を持つ人には、リーダーシップを身につけることをお勧めしているのです。

■リーダーシップを「試着」する

ただ、リーダーシップには苦手意識を持っている人が多いようです。「目立つのが嫌」、「失敗したときのリスクが大きい」といった理由を聞きます。そんな方にお勧めしたいのが、リーダーシップを「スタイル」と捉えるアプローチです。リーダーシップにはいろいろなスタイルがあり、「最もすぐれたリーダーシップのあり方」があるわけではないのです。

スタイルという言葉は、「自分に似合う服装かどうか」といった場面でも使うと思います。同じように、仮にひとつのリーダーシップ・スタイルを試してみて、自分に合わなければ止める。そんな「試着」のように考えると、いろいろなスタイルにも気軽に取り組めると思います。

これには学問的な裏付けもあります。米国でのリーダーシップ研究の結論として、リーダーのあり方は状況に応じて変えるべき、とされています。「状況依存的」といいますが、ある状況において成果を出したリーダーが、別の状況で必ずしもうまくいくとは限りません。

あなたの会社にもいませんか? 役職に上がる前は、みんなの「兄貴分」として頼られる存在であった人が、管理職になると途端に輝きを失ってしまうことが。あれは、環境が変化したにもかかわらず、リーダーシップ・スタイルを変えることができなかったために起こった悲劇です。日本人はどうしても「リーダー」と聞くと「力強く組織を引っ張っていくスーパーマン」のようなイメージを思い浮かべがちですが、そのスタイルは状況に合わせて変えていくべきなのです。

だからスタイルは「服装」と同じなのです。服装はその時々の状況にあわせて変えていくべきです。プライベートではTシャツ短パンでも、ビジネスにおいてはスーツで決める、あるいは終業後のディナーではちょっとカジュアルさも出してみる……。そうした使い分けをするのは、リーダーシップでも同じです。欧米人の管理職と比べると、日本人の取るリーダーシップ・スタイルは幅が狭いとも言われており、意識的に広げていくことがビジネスでの活躍につながります。

この連載ではリーダーシップ、会計、プレゼンテーション、「怒り」のコントロールという4つのテーマについて、専門家4人がそれぞれ3回にわけて解説していきます。次回はリーダーシップの中編、サーバント・リーダーシップについて。11月21日火曜日掲載の予定です。

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木田 知廣 (きだ・ともひろ)
シンメトリー・ジャパン代表、米マサチューセッツ大学MBA講師。人事コンサルティングファーム、ワトソンワイアットにて活躍した後、ロンドン・ビジネススクールにてMBA取得。帰国後は「グロービス経営大学院」の立ち上げをゼロからリードし、前身的なプログラムGDBAを 2003年4月に成功裡に開校させる。2006年シンメトリー・ジャパン株式会社を立ち上げ、リーダーを育成したい企業向けに研修を提供中。アダットパートナー講師。

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(シンメトリー・ジャパン代表、米マサチューセッツ大学MBA講師 木田 知廣)

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