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「手土産」を馬鹿にする人は成長できない

プレジデントオンライン / 2019年5月27日 9時15分

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/hungryworks)

部署や会社を変えても活躍できる人は、どういったスキルを持っているのか。経営コンサルタントの三坂健氏は、「どこでも誰とでも活躍できる人の多くは、ちょっとした手土産や気遣いのスキルを身につけ、スマートに活用している」と分析する――。

※本稿は、HRインスティテュート『全員転職時代のポータブルスキル大全』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■「嬉しくない人がいない」究極のスキル

キャリア選択の自由度が上がり、誰もが転職する可能性がある時代になった。この現代を「全員転職時代」といって差し支えないだろう。この全員転職時代において、部署や会社が変わっても難なく活躍できる人たちの共通点を、人材育成コンサルタントの視点で探ってみた。まず紹介したいのは、小さな気遣い=プチギフトのスキルである。

多くのビジネスパーソンはこのスキルについて、なんとなく気恥ずかしさをおぼえたり、あるいは「そんな子供だましは通用しないよ」といった反応をする。しかし、我々コンサルタントが知る「どこでも誰とでも活躍できる人」の多くは、このスキルを身につけ、スマートに活用している。

■「生卵1パック」の心づかいに歓声

米国の会社で勤務するアメリカ人の友人が、以前、こんなことを話していた。

「日本支社に出張に行ったとき、俺はみんなのヒーローになったんだ。何をしたと思う? クリスピークリームドーナツを2ダース買って、持っていったんだ!」

「なんだ、ドーナツか」と思うかもしれないが、プチギフトの効果を軽視してはいけない。

形だけの手土産を「渡す」だけでは、社交辞令に終わってしまう。しかし、相手に喜んでもらいたいという気持ちがあれば、相手にもそれは伝わる。彼の場合、「ドーナツ」は正解だったのだ。

別の友人は、とある開発途上国に赴任した人に、日本から生卵1パックを持っていったという(飛行機に手荷物で持ち込んで!)。生卵が貴重なその国で、数カ月ぶりの卵かけごはんを食べさせてあげたいという彼の心づかいに、現地の日本人は歓声を上げたという。

思いやりを受けて「嫌だな」と思う人は通常、いない。誰もがされて嬉しいに違いないのだから、このスキルを使わない手はないだろう。喜ばれることを嬉しいと思うこともまた、優れたビジネスパーソンの特徴といえるかもしれない。

■メールの返信にも「プチギフト」はつけられる

プチギフトは人間関係の「点」だけでなく、「面」の形成にも効果的だ。たとえば、あなたがコミュニケーションしている人の秘書や家族の方にプチギフトを贈るのもいい。

自分の身に置き換えて考えてみたらその威力がわかるだろう。あなたがふと「娘が幼稚園に入ってね」などと話したことを相手が覚えていて、お嬢様に、と小さな贈り物を持ってきてくれたら――。素直に嬉しいのではないだろうか。

またプチギフトは必ずしも、モノである必要はない。お礼状やお見舞い状で相手に心づかいを届けることも可能だ。「自分のことを思って用意してくれたのだ」と相手に伝われば形は問わない。

さらに言えば、ハードではなくソフトでもいい。相手からメールでビジネス文書を受け取った際には、「リボン」を付ける意識を持って返信してみよう。

「リボン」とは「フィードバック」のことである。相手のビジネス文書を受け取って自分が感じたことを、メールにそっと添えて返信すると効果的だ。もちろん、相手との関係性には十分に配慮する必要があるが、「うれしかった」「刺激を受けた」などの客観的なフィードバックは、何ものにも代え難い価値がある。

織田信長は贈り物の達人だった。武田信玄は、信長の贈り物が入っていた「蒔絵の箱」を割ってみたところ、漆が表面だけでなく何重にも塗られていたことに驚き、そこから信長の人間としての力量を感じ取ったと言われている。

戦国時代も全員転職時代も、ビジネスに価値と喜びを追加する工夫のできる人は格が上がるものだ。

■「表情が暗い人」は成長・活躍しにくい

コンサルティングの一環で企業の役員と話をしていると、「みんな、私にも意見をすればいいのに、しないんだよね」とか、「わからないことや思うことがあれば、伝えてくれればいいのに」といったフレーズに出会うことがある。

これは役員に限らず、部下のいる部長や課長、後輩のいる先輩にもあてはまる。大抵の場合、この症状の原因は「その人に質問しづらい」「意見を言いづらい」と周囲が感じているからにほかならない。つまり自分に問題があるわけだ。

「不用意なことを言えば否定をされるのではないか」「『そんなことも知らないのか』と言われるのではないか」という心理が蔓延していると、なかなか周囲は意見を言えなくなる。そればかりか、普段の表情がしかめっ面だったり、眉間にしわが寄っているだけで周囲の人は意見を言うのに躊躇してしまう。

自分の表情について意識している人も、プチギフトを贈っている人と同様、意外に少ない。職場によってはほとんどの人が気にしていないかもしれない。しかし表情は、自分と人が対峙する際、当然ながらもっとも見られるものだ。自分の感情が現れる場所だからこそ、相手への気遣いをすべきところといえる。

一度、自分の表情や態度に着目してみてほしい。実は、多くの人は自分自身が「声をかけにくい態度や表情」をしていることに気づいていない。

この、普段の何気ない表情のことを「デフォルトフェイス」という。鏡に映っている表情は「デフォルトフェイス」ではない。無意識、無自覚にしている表情こそ、いつもの表情であり、それが周囲に影響を与えている。よく言われることだが、会社からの帰りの電車の窓に映った「ふと目にした自分の姿」こそが、私たちの本当の姿だ。

■フィードバックの重要性

そして図表1のように、何気ない表情一つで成長や改善の機会が左右されてしまう。

『全員転職時代のポータブルスキル大全』より

解決策は単純だ。常に見られている意識を持って、表情を前向きに、快活に、相手に話しかけてもらいやすい状態を意識してみることだ。

身近な人にいつもの表情をフィードバックしてもらうのも参考になる。「今、暗い顔してたよ」や「なんか今日明るいね」などを教えてもらえると、デフォルトフェイスを認識しやすくなる。

思考は表情に現れる。私たちも、面接において「表情」を重視している。それは年間何万人と研修やコンサルティングで多くの人とお会いする中で、「いい企業やいいリーダーにはいい表情が集まる」と確信しているからだ。

デフォルトフェイスを整えることで「周囲が声をかけやすい状態」にこだわれば、職場の雰囲気の改善、ひいてはあなた自身の成長を促してくれるのだ。

■メールを「いったん放置」する残念な人

表情と並んで、相手への気遣いが最も出やすいもう一つの場所が「メール」だ。依頼メールになかなか返事が来なかったり、締め切り直前の案件についてのメールで曖昧な内容が返ってきたりと、あなたも歯がゆい思いをした経験があるのではないだろうか。

メールにおける相手への気遣いの最大のポイントは「誰の仕事も後回しにしない」ことである。

忙しいときに誰かから仕事の依頼がメールで届いたとしよう。このとき、人の反応は2つのタイプに分かれる。

1つ目のタイプは、メールを開かずに一旦、無視して、後で確認するタイプ。2つ目のタイプは、とりあえずメールを開いて読んで、その場で対応方法を即座に考えるタイプ。

どちらにしてもメールを読んで対応を考える時間は5分程度のものだが、あなたはどちらのタイプだろうか。

■仕事を溜めない「5分間味見術」

2つ目のタイプの人がやっていることを、ここでは「味見する」と表現する。忙しいけれど、常にどの仕事も後回しにしない人は、この味見をすぐにやっている。

1つ目のタイプの人も、今、集中している仕事に時間を割きたいという気持ちはわかる。しかし、後で確認することにはリスクがつきまとう。1つは忘れるリスク。もう1つは確認する際に、相手がつかまらない、あるいは断ろうと思っても時間がたっていることで状況が難しくなっているリスク。

一方、2つ目のタイプであれば、即座に確認して対応すれば忘れることはない。自分が担当すべきではないと判断すれば、すぐに断りを入れたり、誰かにお願いしたりすることができ、自分の陣地に仕事を溜めないで済む。

HRインスティテュート『全員転職時代のポータブルスキル大全』(KADOKAWA)

■些細なスキルも使いこなせば差になる

同じ5分でも、先に費やすか、後に費やすかで生産性は大きく変わる。5分の味見を通じて、少なくとも下記のことを把握することができる。

《5分の味見で把握できること》

1. 自分でやるべき仕事か、他の人にお願いしたほうがいい仕事か
2. すぐやるべき仕事か、あとで平気な仕事か
3. 時間がかかる仕事か、すぐ終わる仕事か
4. 創造性が求められる仕事か、作業ですむ仕事か
5. 周囲を足止めする仕事か、自分への影響のみの仕事か

仕事を溜めないためには、この5分間味見の習慣をつけよう。加えて、「15分以内にできて、かつ、あなたでしかできない仕事」であれば、「その場ですぐにやってしまう」習慣も手に入れたい。これらがクセづけされれば、溜まりがちだった仕事は一気に減らすことができるだろう。

『全員転職時代のポータブルスキル大全』より

本稿で紹介した3つのスキルはどれも些細なものだ。これらの些細なスキルのうち、1つモノにできている人は感覚的に6割くらいだろうか。3つとも使いこなしている人となると、一気に2割を切る感覚だ。

全員転職時代のライバルは、いってしまえば全ビジネスパーソンといえる。他の人よりあなたと仕事がしたいと思われる人になり、どこでも誰とでも成果を出せるビジネスパーソンになるためには、些細だが威力のあるスキルを積み上げることが非常に重要である。

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三坂健(みさか・けん)
HRインスティテュート シニアコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業。安田火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン日本興亜株式会社)にて法人営業等に携わる。退社後、HRインスティテュートに参画。現在は常務取締役兼シニアコンサルタント。経営コンサルティングを中心に、教育コンテンツの開発、人事制度設計、新規事業開発、人材育成トレーニングなどを手掛ける。

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(HRインスティテュート シニアコンサルタント 三坂 健 写真=iStock.com)

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