コンビニで1万円のケーキが完売する理由

プレジデントオンライン / 2018年12月16日 11時15分

「シャトレーゼ アソートデコレーション」は大人気で完売間近だという(写真提供=セブン‐イレブン)

個食化などでクリスマスを中心とした「催事ケーキ」の市場が縮小している。だが一方でコンビニではクリスマスケーキの売り上げが伸び続けている。このうちローソンでは高価格帯のケーキが好調で、1万円のケーキはすでに完売したという。なぜコンビニでクリスマスケーキが売れるのか。どんな人が買っているのか。大手3社に聞いた――。

■クリスマスケーキの予約注文は増えている

コンビニのクリスマス商戦が、早くもラストスパートを迎えている。聖夜を盛り上げるクリスマスケーキのカタログ予約注文が、12月17~19日ごろに終了するからだ。「チキンと合わせてケーキの予約どうですかー」と、店員たちの声も高まっている。

ただ、クリスマスを中心とした催事ケーキの2017年の市場規模は596億5000万円で前年比97.5%(2017年・富士経済調べ)と、ここのところ縮小傾向にある。世帯人数が減って小さめのケーキが好まれるようになった、ふだんからケーキを食べ慣れた消費者が増えた、 “ハレの日需要”が薄れたなど、催事ケーキ市場が縮小した理由はいろいろと考えられる。

にもかかわらず、「クリスマスケーキの予約注文は伸長しています」と話すのは、セブン‐イレブン(以下セブン)・スイーツ開発担当の櫻井宏子さんだ。ローソンやファミリーマート(以下ファミマ)にも聞いたが、答えは同じだった。

なぜ逆境の中、コンビニのクリスマスケーキは売れているのか。大手3社が仕掛けた戦略から、クリスマスケーキのトレンドを考察したい。

■少人数用のケーキが人気

「最近は、少人数で召し上がれる小さめのケーキやアソート(詰め合わせ)ケーキが人気なんです」

前出のセブン・櫻井さんはそう言う。2017年の売れ筋には以下の3つのポイントがあった。

・イチゴが華やかなケーキ
・小さめの4号ケーキ
・アソートや個食用のケーキ

これに加えて、「クリスマスケーキを予約する7割は、購買の決定権を持つ30~60代の主婦」という自社データから、2018年のケーキのラインアップを決めていったという。

「2~3人向けの4号ケーキが好評なのは、世帯の人数が減ったこともありますが、『あれこれシェアして好きなものを食べたい』というニーズの高まりでもあると思います」(櫻井さん)

セブンのクリスマスケーキといえば、デザート専用工場で作る「クリスマスかまくら」(2500円)というドーム型のケーキが定番だ。真っ白いシンプルなビジュアルの中から、コク深いカスタードババロアが顔を出す斬新さにハマったスイーツ好きは多い。

「一番人気のケーキです。今年はいつも以上に売れている」(櫻井さん)

栗好きにはたまらない「銀座コージーコーナー 和栗のモンブラン」(写真提供=セブン-イレブン)

そのほか「銀座コージーコーナー 和栗のモンブラン」(2990円)や「シャトレーゼ アソートデコレーション」(3250円)といった新顔も好調だ。

「定番を押さえつつ、もう一つ違うケーキにもチャレンジしてみたいという心理があるのでは」(櫻井さん)

今年のカレンダーでは、12月24日が祝日で3連休になっている。土日を含め、家族や仲間と「3日連続クリスマスパーティーだ」という人もいるだろう。そうした今年ならではの購買スタイルを想定し、女性に強い「シェアして食べるニーズ」に応じたバリエーションの拡大が奏功している。

■2000円台のケーキを増やしたファミマ

実は「ケーキのバリエーションを豊かにした」という戦略は、ファミマもローソンも変わりない。だが、ラインアップからはそれぞれ個性がみえる。

「主力商品をリニューアルして強化しつつ、2000円台のケーキを増やしました」

というのは、ファミマのスイーツ開発担当の三木春香さん。世帯人数の減少や、クリスマスの楽しみ方自体が多様化してきたことから、セブン同様「小さめケーキ」や「アソートケーキ」が売れることはリサーチ済みだ。

そのうえで「お求めやすい価格」にもこだわったという。理由は、ファミマが「ファミリー(仲間)みんなで、わちゃわちゃ楽しむクリスマス=ファミクリ」を今年のクリスマスのテーマにしているからだ。

■有名パティシエとのコラボケーキも人気

身近な店のコンビニに、格式ばった雰囲気を求める消費者は少ない。それはクリスマスも同様だ。コンビニの武器は、おいしさに加えて、カジュアルさや驚き。そのうえコスパが良ければ、いうことはない。

看板ケーキの「ミルフィーユ・シャンティ」(画像提供=ファミリーマート)

好調なのは、昨年同様、看板商品の「ミルフィーユ・シャンティ」(4~6人向け・3200円)だという。

「イチゴショートケーキが定番という市場の中で珍しいミルフィーユです。シュガーコーティングしたさくさくとしたパイ生地が自慢。リピートされる方が多いんです」(三木さん)

ほかに、ケンズカフェ東京監修の「ショコラケーキ」(2800円)や上林春松本店監修の「抹茶のクリスマスケーキ」(2500円)といった、有名パティシエとコラボした「本格派」を選ぶ人も多い。百貨店や専門店なら5000円オーバーが当たり前というようなゴージャスなケーキが2000円台なのだから、経済観念にたけた女子会などでウケているのだろう。また子どものいるファミリーには、どでかいプリンが載った「プリン・ド・ガトー」(2300円)など、ユニークなケーキも人気だったという。

■ローソンで高価格帯のケーキが売れる理由

一方、ローソンのスイーツ開発担当の坂本眞規子さんは「1万円の『スペシャルストロベリークリスマス6号』は、あっという間に完売しました」と、桁違いの話をする。

「あれこれ選べるケーキがほしい」という消費者ニーズをキャッチしているのは、セブンやファミマと同じ。約40種あるケーキの価格は2000~3000円台が主流というのも、他社と差はない。

「7000円や1万円という高価格帯のケーキが人気というのは、ローソンの特徴ですね」(坂本さん)

なぜコンビニで1万円のケーキが売れるのか。筆者は都会のセレブ主婦がまとめ買いしているのでは、と想像したが、答えはまったく逆だった。

「百貨店や専門店のない地方でよく売れているんです」(坂本さん)

これには膝を打った。テレビで映し出される高価な専門店ケーキに憧れ、「せっかくのクリスマスなんだから、1万円くらいするケーキを食べたい」と願う人が多いのは、周りに“買い場”の少ない地方なのだ。

この“憧れニーズ”をローソンは以前から読んでいたという。だから、毎年高価格帯のケーキを欠かさない。インスタ映えする豪華なケーキが全国どこでも近所で手に入る――これこそ、コンビニの存在価値ということだろう。

酸味が特徴の「ルビーチョコレートのショコラケーキ4号」(画像提供=ローソン)

「ローソンも今年は、小さめのケーキやアソートケーキが好調です。でも『食べたことのない味と出会いたい』というお客さまの気持ちにもお応えしたい」(坂本さん)

そんな思いで今年初めて仲間入りさせたのが「ルビーチョコレートのショコラケーキ4号」(3200円)だという。

カカオ豆の中にある天然成分から作られるピンク色のチョコが「ルビーチョコレート」だ。希少価値が高いためローソンほか一部のメーカーやパティシエしか使っていない。これを「差別化商品」として投入したところ、「例年以上に女性の予約が増えた」。

■「おひとりさま」ケーキの新商品が増える

3社の話をまとめると「小さめ」「アソート」が、今年のコンビニクリスマスケーキのトレンドのようだ。だが、「ケーキ」というくくりでコンビニの販促戦略を深掘りすると、昨今新たな現象があるのに気づく。

12月初旬から「おひとりさま用」のケーキが売り場に数多く並ぶのだ。イチゴショートにショコラケーキ、チーズケーキ、モンブラン……各社手を替え品を替え、すでに新商品を続々と出しているのでチェックしてみてほしい。

「12月はケーキのニーズが高まる時期ですから、そのタイミングで個食用の品ぞろえも増やしていきます」(ローソン・坂本さん)

(左)個食ケーキが多いのも今年のトレンド/(右)「ウチカフェ」ブランドの個食ケーキも人気(撮影=吉岡秀子)

街がクリスマスカラーに染まるにつれ、ケーキやチキンが食べたくなる心理は、誰もが実感していることだろう。

しかし、改めて思う。かれこれ20年近くコンビニ業界を取材しているが、昔は「コンビニでオリジナルのクリスマスケーキを買う」という文化はなかった。それが今や、予約して買うパーティーケーキも、衝動買いできるおひとりさまケーキも、コンビニがトレンドの発信拠点だ。平成最後の師走、コンビニの進化を感じずにはいられない。

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吉岡秀子(よしおか・ひでこ)
コンビニ記者
関西大学社会学部卒業。会社員生活を経て、フリーランス記者として独立。2000年代前半からコンビニ業界に密着した取材を続け、ビジネスや暮らしに役立つコンビニ情報を各メディア、講演などを通じて発信中。著書に『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)など多数。

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(コンビニ記者 吉岡 秀子)

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