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コスト10分の1シェアオフィスの落とし穴

プレジデントオンライン / 2019年3月7日 15時15分

写真=iStock.com/vicnt

■シェアオフィスによって得られるもの、失うもの

2017年、米アマゾンの開発チームがシェアオフィス「WeWork」に入居したことが話題になりました。KindleやAmazon Echoのような優れた商品を生み、米マイクロソフト社も入居しているWeWorkは、18年2月から日本にも上陸し、4都市で展開しています。

シェアオフィスとは、その名の通りオフィスフロアを他の利用者と共有するサービス。提供会社によって多少内容は異なりますが、オフィスとしての利用はもちろん、セミナールーム、インターネット、コピー機、専用電話回線、郵便物の受け取り、取り次ぎの受付、細かいところだとドリンクサーバーなど、事業運営に必要なものが一通り揃っています。実際に私もシェアオフィスを利用して、ファイナンシャルプランナーの顧客応対を行っています。

シェアオフィスのメリットとしてまず挙げられるのがコスト。私が利用する千葉県内のシェアオフィスの月間コストは月1万円弱。この辺りで普通に賃貸事務所を借りると、安くても10万円前後が相場なので単純計算で10分の1と、かなりリーズナブルです。

また、冒頭で紹介したWeWorkのほかにもシェアオフィスは多数あり、自分の都合に合わせて柔軟に働く場所を決められるのも大きなポイント。通勤で混雑する場所を避けたり、子供の面倒を見るために自宅近くにオフィスを借りるなど、選び方は自由自在。環境が変わり移転することになった場合も、従来型の事務所では原状回復費用や什器の処分費用などがかかりますが、シェアオフィスではそのコストもほぼなし。圧倒的な低コストで移転が可能です。

そのほかにも、シェアオフィスは多種多様な異業種の方々が場を共有しており、新しい交流や発見があるかも。シェアオフィス側が定期的に勉強会や情報交換会を行うところもあるようです。

このように多くのメリットがあるシェアオフィスですが、やはりデメリットも。利用者は社労士や税理士といった士業の方や、IT・ウェブ系フリーランスの方など、客先に向かうことの多い個人事業主に近い業種には向いていますが、来客の多い業種や小売業などには向いていません。そのほかにも弁護士など、プライバシー保護の占有スペースを設けることが義務付けられている一部業種では開業することができないため、開業前によく調べる必要があります。

さらにプライバシー保護については、フロアを共有している以上、会話の内容を完全にシャットアウトすることは難しく、守秘を重んじる業種の場合は顧客からの信用を失うことにもなりかねず、安くなったコストよりも大きなリスクを負いかねません。

そしてシェアオフィスを利用するうえで一番ネックになるのが「信用」です。シェアオフィス利用者も提供企業も増加していますが、必ずしも利用者の取引先すべてにシェアオフィスへの理解があるわけではなく、不安を与える場合があるのも事実です。信用や権威を重視する業種の方は、ビジネス街などの従来型オフィスを借りたほうがいいかもしれません。

大切なのは、目的と場所、そして対外的イメージ。シェアオフィスを使ったからといって事業がうまくいくわけではありません。コストの低さだけなく、自分の仕事内容とシェアオフィスの適性をしっかりと考えたうえで上手に利用しましょう。

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黒田尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書は『50代からのお金のはなし』など多数。

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(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子 構成=宮上徳重 写真=iStock.com)

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