役所は教えてくれない「要介護認定」の裏ワザ
プレジデントオンライン / 2019年9月3日 17時15分
■介護認定で正直者が損をする!?
介護はある日突然始まり、生活は一変する。介護に伴う時間、体力、金銭面の負担は避けられないが、その負担を軽減する存在が『介護保険制度』だ。要介護認定を受けると、年金収入などが(単身世帯で)年280万円未満の場合、原則1割の自己負担であらゆる介護サービスを受けることができる。
介護サービスが必要となると、地域包括支援センターなどで要介護認定の申請を行い、介護認定調査員が自宅や病院を訪れ、介護を受ける本人の調査を行うのが本来の流れだが、介護認定を受けるために大切なことは申請前から始まっていると語るのが、All Aboutで介護ガイドをつとめる介護アドバイザーの横井孝治氏だ。
「要介護認定の申請にあたり、必要となるのが、主治医の『意見書』ですが、医者は当然ながら患者のことを第1に考えます。そのため、意見書を書いてもらうための伝え方が重要です。適切なサービスが受けられないと親が自立した生活を送っていけないから助けてほしい、というスタンスで医者に接するといいでしょう」
あとは窓口で申請を行えば、1~2週間以内に調査員の訪問による聞き取り調査が行われる。
「調査には必ず立ち会ってください。お年寄りは『他人に迷惑をかけてはいけない』という気持ちが強く、普段は寝たきりに近いような人がいきなり立ち上がり、『この人は元気なんだ』と判断され、適正な認定がおりなかった、というケースも少なくない」(横井氏)
■訪問調査の時間は1時間程度
要介護度の認定は、麻痺の有無、寝返りができるかといった身体機能、日常生活において介助が必要かなど、6項目50問以上の質問で行われる。訪問調査の時間は1時間程度のことが多く、かなりタイトな調査だと言えるだろう。
横井氏によれば「現在は調査員が目の前で起きていることを素直に記録する傾向にあるため、何について質問されるのかを事前に調べて、自分なりに回答を整理することが必要」だという。
困っていることやできないこと、そして親が何を求めているのかをまとめておき、調査の際に効率よく伝えるようにしたい。
「主治医の意見書をしっかりと書いてもらい、普段困っていることを書いたメモなどを用意すると、スムーズに意見を伝えられます。要介護認定を受けるうえで、訪問調査への対応は最重要ポイント。しっかり準備をしてください。ほかにも訪問調査で準備するべきことや知っておくと役に立つ裏ワザを、まとめてあります」(同)
また、認知症の疑いがあっても親が病院に行きたがらないケースも。その場合、役に立つのがWebサイト「おやろぐ」の「認知症かんたんチェック」だ。これは精神科で受ける認知症の初期診断である「計算力」や「短期記憶」の測定をゲーム感覚で行える。
介護はいつ始まるかわからないものだからこそ、早め早めに知識武装をしておきたい。
POINT① 訪問時間は夕方以降を希望する
訪問調査を依頼する時間帯が重要だ。高齢者は早起きする人が多く、体力に余裕のある午前中は元気に振る舞ってしまうことが多い。そのため疲労がたまってきた午後以降、できれば夕方に調査を依頼したほうが介護状況の実態を効率よく調査員に伝えることができる。
POINT② 主治医による意見書の内容を充実させる
要介護認定を下すのは、2次判定を行う「介護認定審査会」だが、1次判定でのコンピューターによる暫定の判定通りに決定するケースが多い。しかし、主治医による意見書がしっかり書かれていれば、本来に近い要介護度が得やすくなると言える。
POINT③ 調査員に日記やメモを渡す
調査員に普段の親の行動を親の前で説明すると、本人が嫌がる内容も含まれ、傷つける可能性がある。メモや日記を渡すことで親に気づかれることなく問題行動を説明することができる。その際は、説明用の本命と親用のダミーを用意することも一手だ。
POINT④ ありのままをスマホなどで撮影しておく
認知症患者には、昼間は穏やかでも、夜になると暴れたり大声を出す患者が存在する。しかし、夜間に訪問調査は行われないため問題行動が調査員に伝わりにくい。そのため問題行動の様子や、暴れて怪我をした箇所などを撮影して調査員に見せよう。
POINT⑤ 「区分変更申請」は意義申し立てのチャンス
要介護度は定期的に見直されるようになっており、1~3年に1回、再審査を行う。しかし容体が急変した場合などには、更新時期を待たずに「区分変更申請」を行うことが可能。この制度を活用すれば、認定結果への異議申し立てを行うことができる。
POINT⑥ 「暫定ケアプラン」でサービス受給を前倒しできる
要介護認定には、1カ月ほど時間がかかることが多い。しかし緊急時には認定結果が出る前に暫定の要介護度を出して介護サービスを前倒しで利用できる。認定された正式な要介護度が、暫定の要介護度よりも低いと、自己負担の費用が発生する恐れがあるので注意。
POINT⑦ 表現や伝え方を「親のため」で統一する
主治医は、基本的に患者ファースト。「介護家族が仕事を辞めて介護しても当然」ぐらいのアドバイスをすることも少なくない。それを逆手に取り、「介護を放棄するため」ではなく、「親を守り続けるため」に協力してほしいと伝えると医師の助力を得やすい。
POINT⑧ 訪問調査前に掃除はしない!
訪問調査ではありのままを伝えないと実際とは異なる判定結果となり、本来なら受けられる介護サービスが受けられなくなってしまう。そのため、訪問調査に向けて特別に家の掃除をする必要はない。親が「できない」ことは「できない」と伝えよう。
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コミュニケーター代表取締役
介護情報のスペシャリストとして、介護に関する記事の執筆や介護情報サイト「親ケア.com」で情報発信を行うほか、年に200本以上の講演を精力的に行っている。
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(網田 和志)
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