「就活支援」に超熱心な大学ベスト10校
プレジデントオンライン / 2019年2月4日 9時15分
■なぜ就職支援が、充実してきたのか
昔はあまり目立たない存在だった大学の就職課。それが今や、多くの大学が「キャリアセンター」を標榜し、就職支援に力を入れるようになった。いつから変わったのか。大学通信常務取締役・安田賢治氏は、「支援活動が特に充実するようになったのは、2008年9月のリーマン・ショック以降のことです」と語る。
「新卒の就職がきびしくなり、同時に高校でもキャリア教育が進んだことで、『どこに入れば就職ができるか』という観点から、学生が大学を選ぶようになりました。学生は大学に就職の面倒を見てくれることを期待し、それに応えるべく、大学も支援を手厚くする状態が続いています」
求人票が張り出され、卒業生による企業レポートが読めることが数少ないメリットだったのは昔の話。今はほとんどの大学が、面接指導、エントリーシートの添削といった個別対応から、学内合同企業セミナー、大学主催インターンシップなどの企業と連携した活動まで、きめこまかい支援を続々と展開している。就職みらい研究所主任研究員・増本全氏によれば、最近目立つのが、「保護者に向けた説明会」だという。
「少子化や社会構造の変化も背景に、保護者は自分の子どもの就職に対する関心が強く、年々、説明会に参加する保護者が増えています。ただし親が『知らないから、やめときなさい』という中に優良企業が存在するというケースもあるため、就活の現状や、かつての就職環境との変化から伝えることが多いですね」
そしてもうひとつのトレンドが、低学年からのキャリア支援だ。キャリタス就活編集長・駒形一洋氏は次のように説明する。
「この数年、就職率は高い数字を維持していますが、ミスマッチや離職率の高さといった問題もあり、学生の質に物足りなさを感じている企業も少なくありません。そこで各就職課は、早い段階から社会人として適した人材を育成していこうと、1~2年生に向けたセミナーやインターンシップなどに力を入れている。弊社の調査によれば、7割以上の大学が行っています」
■同業者から高い評価を受ける2校
大学は学生にどこまで手を差し伸べているのか。プレジデント誌編集部は大学通信が高校の進路指導教諭の回答を集計した「就職に力を入れている大学」ランキング上位50校の就職課を対象に、評価する他校の就職課についてアンケートを実施。さらに前出の識者の話を参考に、支援に熱心な就職課ベスト10校を独自に選出した。
多くの同業者から支持を集めたのが、大学通信提供のランキングでも1位と2位だった明治大学と金沢工業大学だ。明治大学は、就活が始まるとノウハウを書きこんだ専用手帳を配布し、士気を高めるための「出陣式」を開催。プログラムも豊富で、4年生の12月には中小企業の社長が内定の出ていない学生を直接スカウトする採用イベントまで設けている。他校からは「卒業生の強固なネットワークの構築ができている」(専修大学)という評価もあった。
就活用バスの運行や、卒業生のビッグデータ活用など、独自の対策が目立つのが金沢工業大学。「就職支援を教員が主体的に実施している」(福岡工業大学)の声があったように、教員が「就職指導も教育の一環」の考えを共有し、「常に学生の活動状況は100%把握しています」(金沢工業大学)と自信を見せる。専門教員の5割が企業出身者で、実態に即したアドバイスができるのも強みだ。
このほかにも各大学が、知恵を絞って学生の成長を促そうとしている。子どもの就職が気になる読者は、参考にしていただきたい。
【一橋大学】企業垂涎! 一橋のパートナー
「キャリア・パートナーシップ・プロジェクト」を立ち上げ、過去5年間に約3名以上の一橋大学生を採用した企業に声をかけて組織化。企業は学内会社説明会に参加でき、学生も学内で効率的に就活ができる。
【帝京大学】データを駆使した未来型就活
リクルートキャリアと提携し、学生のデータベースを構築。その情報を分析して学生の能力を把握し、「このタイプの学生にはどのサポートが最適か」を導く取り組みを17年から始めた。18年はAIが採用面接を行うサービスも試験的に導入。
【昭和女子大学】人生の先輩にキャリアを相談
学生が信頼できる社会人に直接会って、卒業後のキャリアプランやライフスタイルについて相談できる「社会人メンター制度」を2011年から導入。メンターのOG率はわずか2割未満。公募制で、20~70代の約300名の女性が登録している。
【武蔵大学】面談を重視する「ゼミの武蔵」
一学年1000名以上いる3年生に対し、1人40分の全員面談を実施する。もともと11個の個別ブースがあり、キャリアカウンセラーが10名以上常駐。在学生の面談利用回数は1人平均6回にのぼり、口コミで低学年時から利用する学生も多い。
【福岡工業大学】最大7万2000円を補助!
福岡県外で採用試験にかかる交通費・宿泊費の一部を補助。1人1回最大3万6000円を2回まで利用できる。そして9学科すべてに就職の担当職員を配置。3年生全員と面談して、個別の要望に対応する。
【金沢工業大学】AIに進路先相談ができる
県外出身者の学生が多く、首都圏や新潟・仙台に向かう就活用バスを例年運行。またIBMのAI「ワトソン」を修学アドバイザーとして今秋から学生に提供開始。卒業生のビッグデータから進路先相談にも乗る。
【学習院大学】通称「メンタイ」は学校名物
「面接対策セミナー」は、18年で28回目。講師を務める卒業生がボランティアで300名以上参加し、学生1300名を相手に2日間就活対策を行った。感動した3年生が翌年、サポーターとして参加する循環もある。
【明治大学】「就職の明治」は行事数でも圧倒
とにかく行事が多彩。セミナーだけでも「BtoB企業理解」「U・Iターン」「リスタート(4年生の6月に実施)」などがあり、さらに海外インターンシップ、理系に向けた工場見学会も。他大学の就職課も見学に来る。
【國學院大学】職員入魂のオリジナル冊子作成
大手一流企業を中心に約260社を職員が訪問。その企業分析や、採用担当者、卒業生からのメッセージを詰めこんだ企業研究冊子を学生に配布する。また就職課以外から選抜した職員もアドバイザーとして学生の相談に乗り、学校をあげてサポート。
【千葉商科大学】郊外の大学は地域密着で勝負
地元の企業や中小企業など、700社以上と「アライアンス企業」として連携する。主催する業界研究バスツアーでは、知名度の高くない優良企業を学生に紹介。就職した卒業生のうち、約3人に1人がアライアンス企業に就職する。
(プレジデント編集部 鈴木 工 写真提供=明治大学、金沢工業大学、学校法人 学習院)
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