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50歳で年収1000万→400万転職は幸運だ

プレジデントオンライン / 2018年7月10日 9時15分

写真=iStock.com/YinYang

人材の流動化が急速に進んでいる。いま企業が考える「生き残れる社員」とは、どんな人材なのか。老後を見据えたとき、50歳時点でどんな働き方をしていればいいのか。サービス、医療、IT関連企業の人事部社員に、匿名で話を聞いた――。

■接客、事務が激減、定型業務は自動化

――AI(人工知能)など技術革新により会社の業務はどう変わるのか?

【サービス】うちは外食店舗も運営しているが、すでにお客の注文はセルフサービスになってきており、店員がオーダーを取りにいかない時代がそこまできている。しかもインバウンド向けに多言語で注文できる。今後このシステムが急速に普及すれば接客担当は徐々にロボットに代わり、残るのは料理人だけになるのは間違いない。

【医療】うちも事務作業など定型的な業務は自動化システムでどんどんなくなっている。今後は業務の進行や判断など複雑なマネジメント業務だけになり、残りは営業職としてがんばってもらうことになる。その結果、営業も無理だとなると正直言って働いてもらう場所もなくなるだろうね。

【IT】うちは省力化の技術や製品を提供している側なので、今は本当に忙しい。それでもプログラマーや営業担当のSE(システムエンジニア)の業務の効率化の仕組みも進んでいる。長年、定型に近い作業をしているエンジニアの居場所はなくなるだろう。それよりも大変なのは銀行さんだ。これまでも拠点の統廃合をやってきたが、いよいよ人に手をつけるしかないみたいだ。業務を合理化して別の部署に異動させても結局、その部署の人員がダブついてしまう。

【医療】銀行の一番のお客は高齢者だから一挙に店舗を閉じることはしないだろうが、年寄りでも団塊世代以降の世代はスマホで入出金や決済ができるようになる。今後は70歳になって窓口に行く人も減るし、銀行店舗は完全にいらない存在になるかも。

――会社で生き残るためには、どういう能力が求められるか。

【サービス】人をコントロールするなど人間関係のあれこれを解決できる人は重宝されるね。とくにうちの場合はお客様対応係。AIが進化しても人間の対応は大事。逆に高度の専門能力を持つだけ、稼げるだけの人は優秀な人材とは言えない。人に関心を持ち大事にできる、公私混同しない誠実さを持ってしっかりと組織をマネジメントできる人がますます求められてくると思う。

【IT】同感だ。じつは販売子会社で希望退職者を募集しているが、ターゲットの1つは親分肌の課長職だ。それなりにどぶ板営業で実績を上げているが、部下に対するセクハラ、パワハラがひどく人事にも報告がきて、そのたびに注意していた。結局見逃してきたけどもう限界だ。コンプライアンスの徹底も今後は大事になるよ。

【サービス】やはりAIやITの進化の時代に、より問われるのは人間性と社会性だと思う。人として正しいことをしているか、企業として利益だけではなく社会に貢献しているかが大事になる。ベテラン社員が若い社員に間違ったことをしないように教えられる組織はこれからも強いだろう。

■AI化から逃げず、触れる努力を

【医療】関連するけど愛想は大事だ。生き残るにはAIには代替できないことをやるか、AIを上手に使うことだ。コンピュータには愛想がない。人間にも愛想がある人とない人がいるけど、ない人は負けてしまう。もう1つは40代、50代の人でもAIやデータサイエンスを勉強して使えるようにすること。使いこなして何かと組み合わせたサービスや商品を出す、あるいは社内業務を変えていくことは決して難しいことではない。問題は年を取ると新しいことを敬遠し、若い人に任せておけばよいと思うことだ。逃げ切ろうと思わずに触ってみることだよ。

【サービス】正直、大企業の50歳前後だと難しいね。昔はパソコンも触らないで部下にやらせていた上司もいた。今はいなくなったが、それでも俺が決めて指示し、部下がやるもんだと思っている上司も多い。

【IT】年輩者だけじゃない。これからは20代、30代でもPDCAを回せない社員は使い物にならないだろう。とくに大事なのはプラン。自分で仮説を立てて高い目標にチャレンジすることが今まで以上に重要になる。それができない社員は、いくら若くてもいらない。

【サービス】でも今後どうしてもリストラをするとなると40代以上になる。とくに過去の実績だけで判断し、新しい視点で検証できない、他の価値観や意見を無視して仕事をやってしまう人はダメだ。部下なしの担当者でも命令に従ったふりをするだけで実際はその通りにやれない人。また、部下に仕事を任せておきながらどうでもよい細かなところに口を出して干渉し、仕事を混乱させる上司もいらないね。

■変われない50代に、未来はない

【IT】そういう上司に限って最後は部下に責任を押しつける(笑)。また、職場の人間関係や感情にまつわるトラブルに関与しないで逃げまくる上司もいる。こっちからすれば「あなたはリストラから逃げ切れないよ」と言ってやりたい(笑)。

【医療】じつは2017年、数百人を希望退職でリストラした。会社としてはビジネスモデルの転換に匹敵するような新規事業に着手しようとしたが、挑戦意欲を持たせるために意識啓発の研修会を何度行っても動こうとしない。50歳の社員に今さら教育しても今までのやり方を変えようとしないことがつくづくわかった。それでいて非管理職でも残業代込みで年収1000万円近くもらっている。退職割増金として給与の40カ月分を上乗せして辞めてもらった。

【IT】気持ちはわかる。今は景気がいいのでうちの子会社のリストラでもそのくらいの割増金を支払った。アウトプレースメント(再就職支援)会社と契約して「その後の面倒見」付きだ。会社が新しいことにチャレンジしようとしているのに、ついてこられなければ逆に抵抗勢力になりかねないし、仕方がないと思う。

【医療】もちろん40代後半以降の社員で残ってがんばりたい人にはチャンスを与えた。一方で数百人を切りながら、外資系出身者など数百人を新たに採用しているが、ビジネスのためには必要なこと。今後は人事制度も実力主義を強化したものに変えるし、これまでの社員にはゼロから出直すつもりで働いてもらいたいと願っている。

【サービス】会社に必要とされるには50歳からでも遅くはない。学習意欲を持って新しい分野に挑戦しスキルを磨くことだ。余人をもって代えがたいスキルや経験があれば、定年後も会社に必要とされることは間違いない。

【IT】仮にリストラされても今の経済環境なら待遇を気にしなければ再就職することができるだろう。50歳で年収1000万円もらっていた人が600万円に下がっても悲劇じゃない。あるいは中小企業に転職し、60歳以降も働くことを見越して自分の経験とスキルを活かせる仕事であれば400万円でも悪くないのではないか。奥さんが働いて300万円稼げば2人で700万円になる。十分に老後も生き抜いていけると思う。

(ジャーナリスト 溝上 憲文 写真=iStock.com)

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