"パワハラ人間"が出世していく構造的理由

プレジデントオンライン / 2018年10月21日 11時15分

写真=iStock.com/tampatra

■「良い部下」が「良い上司」になるとは限らない

上司のパワハラ発言に悩まされる人は多いでしょう。パワハラ上司を見るたびに、「なぜこの人はえらくなれたのだろう?」と素朴な疑問が頭をよぎることがあるかもしれません。部下や他人との付き合い方が下手なのに、どうして昇進できたのか。

ズバリ、その上司は「上司の上司」からのウケが良かったがために昇進できたのだと推測できます。

そもそも、上役に接するコミュニケーションのスキルと部下に接するスキルでは性質が異なります。平社員時代に上の意を汲み、ゴマをすり続けた結果、上司から可愛いがられて、出世できました。しかし、自分より下の後輩や新人に接する力は身につけてこなかったため、部下の気持ちを推し量れず暴走するパワハラ上司になってしまうのです。

近年になって「ハラスメント」の考え方が日本でも定着したことで、問題が表面化したわけですが、もともとこのような人々は世間にたくさんいました。酷い暴言を吐きながら「今年の新人は打たれ弱い」などとあざ笑う。そしてそんなダメ上司はいまだ数多く野放しにされています。

なぜそんな事態になってしまうのか。シンプルに言えば、自分にゴマをする居心地の良い人間ばかりを引き上げる「上司の上司」の問題であり、さらにその上の上司が……と突き詰めていけば、日本の組織が抱える「構造的な問題」だと言えます。

ここで「上司の上司」が学ぶべきは、「良い部下」が出世したら必ずしも「良い上司」になるとは限らないということです。立場が部下のときには、直属の上司のことだけを考えればいいのに対して、上司ともなれば、何人もいる部下それぞれの個性や考えを見抜く、より細やかなコミュニケーションが求められます。

■人はどんなときに不満を感じるのか

心理学における良いコミュニケーションとは、相手の気持ちをいかに尊重できるかどうかにかかっています。とくに自尊心を傷つけられれば、人は不満を感じます。そして自尊心を抱くポイントは、人によって違う。その違いを見抜ける人こそ、デキる上司なのです。けれど、特定の上司にゴマをすっていればよかった人にはそれがわかりません。

また、パワハラ上司の多くは自己愛性(ナルシシズム)が強く、自分がほかの人より優れていると誇張したがる傾向にあります。自分のアイデアに過剰な自信を持ち、他人はそれに従うべきと勝手に思い込んでいる。そのタイプは、自分から見て「劣っている人」を見ると攻撃的になりやすいのでさらに厄介です。

では、そんな上司に部下はどう応じたらいいのか。普通なら、「上司の上司」に相談することも考えられますが、きちんと人を見抜ける上司ならパワハラ上司の暴走を抑制できたはず。すでに、「上司の上司」もパワハラ上司に取り込まれている可能性が高いと考えるべきです。

パワハラが明らかなら、総務や労働組合など職場の然るべきところに相談することが大切です。その際に重要なのは、同じ立場の仲間を募ること。上司と職場で1人対立することは、あなたの職場環境をさらに悪くしてしまいます。

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岡本真一郎
愛知学院大学心身科学部心理学科教授
岐阜県出身。『悪意の心理学』『言語の社会心理学』(いずれも中公新書)など著書多数。

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(愛知学院大学心身科学部心理学科教授 岡本 真一郎 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)

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