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面接に強い子を育てる親の「10の相槌」

プレジデントオンライン / 2019年4月13日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

入試制度の大改革が始まる2020年以降、大学入試におけるAO・推薦方式の比重が格段に上がる。今から親にできることを、専門家3人に聞いた。

■東大・京大「推薦」は、通常レベルではムリ

大学入試において、AO・推薦入試による入学者は今や私立大学入学者の半数以上。国公立大を含めても全体の4割超となっている。

しかし、こうした制度を体験していない親世代には、「勉強のできない子がうまいことやる試験」とキワモノ視したり、逆に「部活や大会での全国レベルの成績や受賞歴がないとムリ」とイメージしている向きが多いようだ。

実際はどうなのか。城南AO推薦塾塾長の川原洋孝氏によれば、超難関大学については後者のとおりだという。

「東大・京大はセンター試験を課すなど学力的にも難関。求められる活動実績も科学オリンピックの国際大会出場など、通常レベルでは太刀打ちはムリ。文系も英検1級かTOEFL100のレベル、加えて特殊な活動歴が問われます。高校在籍3年間で対策可能とは思えません」(川原氏、以下同)

私立の二強・早稲田大と慶應義塾大も最難関だ。「英語力は英検の準1級以上のレベルが評価の対象。生徒会活動に加え、他校生とボランティア、ビジネス、独自研究などを行っていると評価が高い」。

面接試験の翌日に大学トップから「ウチにぜひ」と電話が入ったり、合格した早慶双方を蹴って米ハーバード大に進んだツワ者もいるという。

「難関大の合格者は、講師のアドバイスに忠実で素直。落ちるのは自己中心的な生徒です。正しい情報を持つ人間が得するのが、AO・推薦入試なんです」と川原氏は言い切る。

「何より重要なのは、経歴そのものではなく、大学側に提出する『志望理由書』の中身。最難関私大の中には、志望理由書をどこまでしっかり作り込むかで合否がほぼ決まるケースもあります。一般入試の偏差値70の大学でも、40~60の生徒が合格しています。本人の努力は不可欠ですが、学力で偏差値を20も30も上げるよりは現実的です」

となると、入学後についていけるのかを心配する親もいるだろう。

「本格的な入試対策によって、文章力が相当鍛えられます。大学ではむしろそれが活きて、トップクラスの成績を残している子も少なくありません」

▼面接は「志望理由書」の中身で決まる

■ビジョンを得たきっかけと行動力

では、AO・推薦入試とは実際にどのような試験なのだろうか。AO入試は自己推薦、推薦入試は学校長の推薦が必要という大きな違いがあるが、面接はすべて必須なうえ、ほかにも類似点は多い。

面接を受ける前にまず関門となるのが「志望理由書」。後述するが、面接とは非常に密接に関わってくる。

「大学に入って何をやりたいのか、将来何をしたいのかといった“ビジョン”が具体的であるほど、プラスに評価されます。『国際的に貢献したいから、国連やNGOで活動したい』程度では落とされる可能性が高いですね。一方、入学後にそのビジョンどおりに歩む学生がさほど多くないことは、大学側だって百も承知。だから、どんなに立派なビジョンが書かれていても、それだけで高い評価につながる可能性は低いと考えたほうが賢明です」

となると、重視すべきは何なのか。

「そのビジョンを描くに至った“きっかけ”がどれほど切実なものだったか。そして、そのきっかけに出合い、ビジョンを描くまでどれだけの“行動”をしたか、そして、それら3つがきちんと繋がっているかどうかが問われます。つまり、きっかけとビジョンを繋ぐ行動力を磨くことがポイントです」

しかし行動力を磨くと言われても、いったい何をどうすればいいのか。

「調査研究の対象となる現場や人を実際に訪ねる、フィールドワークを重ねればいいのです。高校1年生から始められれば理想的。最初の段階では、何をテーマにするかを明確に設定する必要はありません。『自分が動くことで日常では接する機会がないような大人が会ってくれて、真剣に話をしてくれる』という成功体験を積むことです」

その取っ掛かりとして、たとえばこんな意外なやり方がある。

「自分が住んでいる地域の地方議会議員に、『いま議会で話題になっていることについて教えてください』などとお願いすれば、丁寧に応対してくれます。間もなく18歳で選挙権を得る高校1、2年生は議員として味方につけたいし、うまくいけば、その保護者の票も期待できるのですから」

もちろん、議員に1度会って即ビジョンが描けたり、研究テーマが見つかるわけでもあるまい。フィールドワークへの抵抗感を小さくするために経験を積み重ね、その中からどこかのタイミングでテーマが見つかればいい。

「フィールドワークの一環として、大学や研究機関、企業、経済団体などが実施しているサマースクールやリーダーシッププログラムなどに参加するのも有効です。そういう場に集まる全国トップクラスの進学校の生徒らのコミュニティに加わることで、それまで入ってこなかった情報や刺激が得られます。自分のビジョンを築くうえで、とても有効なきっかけとなるのです」

■志望理由書を、本当に本人が書いたのか

こうして作成した志望理由書で、第一関門を突破できれば、その次の選抜試験である面接や小論文が待っている。

「面接時間は1人に約30分も取るケースもありますが、多くは10分程度。その時間内で何を見るかといえば、『本当に本人がちゃんと志望理由書を書いたのかどうか』。内容を突っ込まれたときに、具体的に答えられなければなりません。その際、フィールドワークを通しての体験や調査に基づいた内容であれば、具体的な回答ができます」

無論、面接そのものの練習も必須だ。

「たとえば、『高校時代に印象に残った出来事はなんですか?』と問われ『高校2年生のときの文化祭です』と答える。一問一答としては間違いではありませんが、そこで終わっていては何もアピールできません。面接官が知りたいのは、“何か”よりその“理由”です。面接時間を10分とすると、回答の分量は面接官の質問回数が8回に収まるくらいが妥当です。気付かぬうちに同じ話を繰り返すのにも注意。家族が模擬面接をしてあげたり、想定質問に答えている様子をスマホで動画撮影をして確認するのもいい練習になります」

いうまでもなく、面接官の数は1人とは限らない。

「ある最難関大学では、面接官として圧迫面接をする人、優しく諭すように話す人、司会役の3人をそろえます。うち1人は、志望理由書に書かれた分野の専門家。高校生が面接試験でいきなり威圧的な質問をされたら思わずひるんでしまい、ついブレたり、日和ってしまうものです。でも、そうなったら間違いなく不合格。志望理由書に書いたことがたとえ全否定されても、『やり切ります』と答えられるよう備えておかなければなりません」

面接で後ろめたさを感じていたり、嘘をついているときについ、出てしまう動きがある、と語るのは、身体と心の関わりに詳しいパントマイム・アーティストで、身体表現コンサルタントとしても活躍する荒木シゲル氏だ。

「『なだめ行動』と呼ばれているもので、顔をさわる、服をいじる、アクセサリーやネクタイに手がいくなどといった、余計な動きが出ると、怪しく見えてしまいます。注意したいのが視線です。嘘をついているときに視線をそらしたり目が泳ぐ人が、特に男性に多いからです」(荒木氏、以下同)

なだめ行動のすべてがマイナスとは限らない。しかし、初対面の相手に与える印象は重要だ。普段、子どもが無意識のうちになだめ行動をしていたら、指摘してあげるといいだろう。

「テレビの記者会見の映像を親子で見ながら『今のがそうだね』などとチェックするのもいいでしょう」

とはいえ、どんなに優秀でも、どんなに準備していても、彼らはまだ高校生、見知らぬ大人との会話に緊張は避けられない。適度な緊張は必要だが、過度な緊張は力を発揮する妨げとなる。

「そこで有効なのが『パワーポーズ』です。胸など身体を開きパワーや権力を示すようなポーズを2分間行うと、ストレス物質が減るという研究があるのです。これを面接の前に行うといいでしょう」

まず、形から入ることが重要。パワーを誇示するポーズを取ると、“心”も徐々についてくるというわけだ。

「普段から、学校や塾の試験前などにパワーポーズを取ったりその姿勢で歩く習慣をつけておけば、本番前でもやり忘れませんし、心を落ち着けるおまじないのような効果も期待できます。もし、圧迫面接にあって心が凹みそうになったときも、これに倣って身体が縮こまらないよう、少しだけ胸を開くことを意識すれば、それだけでも自分を奮い立たせることができます」

面接中、自分の姿勢を客観視できるようになるには、腰と上半身の状態を意識することがポイントになるという。

「体幹を意識したストレッチが効果的。写真や文章だけで伝えるのは難しいのですが、まず腰の位置を認識したら、次に腰と上半身の関係がイメージできるようになります。もともと様々な動きをするパントマイムの準備体操としてやっていた動きですが、身体のそうした意識を高めることで、自分の姿勢が堂々としているか、萎縮しているかがわかるようになり、着座していても自分の姿勢をコントロールできるようになります」

▼子どもは「ソフト」より「OS」を鍛えよ

■「すぐに仲良くなれる」という才能への気付き

こうした新しい形の大学入試に臨むわが子に、親は何をしてやれるのか。

「学校や予備校がやってくれる領域に、親は絡むな」と提言するのは、教育デザインラボ代表理事の石田勝紀氏だ。

「パソコンに例えると、家庭の役目は子どもの“OS”のバージョンアップ。OSの上に乗っかる英数国理社といったアプリケーションソフトのほうのバージョンアップは学校や予備校の役目です。OSのバージョンが低いと最新ソフトは動かない、という関係にあるわけですが、学校にOSの鍛錬まで期待してはいけない」(石田氏、以下同)

ソフトは親の目につきやすく、その分ついつい口出ししたくなる。しかし、親がすべきはワードやエクセルではなくその土台、ウィンドウズのようなOSの機能を磨くことなのだ。

では、まずOSとは、具体的に子どもの何を指すのだろうか。

「20年度の“大学入試改革元年”以降、子どもに求められる力の土台は思考力、判断力、表現力。これはまさに現在のAO・推薦入試に必要な力です。地頭という言い方もしますが、後天的にも1、2年で間違いなく伸ばせます」

子どものOSに当たるこの3つは、家庭で培われる。日常生活でできていないのに、面接のときだけこれらを出せるわけがない、と石田氏は強調する。

「まず思考力を高めるには、『なぜ?』という言葉を子どもに問いかけ続けることです。人は問われたことに意識や視点を向けます。それによって思考力が高まるわけです。それを日常的に行っていると、子どもが自ら『なぜ?』を探求するようにもなります」

大事なのはWHYとHOW、「なぜなのか」「どうするのか」を自然に日常に組み込むことだという。面接で「なぜ?」と問われても、その思考回路が身についていれば、相手の質問の意図を過不足なく察知し、何を聞かれても的確に答えられるようになるという。

「判断力については、『自分のことは自分で決める、自分でやる』を徹底させること。進路も含めて、親の路線に乗せようとする行為はNG。高校生ともなったら、親は何ごとについてもサポートにとどめるべきです」

表現力については、ちょっとした工夫が必要かもしれない。

「親子で会話をする際、意識的に子どもにしゃべらせるようにすることです。ただ、小学生までならさほど苦労せずとも仕向けることができますが、中高生の多くは親との会話をいといます。そこで、子どもが興味を持っていて話したくなるような領域や得意分野について、『なぜ?』というキーワードを使いながら子どもに聞いてみるといいでしょう。間違っても、勉強や学校の成績を話題にしてはいけません」

前述のフィールドワークも併せて行うことでOSを磨けば、低偏差値でも“逆転”が可能なAO・推薦入試。が、成績が悪い生徒の多くは、その可能性にチャレンジする意欲すら失っている。

「成績ゆえに自己肯定感が落ちている子どもがあまりにも多い。でも希望を持たせてあげると変わります」

その特効薬となるのが、「すごいね」「さすがだね」といった10種類の“魔法の言葉”だ。これを家庭で何気なく使うことで、子どもが劇的に変わった実例は、石田氏が知っているだけでもたくさんあるという。

「『人とすぐに仲良くなれる』『調べるのが好き』『物作りが好き』『勝負事が好き』といったことも立派な長所の1つであることを子どもに気付かせてほしいのです。それこそが、まさにその子の才能です。その才能が大学でやりたいことと繋がれば、その子にとって幸せなはず。当然、それは志望理由書に書くビジョンにも繋がります。長所を認識していれば、面接でも魂のこもった言葉で答えられます」

ご子女によきアドバイスを!

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川原洋孝
城南AO推薦塾塾長
1966年生まれ。横浜国立大学教育学部卒業。2015年より現職。著書に『1回勝負! AO・推薦入試は「面接」「小論文」でキメる』ほか。
 

荒木シゲル
身体表現コンサルタント
英国でパントマイムアーティストとして活動。コミュニケーション研修、舞台演出、ゲーム・映像制作。著書に『しぐさの技術』。
 

石田勝紀
教育デザインラボ代表理事
1968年生まれ。20歳で学習塾を起業。「勉強嫌いの子をなくす」ための母親対象の勉強会「Mama Cafe」を主催。著書多数。
 

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(小澤 啓司 撮影=初沢亜利 写真=iStock.com)

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