"熟年離婚"を切り出す男性が隠す3大理由
プレジデントオンライン / 2019年4月18日 9時15分
■夫から切り出す熟年離婚が目立つようになった
ひと口に「熟年離婚」と言っても、実はひと昔前と比べ、その形態に変化が生じているのをご存じだろうか。10年前までは、「熟年離婚=妻から夫へ切り出すもの」というケースがほとんどだったが、ここ数年で夫から妻に三行半を突き付ける形の熟年離婚が目立つようになってきているのだ。
夫から妻に熟年離婚を切り出す場合、おもな理由は次の3つ。「夫の浮気」「夢の実現化」「妻への不満」――夫から妻へ離婚を切り出すケースの多くが、この3つのうちのいずれかに該当している。
よくある例で考察してみよう。
■「本当は妻ではなく、この女性と一緒になるべきだった」
結婚生活33年目。専業主婦の妻との関係がギクシャクしはじめたのは、50代にさしかかろうとしていた時。人事異動に伴い職域が変わったことで帰宅時間が遅くなり、妻との生活時間帯がズレはじめたことがきっかけだった。
「夜遅く帰宅した時に、物音を立てて起こしてしまうと申し訳ないから」という理由で、夫婦の寝室を別にすることに。帰宅時間を気にせず生活できるようになったおかげで、終電ギリギリまで仕事に集中できるようになった一方、遅くまで酒を飲んで帰っても文句を言われる機会もなくなった。
10歳年下の同僚の女性と深い仲になったのは、そんなタイミングだった。お互いに家庭を持っていたものの、毎晩のように仕事のことや将来のことを話しているうちに、「本当は妻ではなく、この女性と一緒になるべきだったのではないか」という思いが大きくなっていった。それから約10年間は、自分も相手の女性も、離婚の覚悟を決めるための時間だったと思っている。2人の決心がかたまった昨年、定年退職を迎える際に「ひとりになりたいんだ」と妻に離婚を切り出した。
とくに理由も言わず、「ひとりになりたい」「ひとりの時間がほしい」と切り出す夫の背景には、多くの場合「浮気」が存在していると思っていい。本当に「ひとりになりたい」のであれば、夫婦関係を続けながらひとりの時間を持つことはいくらでも可能だからだ。
人生100年時代。定年退職のタイミングで熟年離婚をし、第二の人生を新たなパートナーとスタートさせたいと願う男性は年々、増えている印象を受ける。
■海外で独立する夢を諦めきれない
大手外食チェーンに勤務、「最年少の営業本部長」という肩書きを背負い仕事ひと筋で働き続けてきたものの、就職して以来、「いつかは海外で事業をはじめたい」という長年の夢を持っていた。妻からは、30歳で結婚した当初から「日本で安定した生活を送りたいから、今の会社には定年までいてほしい」と言われていた。
だが、どうしても夢をあきらめきれず、海外で独立する準備を粛々と進めていたのも事実。年齢的にも最後のチャンスではないかと思い、先日、あらためて妻に独立の相談をしたところ、「今さら生活を変えるつもりはない。あなたの夢には付き合えないし、定年後も日本で暮らしたい」と猛反対。子供も成人したことだし、妻とは離婚をしてでも自分の夢を叶えようと思っている。
将来の見通しが暗く「計画性のない無謀な夢」には、パートナーとはいえなかなか賛同しかねるもの。経済的に破綻する危険性が高く、家族の生活がおびやかされることが予想できる「夢」であれば、円満な夫婦関係を保つことができず「婚姻を継続しがたい事由」として法的に離婚が認められる可能性も考えられるだろう。
とはいえ、夫の将来を信じ、支えるのも妻の役割のひとつ。「夢」か「妻」かを天秤にかけるのではなく、夫婦が力を合わせて夫の夢を実現できる方向で解決策を見いだすのがベストと言える。
■「2人きりの生活を想像すると絶望的になった」
「もう耐えられない。別れたい」と、妻に離婚を宣言したのは昨年末のこと。離婚したかった理由は、長年の妻への不満が積もりに積もったから。30年間以上、専業主婦だったにもかかわらず、家事や育児は手抜きし放題。どれだけ注意しても、家のなかはいつも散らかっているし、食事はコンビニかスーパーのお総菜。朝からテレビを見て、ゲームをやっているだけで、女性として見た目を美しく繕おうとする意識もゼロ。自分だけが働いていることに疲れてしまった。
昨年、子どもが成人したこともあり、これから続くであろう2人きりの生活を想像すると絶望的になった。今は、便利な家事支援サービスもあるので、身のまわりのことで困ることも少ないはず。専業主婦にあぐらをかいている妻とは、今年中に別れるつもりだ。
「なぜこんな相手と結婚してしまったのだろう」と妻への不満を抱えている夫は意外と多いもの。家事や育児、生活態度や容姿など、夫婦生活をしてわかった妻の姿に幻滅し、結婚したことを後悔した結果、「もう無理だ……」と別々の道を歩むことを決心する男性も増えている。専業主婦の場合、料理や掃除といった、当たり前にある日々の小さなサービスを提供することが、夫に不満をためさせないコツとも言える。
■「妻に捨てられた夫」と言われても受け流せるか
では、「もう妻とは別れたい」と考える男性が、まずすべきことは何か?
夫婦関係に悩む男性の相談者に対しては、次の3ステップで「離婚か修復か」を考えてもらうようにしている。
□ 掃除や洗濯、炊事などひととおりの家事をこなすことができる
□ 自分の親の介護は責任を持ってできる自信がある
□ 家事や介護などのサービスを依頼できる経済的な余裕がある
妻との離婚を考えるものの「家のことは今まですべて妻にまかせていた」という男性も少なくない。離婚後の生活で、初めて家事などの細々した作業に直面して困惑するケースもある。家事ができないことは、生活力が乏しいということ。暮らしが乱れれば、心もすさみ、やがて離婚したことを後悔することになりかねない。
□ セックスの相手には困らない
□ この先、セックスをしなくても平気だ
□ なんでも話せる女友達がいる
3つのうち、ひとつも該当する項目がないなら今すぐ対策を考えるべき。長い人生では、愛しい人のぬくもりや心から理解し合える人を求めたくなるものだからだ。離婚を選択するからには、「離婚前より幸せになること」を目指したい。
□ 離婚が原因で社会的に問題が生じたり、信用がなくなったりしても耐えられる自信がある
□ 自分の身だしなみには気を遣えるし、食生活や健康面でも乱れない自信がある
□ ひとりでも退屈しない趣味や「生きがい」と呼べるものがある
世間体を気にする男性にとって、「離婚」は体裁が悪いもの。仮に「妻に捨てられた夫」というレッテルを貼られたとしても、気にせず受け流すメンタルの強さも必要になる。さらに、慣れないひとり暮らしで、「見た目はボロボロ、身体はガタガタ、心はスカスカ」という状態になっては元も子もない。
離婚は、自分らしく生きていくための「手段」のひとつであって、「目的」ではない。離婚したことで自分らしく幸せな人生を歩んでいくことができるかどうか。結論を出す前にもう一度考えてみる必要があるだろう。
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夫婦問題研究家
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。
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(夫婦問題研究家 岡野 あつこ 写真=iStock.com)
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