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やはり安倍首相はトランプ氏の「愛犬」だ

プレジデントオンライン / 2019年2月23日 11時15分

2019年2月20日、ワシントンのホワイトハウスで記者団に語り掛けるトランプ米大統領(写真=EPA/時事通信フォト)

■「安倍首相が自分をノーベル平和賞に推薦した」

「安倍晋三首相がトランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦した」というニュースが話題を呼んでいる。

新聞やテレビが一報として報じたほか、朝日新聞と毎日新聞が2月19日付の社説で取り上げて安倍首相とトランプ氏を批判した。

沙鴎一歩もプレジデントオンラインで「安倍首相はトランプ大統領の"愛犬"なのか」との見出しを付けて報じた。この記事はTOKYO MXの情報番組「バラいろダンディ」で取り上げられ、出演者たちは生放送で“愛犬談義”を繰り広げた。

出演者のひとりである舛添要一前都知事は、15日のホワイトハウスでの記者会見で、トランプ氏が「安倍首相が自分をノーベル平和賞に推薦した」と明らかにしたことを「あれは禁じ手のはず」と指摘した。

前回記事で沙鴎一歩も「記者会見という公の場で自慢すること自体がばかげている」と批判した。舛添氏が追及するように、たとえ推薦が事実であったとしても、公にしてはならないことなのである。この点は舛添氏の意見に賛成である。

■「自分はアメリカの大統領と同じぐらい偉い」

この後、舛添氏は、東大出身の国際政治学者から参院議員、厚生労働相、都知事と出世していくに従い、自分にも擦り寄ってくる“愛犬”が存在したという趣旨の説明をした。これが沙鴎一歩の偏屈な耳には自慢話のように聞こえた。自分は日本の首相を従えるアメリカの大統領と同じぐらい偉い人間だ、と主張しているようだった。

もうひとつ、気になったのは、舛添氏が安倍首相に対して批判しなかったことだ。沙鴎一歩は前回記事で、「それ以上に推薦したという安倍晋三首相はどうかしている。それほどトランプ氏に花を持たせたいのか」「どこまでもトランプ氏に擦り寄ってひざまずきたいのだろう。もはや安倍首相はトランプの愛犬だ」と書いた。舛添氏は安倍首相の推薦行為をどう考えているのだろうか。そこをしっかり話してほしかった。

■トランプ氏がノーベル平和賞の推薦を非公式に依頼

安倍首相は本当にトランプ氏をノーベル平和賞に推薦したのだろうか。

その後、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、報道機関の取材に対し「私は推薦していない」と否定している。文氏は「トランプ大統領はノーベル平和賞を受けるべきだ」と語ったことがあり、アメリカのメディアは「推薦したのは安倍首相ではなく、文大統領だろう」と報じていたが、それは事実ではなかったようだ。

安倍首相本人は、国会の答弁でノーベル委員会が平和賞の推薦者と被推薦者を50年間は明らかにしないとことを理由にノーコメントとしている。

しかし複数の報道によると、昨年6月の米朝首脳会談の後に行われた安倍首相とトランプ氏の会談のときに、北朝鮮の核・ミサイル開発の停止を前提に、トランプ氏が安倍首相にノーベル平和賞の推薦を非公式に依頼した。この情報を明らかにした政府関係者は「外交の世界では依頼を受けて推薦することは珍しくはない」とコメントしているという。

やはり安倍首相は推薦していたのである。

■「外交辞令では済まされぬ、露骨なお追従」

「安倍首相は本気で、トランプ米大統領がノーベル平和賞にふさわしいと考えているのか。外交辞令では済まされぬ、露骨なお追従(ついしょう)というほかない」

この書き方から、どこの新聞の社説かすぐに分かると思う。そう、安倍首相を嫌うあの朝日新聞の社説だ。「露骨なお追従」とは、皮肉の調味料がたっぷりと効いた言い回しである。実に朝日社説らしい。さらに朝日社説は安倍首相を追及する。

「安倍政権は会談後も、北朝鮮の脅威は変わらないとして、陸上配備型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』の導入を進め、米国製戦闘機F35計105機の追加購入も決めた。国内で危機感をあおりながら、トランプ氏には緊張がなくなったと感謝するのは、ご都合主義が過ぎる」

会談とは昨年6月の米朝首脳会談を指す。確かに安倍首相は北朝鮮の脅威を指摘しながら危機感をあおった。それを手のひらを返すように「自分がその脅威を取り除いた」と自慢するトランプ氏をノーベル平和賞に推薦するのはいかがなものか。開いた口がふさがらない。手前味噌にすぎる。

さらに朝日社説は「一貫しているのは、トランプ氏の歓心を買うかのような姿勢だ。ノーベル平和賞の推薦まで持ち出すとは驚く。国際社会の目にどう映るだろうか」と書く。

この指摘もうなずける。安倍首相の行動はお追従そのものだ。国際社会から軽蔑のまなざしを向けられても仕方がない。

■「ならば、国民に堂々と説明すべきだ」

朝日社説はオバマ前大統領とトランプ氏を比較する。

「09年に平和賞を受けたオバマ米大統領は、『核なき世界』に向けた決意を示し、世界に理想の力を再認識させた。それに対しトランプ氏は、偏狭な『米国第一』主義に走り、地球温暖化防止のためのパリ協定など、国際協調の枠組みに次々と背を向け、核軍拡にも踏み出そうとしている。とても平和賞に値するとは思えない」

「核なき世界に向けた決意」と「偏狭な米国第一主義」を持ち出してオバマ氏とトランプ氏を対照的に並べる書きぶりは見事で、トランプ氏の行動が、いかに非平和的であるかがよく分かる。

さらに「首相はきのうの国会で、ノーベル委員会が50年間、推薦者と被推薦者を公表しないことを理由に事実関係の確認を避けた。だが、推薦者が自らその事実を明かすことまで禁じられているわけではない」と追及するが、これもなるほどと思わせる。朝日社説に王手をかけられた安倍首相は今後、どう国会で答弁するのか見物である。

最後に朝日社説は「トランプ氏によると、首相は『日本を代表し、敬意を込めて推薦した』と伝えたという。ならば、国民に堂々と説明すべきだ。それもできないのに、あたかも日本の総意のように振る舞うのはやめてもらいたい」と訴える。

トランプ氏の政治がノーベル平和賞に値するなどとだれも考えないだろう。推薦は決して日本の国民の意思ではない。安倍首相の独断と偏見によるものだ。

安倍首相よ、数の力と小手先の論理で日本の国を動かそうとするのはもう止めてもらいたい。

■日本は安全を実感してないし、喜んでもいない

次に毎日新聞の社説を見てみよう。

見出しがしゃれている。「平和賞にトランプ氏推薦 安倍首相、ご冗談でしょう」だ。冒頭も「トランプ米大統領のこのことばを、安倍晋三首相はどんな気持ちで聞いたのだろうか」と書き出し、社説にしては読んでみようという気にさせてくれる。

毎日社説は「北朝鮮政策はうまくいっているとアピールする狙いがあるのだろう。だが、候補者や推薦者は50年間は秘密にする規則があり、発言は道義にもとる。首相はきのうの国会答弁で『コメントは控える』と述べつつ、否定はしなかった」と書いた後、疑問をこう投げかける。

「それにしても、日本国民はトランプ氏が言うように、安全を実感し、喜んでいるのだろうか」

トランプ氏が2月15日の記者会見で述べた「日本の上空をミサイルが飛ばなくなったのは私のおかげだ」と語ったことに対する疑義の声である。

■「口先だけの安定を強調するトランプ氏」

そのうえで毎日社説は続けざまにこれまでのニュースを並べる。

「昨年6月の米朝首脳会談では、金氏が非核化の意思を示し、トランプ氏が安全の保証を約束した。確かに米朝間に緊張緩和は生まれた」
「しかし、合意には日本に脅威となる核兵器や短・中距離弾道ミサイルの廃棄は明記されなかった」
「会談後の記者会見では米韓軍事演習の中止や将来的な在韓米軍の撤収に言及した。日本の安全保障に影響を与えかねず、日本政府は慌てた」

こう書き連ねた後、毎日社説は次のように指摘する。

「その後の8カ月を振り返っても、非核化は進まず、朝鮮半島情勢が安定に向かっているとは言いがたい」
「日本国民は、口先だけの安定を強調するトランプ氏に、むしろ不安を募らせているのが実情だろう」

そして最後にとどめをさす。

「日本政府もトランプ氏の機嫌を取るだけではなく、具体的な進展に向けて後押しし、安易な妥協をしないようクギを刺す必要がある」

■2月27日と28日にベトナムで開催される米朝首脳会談

2回目の米朝首脳会談は2月27日と28日にベトナムで開催される。会談の結果を受け、安倍首相はどう動くか。

アメリカの力を借りて、韓国と北朝鮮が終戦を宣告し、ひとつにまとまる動きを見せている。徴用工判決、韓国軍による火器管制レーダー照射事件、天皇陛下に慰安婦問題の謝罪を求める国会議長発言……。韓国はかつてないほど日本に反発している。北朝鮮は経済制裁解除に向けてしたたかに動き、核・ミサイル開発を継続させようと画策しいている。

果たして安倍首相はこの大きな波を乗りこなすことができるのか。安倍首相の鼎(かなえ)の軽重が試されるときだ。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=EPA/時事通信フォト)

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