同期の出世に理性を失った"アホ"につける薬
プレジデントオンライン / 2019年12月7日 11時15分
■怒りは「自己に対する過大評価」から生まれる
同期で最初に昇進したり、大役に抜擢されたりすると、それまで仲のよかった同僚から嫉妬されるというのはままあることです。会議での発言と同様、嫉妬する側にはやはり「喪失不安」があります。本人は「自分が出世してしかるべきだ」と思い込んでいるため、「自分が手にして当然なはずの幸福をその同期に奪われた」と考えるのです。
嫉妬には怒りも加わります。この怒りは「自己に対する過大評価」から生まれます。実際にはたいした能力があるわけでもないのに、自分はスゴイと勘違いし、自分がそのポジションに就いて当然だと信じ込んでいる。このように自分の能力を過大評価している人は、特に嫉妬心が強いので警戒が必要です。
自分を過大評価する人は往々にして自己愛が強いようです。それには家庭環境も影響していて、親に溺愛されて育つと自己愛が過度にふくらみます。
その結果、自分はこんなにデキるのに、世の中に評価されないのはおかしいと考える。そして、承認欲求が満たされないせいで生じる欲求不満による怒りを嫉妬の対象にぶつけるのです。
この怒りは、精神分析で「置き換え」と呼ぶ防衛メカニズムからも生じます。本来怒りの矛先を向けるべき対象は、自分を評価してくれない上司や人事のはず。ところが、上司や人事に怒りをぶつけるのは怖いので、矛先を変え、先に出世した同期に怒りをぶつけて鬱憤晴らしをする。
このように自分を過大評価する人に嫉妬されて、苦しむ人が少なくありません。なかには自分を責める人もいます。
■「幸福こそ最大の復讐」と考えたほうがいい
しかし、嫉妬されるのは自分のせいではないかと考えるのは間違いです。それでは相手の思うつぼでしょう。悪質な言動をよりエスカレートさせてしまいかねません。イジメと同じで、悪いのは嫉妬する側なのだということをしっかりと認識してください。
とはいえ、相手に立ち向かっても効果は期待できず、余計に相手の怒りを買い、実害が大きくなる可能性があります。そこで自分の身を守るために大事なのが「スルー力」です。
相手をうまくかわすこと。まずは嫉妬されないように気をつけましょう。同期で最初に課長や部長になったことは誇らしいかもしれませんが、周りから祝福されても、「運がよかっただけ」「チームのメンバーに支えられたおかげ」「(同期の)君がいてくれたからだよ、ありがとう」などと言ってスルーする。本音では自分の力、努力の結果だと思っていても、決して口にしてはいけません。
心の持ちようも大切で、3つのことをおすすめします。第1は、「幸福こそ最大の復讐」ということ。理不尽な相手からできるだけ離れ、自分が幸せになるための努力を積み重ねましょう。2番目は、「アホにつける薬はない」ということ。嫉妬で理性を失い、「現実原則」で行動できないような人はアホだと思ってあきらめる。3番目は、そんなアホを相手にするのは「時間のムダ」ということ。その時間と労力を自分の幸福の実現のために使いましょう。
【対策】「君がいてくれたから」と言ってスルー
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精神科医
広島県生まれ。大阪大学医学部卒業。パリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。社会の構造的な問題を精神分析的視点から分析。『怖い凡人』『嫉妬をとめられない人』など著書多数。
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(精神科医 片田 珠美 構成=田之上 信)
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