麻布中合格の小6の学力を上げたゲーム名
プレジデントオンライン / 2018年6月6日 9時15分
■「ニンテンドーラボ」が好きな子は中学受験で戦える
2020年に小学校でプログラミングが必修化されることを見越して、民間の「ロボット教室」や「プログラミング教室」が大人気だ。しかし、そうしたスクールに通わなくても初歩的なプログラミングに触れることはできる。
そのひとつは今春、発売された「ニンテンドーラボ」。家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」と、段ボール製の工作キットを組み合わせて遊ぶ新機軸のゲームツールだ。
切り込みが入った段ボールのシートからパーツをくりぬいて釣りざおやピアノ、ロボットなどを組み立てる。そこにゲーム機の本体やコントローラーを合体させる。
ニンテンドーラボの「バラエティキット」には、リールをまわして魚つりゲームができる「つり」や、鍵盤を押すと音が出る「ピアノ」など5種類の工作キットがある。また、同「ロボットキット」には、ロボットを組み立てるための工作キットが入っている。
▼細部へのこだわりがあり、物事を論理的に組み立てられる能力
これはただの遊び道具ではない。
段ボールの工作キットを指示に従い組み立てる。その工作物の動きと(ニンテンドースイッチの)画面上のリールやロボットとが連動。VR(仮想現実)体験ができる。自分で組み立てたものが画面上で動くので、「仕組み」を理解するきっかけにもなるだろう。
純粋なプラモデル作りが好きな子には「工作」面がやや物足りないかもしれないが、「ゲームはまだ早い」といわれるような幼い子供がいる家庭でも、「知育玩具」として使える可能性がある。
長年、中学受験生を指導していて思うのは、手先が器用な子は学力が高いということである。もちろん不器用な子の中に、とてつもない学力を持った子もいるが、細かい作業に慣れている子のほうが、細部へのこだわりがあり、物事を論理的に組み立てられる能力が高い。
そうした子は、算数や理科などの難解な問題であっても、粘り強く考え、正答を導き出すことができる。手先を動かし立体的なモノを作ることで脳が鍛えられ、また忍耐強く物事を仕上げる能力も備わるのではないかと考えている。
■「世の中の常識」をゲームで知ると偏差値が上昇
こうした「学力を高めるゲーム」は、最新の作品に限らない。たとえば「シムシティ」だ。これはプレイヤーが市長として街づくりを行うシミュレーションゲームで、1989年に初めて発売され、1990年代に一世を風靡した。現在もスマホ向けゲームアプリ「シムシティ ビルドイット」などで遊ぶことができる。
面白いのは、街の環境を整え人口を増やし、税収を上げ、さらに街をよくしていく、というプロセスの中で、さまざまな「世の中の常識」を学ぶことができることだ。
ただ住宅地を作るだけでは、住民は満足しない。道路も公園も必要だ。職場として工業地を作る必要もあるのだが、公害問題が起きるので住宅地の近くには作りにくい。ライフラインである電力を作るために発電所が必要で、発電量からすると原子力発電所が効率的だが、事故リスクが怖いので設置するなら離島に……といった工夫がいる。
中学受験で有利に戦える子は、精神年齢が高い。言い換えれば「世の中の常識」「大人の常識」が分かっている子は強い。一問一答ではなく、その場で考える問題や、自分の言葉で記述する問題が増えているからだ。
以下は最近の中学入試の「社会」で出題された問題だ。
▼ホテルの宿泊料金(1泊2食付き、1名料金)
・月曜日~金曜日の宿泊料金:9,800円
・土曜日の宿泊料金:11,800円
(学習院女子中等科2010年)
(参考記事:「頭のいい子」を作る親の夏休み旅行術)
以前にも紹介したので、ご存じの読者がいるかもしれない。こうした問題に対し、「シムシティ」のような社会常識を養うゲームは役に立つ。
▼「マインクラフト」なら未就学児でも大人の常識学べる
同じことは、ここ数年流行している「マインクラフト」にもいえる。これは3D空間に立方体のブロックを配置して、さまざまなものを自由につくるゲームだ。シムシティは小学校高学年以上向けだが、マインクラフトは未就学児でも遊べる。
マインクラフトでは、ブロックを使って建物も作れるし、村や街を作ることもできるし、線路も作ってトロッコを走らせることもできる。何のブロックをどのように組み合わせれば自分の理想に近いものができるのかを試行錯誤する。まさに創意工夫していく点が「教育」に資する。
■「マインクラフト」に没頭した子が超難関・麻布中学に合格
さらに、このゲームでは「大人の常識」を学ぶこともできる。例えば、ゲーム内で牛を倒すと生肉と皮が手に入る。その生肉をかまどで焼くと焼き肉になり、空腹度が改善する。かまどで肉を焼く時には石炭や木炭が必要だ。そもそも、かまどを作るためには石を掘ってこなければいけない……。
このように、ゲーム内で、「何を使って何を作るのか」を考えることになり、世の中の仕組みを学ぶことができる。
マインクラフトは学校教育でも実際に用いられている。CNET Japanの記事によると、立命館小学校(京都府)では、マインクラフトを活用し、「答えを決めない」という課題解決型学習を行っている。
ある授業では、清水寺や金閣寺といった京都の観光名所をマインクラフトの中で制作し、ゲーム内の「エージェント」に観光ガイドをさせるようにプログラミングした。その過程で子供達は話し合いを重ね、「トライ&エラー」を繰り返す。これらの経験を通して、実社会で求められる能力開発を行おうとしているのである。
筆者の教え子にもマインクラフトに没頭していた子がいた。彼はかなりゲームにはまっていたが、無事、首都圏の超難関・麻布中学に合格した。
多くのゲームは、「ボスキャラを倒す」という目標は、時間さえかければクリアできるようになっている。一方、マインクラフトにはそもそも「ボスキャラ」がいない。明確なゴールは存在せず、プレイヤーは自ら目標を作らなければならないのだ。
麻布中学に合格した彼は、建物や町を作ることに熱中していた。自分で目標を立てて、自分でそれをクリアしていくゲームを進める中で、創意工夫や試行錯誤を重ねることは、思考力を高めることになるだろう。
一方、攻略ページや動画を見て、それらをただ真似することに時間を費やす、というだけでは思考力は高まらない。それは学習効果という意味では、ゲームの悪い遊び方だといえる。
▼「桃鉄」で中学受験の社会は乗り切れる
ほとんど「勉強」と思われるゲームもある。
それは1988年に第1作が発売されて以来、さまざまなゲーム機で展開されてきた「桃太郎電鉄」シリーズだ。最新作はニンテンドー3DS版の「桃太郎電鉄2017 たちあがれ日本!!」。そのほかスマホアプリでも遊ぶことができる。
筆者は、中学受験の本番までまだ時間のゆとりがある小学4年~5年生には「どうせゲームをやるなら桃鉄」と伝えることもある。
「桃鉄」は、鉄道会社の運営をモチーフとしたゲームで、プレイヤーはサイコロを振りながら日本中を走り回り、ライバルと競いながら、各地の「物件」を買い集めていく。ポイントは、登場する地名がすべて本物で、物件購入を通じて、その土地の特産品を知ることができる点だ。
たとえば、山形・天童には、さくらんぼ農園、ラ・フランス園、将棋の駒工場などの物件が登場する。山形県は、さくらんぼとラ・フランスの生産量が日本一であり、天童市は伝統的工芸品の将棋の駒で有名だ。
■「桃鉄」なら遊びながら地理も歴史も覚えられる
また山梨・甲府では、ぶどう園やもも園といった物件が登場する。山梨県はぶどうとももの生産量が日本一だからだ。子供は「山梨はぶどうやももが有名なんだな」ということがわかる。さらにシリーズによっては山梨の物件を独占すると、戦国武将の武田信玄が現れることがある。特産品だけでなく、歴史上の人物も数多く登場するなど、社会常識を自然に学んでいくことができるのだ。
なお各物件には「収益」が設定されており、年に数%しか収益を得られないものもあれば、年に50%もの物件もある。中学生にもなれば、こうした物件の収益性を考えて、どの物件購入が投資に向いているかを考えるようになる。経済の勉強の入口にもなりえるのだ。
以上、賢くなるゲームをご紹介した。だが、来年の受験を目指す小学6年生や中学3年生がゲームに没頭していいかと言われれば、それは違う。残り数カ月、人生の節目ともなる大きな勝負に向けて「受験勉強」に没頭するべきだ。ゲームをするのは、小学5年または中学2年までにとどめたほうがいいだろう。
(中学受験専門塾ジーニアス代表 松本 亘正)
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