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寝っ転がってスマホで作品を書いた「芥川賞」

プレジデントオンライン / 2019年11月10日 9時15分

新機種の発売や料金プランの見直しなど、スマホ関連のニュースがにぎやかだ。(PIXTA=写真)

■寝っ転がってスマホで書いた芥川賞

人間の脳にとって「道具」は大切な存在であるが、それを十分に使いこなすことは案外難しい。

最近の仕事や生活において中心的な役割を果たしているのはなんといってもスマートフォン(「スマホ」)であろう。

目覚めから眠るときまで、片時もスマホを手放さないという人は多い。今や、スマホは私たちの生活の「ど真ん中」にある。

ところが、そのスマホを私たちが使いこなしているかというと、そうでもない。個人差もあるだろうが、体感的にはそのポテンシャルの1%も使っていないというのが現状ではないだろうか。

電車の中で、さまざまな人がスマホを使っているのが位置の関係で目に入ってしまうことがある。画面の中を色とりどりの丸が落ちていったり、ニュースサイトらしいテクストが見えたり、メッセンジャーアプリが立ち上がっていたりする。

スマホを使ってゲームをしたり、ニュースを見たり、メッセージをやりとりするのは普通に行われていることだろうが、スマホの可能性はそれだけではない。

インターネットに接続しているということは、ありとあらゆる情報にアクセスできるということである。

論文を検索して、最新の学術情報に接することもできるし、海外の大学が公開している授業を受講することもできる。お気に入りの音楽はもちろん、落語や、本の朗読を聴くこともできる。

■生産性を上げるツール

案外見落とされがちなのは、生産性を上げるツールとしてのスマホの可能性である。

メッセージやメールなどの短いテクストならば、スマホで打つのはごく当たり前である。最近では、大学生などはスマホでレポートを書いて提出してくるという話も聞く。

長い文章も、スマホで書くことができる。しばらく前に、『しんせかい』で芥川賞を受けた山下澄人さんが、スマホで作品を書いたと発言して話題になった。電車の中でも、寝転がっていても書けるので、便利だという。

山下さんのケースが興味深いのは、芥川賞という「本格派」とスマホが結びついたことである。スマホで芥川賞なんて、と驚く人は、スマホという「道具」についての固定観念にとらわれているのかもしれない。小説はもちろん、音楽や映画だって、スマホでつくることができる。

残念なことに、スマホには、いまだに、暇つぶしの道具、だらだら使うものといった「スティグマ」(ネガティヴなイメージ)が付きまとっている。子どもにはスマホをできるだけ使わせないとか、大人でもスマホを使っていると遊んだりさぼったりしているように見えるという風潮がある。

今や、スマホという道具は、それを使いこなして仕事もばりばりやり、大いに学び、世界とつながることのできる「入り口」である。スマホの可能性を十分に活かすためには、自分自身がスマホをめぐるスティグマから解放されて、自由にならなくてはならない。

スマホは、性能的には一昔前のスーパーコンピュータと変わらない。以前だったら大型計算機センターにしかなかった巨大な計算パワーが、手の中にあるのだ。

携帯の電波が「5G」(第5世代移動通信システム)になることで、スマホの性能と可能性はますます増大する。スマホでできること、すべきことのイメージを、今から更新しておく必要がありそうだ。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。近著に『いつもパフォーマンスが高い人の 脳を自在に操る習慣』(日本実業出版社)。

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(脳科学者 茂木 健一郎 写真=PIXTA)

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