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タクシー広告が育毛から動画になったワケ

プレジデントオンライン / 2019年7月3日 15時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

タクシーの後部座席の広告が変わった。これまでは育毛やダイエットのチラシがあるだけだったが、タブレット端末が設置され、企業経営者向けのCMが流れるようになった。ONE MEDIAの明石ガクト社長は「僕は動画の専門家だが、タクシー内に動画が流れるとは思わなかった。テクノロジーには社会の構造を変える力がある」という――。

■5G回線で映像体験が一変する

いま、みなさんが利用しているスマートフォンは4G回線でインターネットとつながっています。しかし今、とんでもない革命が起きようとしています。5G回線の運用スタートです。

5Gについて、「名前はちらほら見るけど、正直、何がすごいのかわからない」という方も多いかと思います。そこで5Gになると何が変わるのか、まずは動画を視聴する場合を例に考えてみましょう。

これまでは5分ほどの動画であっても、環境次第ではローディングマークがくるくると回り、動画がたびたび中断することが珍しくありませんでした。ところが5G回線になると、2時間のハイビジョン映画が約1.5秒でダウンロードできるようになります。

テレビ電話会議のやり取りにおいても同様で、画像と音声にズレが生じたり、画面がフリーズしたりといったストレスは、ほとんどなくなることでしょう。

また、サッカーや野球などのスポーツを5Gで見る時、自分の見たい角度のカメラを自由に選ぶことができるなど、スポーツ観戦がインタラクティブになる可能性を秘めていたりもします。つまり5G回線に移行することで、動画コンテンツ・ビジネスがひとつ上のレイヤーに進化していくことが考えられます。

■スマホで4K映像を楽しむ時代に

これまで映像を伝送する手段として最も優れていたのは、電波による放送でした。電波は多くの人に遅延なく映像を届けるのに、非常に効率的だったからです。

降り注ぐ電波をそれぞれの家庭がアンテナで受信する方式と、サーバーからインターネットを経由し、個別に映像ファイルを届ける方式では、コスト的なメリットで電波の方が優れていました。

ところが、サーバーの費用は年々安くなり、さらに5Gのように高速の通信回線が登場すると、両方式の配信コストはほとんど変わらなくなってきました。その象徴がNetflixやYouTube、AbemaTVといったサービスの数々です。

今は家庭でNetflixを見る人が多いでしょうが、5Gになればスマホの画面でも、家庭のTVと同じ、もしくはそれ以上の高品質で見られるようになるでしょう。おそらく2020年くらいにはスマホも4Kの画質に対応し、高画質で映画を見ながら優雅に電車通勤をする、なんて日はそう遠くないかもしれません。

こうなると、世の中のコンテンツは動画を使うものがあたり前になってくるため、これまで動画に縁がないと思っていた企業も、動画での発信と向き合わざるを得なくなっていきます。

■急成長したタクシー車内の動画広告

スマホで動画に触れることがあたり前になると、テキストのみのコンテンツはイマイチ目立たなくなってしまいます。それはスマホの中だけに限ったことではありません。街には今、急激にデジタルスクリーンが増えています。

たとえばタクシー。乗り込み座るやいないや目に飛び込んでくるのは後部座席のモニターですよね。従来のタクシーの後部座席には、育毛やダイエット、体臭ケアのようなコンプレックス解消のための商材チラシが置かれているのがふつうでしたが、今やタブレット端末が設置されてタレントが出演するCMが流れています。商材は企業経営者向けのITソリューションが多いようです。こんな状況を想像していた人はいないでしょう。もちろん僕もその1人です。

いち早く参入した「Tokyo Prime」(株式会社IRIS)を知った時、私は「本当に人々はタクシーの中で動画を見るのだろうか?」という懐疑的な気持ちでしたが、それは完全な間違いでした。

「Tokyo Prime」は多くの企業からメディア価値を認められ、広告出向が止まらないほど急成長しています。その後、DeNAやベクトルなどの大手企業が参入。こうした変化がたった2~3年のうちに起きているのは驚くべきことです。

タクシーはそれまで動画を流す価値のない場所であったのに、インターネット回線とタブレットというテクノロジーによって、それが大きく変貌しました。このようにテクノロジーが社会の構造を変え、そこに新しいメディアが生まれることで、人々の生活は変化していきます。

■メディア化するインフルエンサーたち

誰しも10年前は、定期的に読んでいた新聞や雑誌、TV番組の数が、今より多かったのではないでしょうか。

現在、多くの人は雑誌や番組単位でコンテンツを見るのではなく、興味のある人やモノを直接フォローするようになっています。つまり、@や#をフォローする時代になっているのです。

ゴルフの情報が知りたければ、YouTubeで関連映像を見てフォームを真似る。グッズを探したければ雑誌を買い漁っていたあの頃と違い、選手やショップのアカウントをフォローして情報を得る。このように、世の中はSNSが最も重要なメディアに変化しつつあります。

SNSは個人単位で成り立っています。私自身、去年一年間でTwitterのフォロワー数が0人から2万人に増えました。SNS自体が個人をエンパワーメントする思想でできているからです。

では、SNSで商品やサービスを広めたい企業はどうすればいいのか。かつてはTVにCMを大量に流せば多くの人にリーチできましたが、TVを見ない若者世代が増えた今、SNSでのマーケティングは必要不可欠です。

そんなSNS上で若者達が注目しているのは、メディア媒体ではなく、個人=インフルエンサーです。つまり、メディア化したインフルエンサーの発信力をうまく活用しながらマーケティングしていくことが重要な時代になりました。

そして、彼らの発信を最大限に活用するために、もう1つ大切なことがあります。そう、動画です。

■SNSのコンテクストをデザインする

日経新聞が新興市場に上場する中堅企業の成長力をランキングにした「伸びる会社MIDDLE200」では、全184社のうち、1位を獲得したのはYouTuberプロダクションの「UUUM」でした。つまり、新しく上場した会社の中で今最も成長が著しいのは、動画のインフルエンサーを多く抱える会社なのです。

明石 ガクト『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』(NewsPicks Book/幻冬舎)

では、YouTuberにお願いすればいいのかと考える人も少なくないでしょう。それはそれで間違いではありませんが、SNSにはそれぞれコンテクストが存在しています。Twitter、YouTube、Instagramにはそれぞれ流儀があるので、その時々で自分たちが売り出したい商材がどの場所に一番適しているのかを考えなくてはなりません。

また、「このインフルエンサーを起用したい」と考えたとしても、その人物が動画に軸を置いていない可能性もあります。

ONE MEDIAでは今、そうしたミスマッチを避け、個人のインフルエンサーの魅力を最大化して動画を作るプロジェクトを手がけています。例えば10代のカリスマ、kemioさんを起用して制作したダイキン工業株式会社の動画は、公開から3日で100万回再生を達成し、大変なインパクトをもたらしています。

ブランドが成し遂げたいこととインフルエンサーの間に立ち、それぞれの世界観と魅力を良い形でつなぎ合わせる。今まさに、ビジネスの新しい形が生まれはじめていると言えます。こうした潮流が、5G回線への移行により、いっそう活発になるのは間違いないのです。

(ONE MEDIA 代表取締役 明石 ガクト 写真=iStock.com)

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