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11年前"安倍退陣"は改憲論から始まった

プレジデントオンライン / 2018年1月26日 15時15分

2017年11月1日、衆院本会議で首相指名を受け、あいさつ回りで立憲民主党の枝野幸男代表(左)と握手する安倍晋三首相。(写真=時事通信フォト)

1月22日の自民党両院議員総会。安倍晋三首相は出席した衆参国会議員の前で、改憲について「いよいよ実現する時」と初めて表現した。安倍首相からみれば、今回の憲法政局は11年前のリベンジだ。一方、反対勢力の中心は立憲民主党の枝野幸男代表。役者は11年前と同じ。改憲論議はどんな結末を迎えるのか――。

■11年前の「デジャビュ」のような改憲論議

1月22日、国会が召集され、2018年の国会論戦が始まった。ことしの政治は、安倍晋三首相が血道を上げる憲法改正をめぐる論争が最大のポイント。改憲勢力と、改憲に反対の勢力のせめぎ合いが中心となる。

安倍首相は、年内の改憲発議を目ざして自民党にゲキを飛ばす。かたや反対勢力側からは昨年の衆院選で躍進した立憲民主党の枝野幸男代表が、それに真っ向から立ち向かおうとしている。しかし、この光景。どこかで見たような……。

そう、2007年、今から11年前、第1次安倍政権の時。デジャビュ(既視感)ともいえるようなことが起きていた。本稿では、今の政治情勢と11年前を比較しながら今年の改憲論議の行方を占ってみたい。

■改憲を「いよいよ実現する時」と表現

「わが党は結党以来、憲法改正を党是として掲げ、長い間議論を重ねてきた。私たち政治家は、それを実現していく大きな責任がある。いよいよ実現する時を迎えている。その責任を果たしていこうではないですか」

1月22日の自民党両院議員総会。安倍首相が語気を強めて語ると、出席した衆参国会議員から拍手が上がった。改憲を「いよいよ実現する時」と表現したのは、これが初めてだ。

安倍首相は1月4日、三重県伊勢市で行った年頭会見でも「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく。自民党総裁として、そのような1年にしたい」と語っている。今年に入ってからフルパワーで改憲に走っている。「いよいよ」「今年こそ」という言葉からは18年中に大きく動かそうという決意が伝わってくる。

これまで安倍首相は、胸の内では改憲に強い意欲を見せながらも、言葉では「自民党に任せる」という表現を貫いてきたが、今年に入って「党総裁」として自ら陣頭指揮をとる考えを隠さなくなったのだ。

■安倍首相の考えを「特異なもの」と断じた

ファイティングポーズをとる安倍首相に対し、改憲に反対の勢力も敵意をむき出しだ。枝野氏は、1月4日の年頭会見の後「国民のためにプラスになり、立憲主義をさらに強化し、国民が望む憲法改正なら積極的に対応したいが、現時点でそうしたものは感じていない」と改憲の機が熟しているとの安倍首相の見方を否定。さらには「(改憲願望は)安倍さんの趣味ではないか」と、切り捨てている。

そして24日の衆院本会議代表質問では、憲法についての安倍首相の考えを「特異なもの」と断じ「まっとうな議論ができるはずもない」と語った。

時計を11年前の07年に戻そう。この年、1月4日の年頭会見で安倍首相は「新しい時代にふさわしい憲法をつくっていく意思を明確にしていかなければならない。私の内閣として改正を目指していきたい」と語り、夏に予定される参院選で改憲を争点に訴える考えをはっきりさせた。当時、憲法問題については国会の憲法調査会で超党派の議論を重ねてきた。それを選挙の争点にしようという発想は異例のことだった。

一方、当時、衆院憲法調査会の民主党理事で若手論客として台頭してきた枝野氏で「憲法を選挙の争点にしようということは、立憲主義が分かっていない。その意味で安倍首相は究極の護憲派だ」とこき下ろした。

■祖父・岸信介元首相の無念を晴らす

2人の論争、11年たった今もそっくりではないか。悲願である改憲を自らの手で成し遂げようという安倍首相。安倍首相のもとでの改憲は断固阻止しようという枝野氏。構図は全く同じだ。日本の改憲論がぐるぐると回りながらほとんど進んでいないことを示すエピソードといえよう。

11年前の論争は、結論から言えば枝野氏が「勝った」。当時の安倍氏の改憲論は、どこをどのように変えようと思っているのか国民に伝わらず、ただ、改憲を達成できなかった祖父・岸信介元首相の無念を晴らそうとしているようにしか見えなかった。安倍氏が改憲を訴えれば訴えるほど、国民は冷めていった。年頭会見の後、「消えた年金」問題も発覚。安倍内閣の支持は落ち7月の参院選で自民党は惨敗。体調も崩した安倍氏は9月、退陣する。一方、枝野氏が所属する民主党は参院選の勝利で、政権奪取の足掛かりをつかんだ。

当時、自民党内では「首相が憲法を政局に利用しようとしたのが、最大の失敗だ」というささやきが漏れた。一方、枝野氏に対しては「安倍退陣の流れをつくったMVPの1人」という声が上がった。

■互いに成長して、11年ぶりに迎えた因縁の対決

それでは、今年の論争はどうなるだろう。安倍氏は第1次政権の時のようなひ弱さは消え、憲政史上最も長い期間、首相を務める可能性が現実味を帯びてきた。歴史上に残る首相の仲間入りしつつある。

かたや枝野氏は、昨年の衆院選で立憲民主党を立ち上げ、枝野ブームを巻き起こした。自民党とは規模ははるかに違うとはいえ、野党第1党の党首になった。

互いに成長して、11年ぶりに迎えた因縁の対決は興味深い。しかし、今回の情勢は、圧倒的に安倍氏有利というのが衆目の一致するところだ。

安倍首相が改憲論を政局に利用しようという指摘は、今回もある。しかし政権復帰後、5年を超えた安倍首相はその指摘をはね返す政権基盤を確立している。

■夏ごろに「Xデー」を迎えることに

改憲、特に9条の改正については、今なお国論が2分するテーマではあるが、11年の間に少しずつ改憲賛成派、容認派が増えてきている。また、この間、行われた衆参両院の選挙の結果、国会の構成は改憲派が圧倒的多数を占めている。自民、公明の与党だけでなく、野党側は希望の党、日本維新の会などが改憲勢力に名を連ねる。枝野氏がどれだけ舌鋒鋭く「安倍首相の元での改憲は応じない」と訴えても、現状で多数派を構成するのは至難の業だ。

安倍首相からみれば11年前のリベンジを目指す2018年の憲法政局。枝野氏にしてみれば、11年のドラマを再現して、政権奪取に道筋をつくりたい。国会発議する場合は6月20日までの会期を大幅延長して夏ごろに「Xデー」を迎えることになる。

(写真=時事通信フォト)

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