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宝くじ1億円分買ったら「当せん金」は2964万円

プレジデントオンライン / 2019年12月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/coffeekai

■大金を当てるのは、それこそ夢のまた夢

私は防衛省海上自衛隊で数学を教えている。「海上自衛隊で数学を勉強?」と意外な気がするかもしれないが、私の所属する小月教育航空隊は航空学生と呼ばれるパイロット候補生の養成機関で、パイロットには航空力学など物理的な素養が必要になるため数学は必須なのだ。海上自衛隊では主に哨戒機「P-3C」と哨戒ヘリコプター「SH-60K」のパイロットを育成している。

教えるのは高校の数学II・IIIと大学数学の初歩レベルだが、高卒者が約8割(18~20歳が中心)を占めるうえ、約半数が文系出身のため、数学を苦手にしている航空学生も多い。そこで数学に興味を持ってもらえるよう、身近な話題を織り交ぜるなどいろいろな工夫をしている。

今回の宝くじの話もその1つ。夢を求めて宝くじを買う人は多いが、大金を当てるのはそれこそ夢のまた夢だ。

宝くじは数学的に計算すると、「買えば買うほど当せん金は購入額のほぼ半分に収束」していくことがわかっている。どういうことか。たとえば宝くじを1億円分購入したとする。もちろん実際に買うのは難しいが、「web宝くじシミュレーター」のようなツールがあり、パソコンで実験できる。

■宝くじを1億円分買ったら、当せん金はいくらか?

ここでは2017年の「ハロウィンジャンボ宝くじ」を例に見てみる。同宝くじは1等賞金が3億円、1等の前後賞が各1億円で、1等・前後賞合わせて5億円と超豪華賞金となっている。配当率は、販売総額300億円に対し、配当総額143億9900万円なので、約48%だ。この配当率は、宝くじの期待値(平均値)を求めることでわかる。

販売総額が300億円(1枚300円×1億枚)で、当せん総額は143億9900万円なので、「14,399,000,000/100,000,000=143.99円」が宝くじ1枚の期待値となる。つまり、宝くじ1枚の価格300円に対して、143.99円だけ購入者に配当されるわけだから、配当率は「143.99/300=0.479966=47.9966%(約48%)」と計算できる。

さて、シミュレーターで1億円分買う場合を調べたところ、結果は表のようになった。4等(3000円)3310本、5等(300円)3万3334本、ハロウィン賞(1万円)961本で、合計2964万200円。1億円をつぎ込んで、当せん金は3000万円にもならなかった。回収率は30%以下で、約48%の配当率に比べてかなり低い。本来であれば1億円買ったら4800万円当たるはずではないか。

このように回収率が低い理由は、販売総額300億円に対して1億円という額は小さすぎるからだと考えられる。そこで購入額を30億円に増やしたところ、当せん金は13億2756万4300円(回収率約44%)、購入額90億円だと当せん金は44億420万1000円(同約49%)となり、確かに48%に近づいた。また、前述したように宝くじは「買えば買うほど当せん金は購入額のほぼ半分に収束」していくこともわかる。この事実は数学では「大数の法則」という。

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佐々木 淳 海上自衛隊数学教官
1980年、宮城県生まれ。東京理科大学理学部第一部数学科卒業後、東北大学大学院理学研究科数学専攻修了。代々木ゼミナール講師を経て現職。著書に『身近なアレを数学で説明してみる』がある。

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(海上自衛隊数学教官 佐々木 淳 構成=田之上 信)

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