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80代伯母が大激怒した40代甥の「お節介」の中身

プレジデントオンライン / 2020年1月29日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SilviaJansen

身寄りのない親族に介護を拒否されたらどうすべきか。フリーライターの石渡嶺司氏は「甥としてできることをやろうと,東京から札幌に住む伯母2人のお世話を試みました。しかし、私の提案に伯母が感情を爆発させてしまったんです」という――。(第2回/全3回)

■「老人ひきこもり」とでもいうべき状態

札幌市郊外にある母親の実家に住むR伯母(87)、E伯母(82)。ともに後期高齢者で、かつ独身で近くに親族はおらず、他に頼れる人がいません。さらに最近では認知症の症状が進行しています。そこで私は出張という名目で東京から札幌に飛び、ホテル代わりに実家の部屋を使わせてもらっていました。

もちろん、札幌で学生や企業、大学などの取材を少しはします(本業なので)。しかし、それは名目で、実際には、実家の買い物なり、細かい手続きなり、雪かきなど力仕事なりを手伝っていました。それでも東京在住の私が行けるのは月に1回か2回が限度。甥である私のやれることも限度がありました。

そしてR伯母・E伯母ともに入退院を繰り返し、病弱です。しかもE伯母は認知症が緩やかに進行していました。それでいて、近所付き合いはそれほどありません。何かあったときにすぐ駆けつける親族や友人・知人が近隣にいるわけでもありません。

デイサービスは職員の対応が悪かった、という理由で行かなくなり、他のデイサービスも利用しようとはしません。つまり、老人ひきこもりとでもいうべき状態です。病弱な後期高齢者が「老老介護」をしなければならず、どう考えても今までと同じ生活をおくることは限界が来ていました。

■老人ホームに入居するべきか否か

では、実家を売却して老人ホームに入るのはどうでしょうか。これはケアマネージャーさんも勧められており、私もそれしかない、と考えていました。不幸中の幸いで、実家のある場所は、札幌市内でも交通の便が良く、しかも、都市再開発が進んでいる地域です。建物の価値はないものの、土地自体は値上がりしており、売却価格も高くなりそうでした。

さらに、土地の権利を持つ叔父(伯母からすれば兄弟)は3人とも売却に反対しているわけではありません。上の叔父に聞いたところ、「売却するなら、それを兄弟姉妹で等分するのではなく、R伯母・E伯母の老人ホームの費用に充ててもらっていい」とまで言っています。

実家が売れない、売れても相続でもめる、というのは良くある話ですが、この点では問題ありません。

あとは、R伯母・E伯母が決断してくれればいいのですが、実家売却・老人ホーム入りは頑なに嫌がっています。まずは老人ホームの費用の問題。実家を売却してもそれほど価値はなく、2人が老人ホームに入れるほどではない、とE伯母は主張します。入れたとしても、お金が続きそうにない、と。

■老人ホームへの入居を拒絶する2人の伯母

実際に、土地売却の見積もりを取ったかどうかは不明です。数年前に見積もりを取っていたかもしれませんが、少なくとも、2019年には見積もりを取っていません。実家は都市再開発が急に進んでいる地域で2014年と比較した場合、20%近く上昇しています。

新たに見積もりを取ればまた違うはずなのですが、私が不動産業者を当たろうとしたところ、「余計なことはするな」と止められました。

次に、これが一番大きなところなのですが、R伯母・E伯母とも「狭い部屋に入りたくない」「知らない人と新たに人間関係を作っていくのも嫌」とのこと。確かに、一軒家である実家から老人ホームに移れば、個室。施設にもよるでしょうが、狭く感じるのは当然です。「老人ホームの職員が本当に面倒を見てくれるか、疑問。いろいろな事件もあるし」とも話していました。

確かに、介護施設職員による虐待事件はよく報道されます。虐待まではいかなくても、利用者は70代~90代。職員は20代~40代が中心。年齢差がある以上、さまざまなトラブルが想定できます。「もう2人でこの家でやれるところまではやっていく。で、ダメになったときにまた考える」。R伯母・E伯母とも、老人ホームについてはそう話して、拒絶しています。

■「甥としてできることをやろう」

老人ホームに移れば部屋が狭くなるのは当然です。不便もあるでしょう。が、掃除など生活上の負担が大きく減るメリットもあります。その点、現在の実家だと、2階建てで、リビングを含め6部屋あります。それだけ掃除や設備メンテナンスの負担がかかります。

体力がまだあった70代までであれば、2人だけで実家を維持することも十分可能でした。しかし、現在はR伯母・E伯母とも入退院を繰り返すほど病弱になりました。E伯母は認知症が進行中であり、老老介護どころか、超老老介護の状態です。

しかも、近隣に手助けしてくれる友人・知人や親族がほとんどいない、デイサービスも行きたがらない、老人ひきこもりの状態。それでも、2人は「どうしても実家で暮らしたい、老人ホームは嫌」と言い張ります。それならば、甥としてできることはやろう、と私は実家の維持に協力するようにしました。

■床暖房やヒーター付き便座、エアコンも設置

2017年冬に壊れた床暖房を放置しようとしていたので、「いや、北海道の冬に床暖房がないなんて無理でしょ」と諫めて、近隣の業者を調べ、HS工事(仮名)に修理を依頼しました。このときの担当者は感じが良く、修理もちゃんとやってくれました。さらに、この業者にトイレの便座をヒーター付きに変えるよう依頼。2階部分のトイレは私がその費用を出しました。

2019年にはエアコンを設置。北海道外の方は意外と思うかもしれませんが、札幌をはじめ北海道ではエアコンがそれほど普及していなかったのです。夏日は数日程度、冬はエアコンの暖房では不十分なので(特に一軒家は無理)、床暖房や石油ストーブが基本です。ただ、ここ数年、札幌も夏は暑くなり、エアコン設置の一軒家が急増しています。実家も未設置だったので、その手配もしました。

■水道管が破裂、そして……

実家は30年前に建て替え、それ以降、改修などはしていません。さまざまな設備が古びてきていました。そんな中、2019年7月に水道管が破裂してしまいます。ちょうど、私が実家に戻っている時期であり、HS工事に依頼。翌日に補修してもらい、その部分は直りましたが、その日、すぐ別の場所が破裂。幸い、担当者が来てくれて、こちらも直しました。

「直した」と言ってもあくまでも一時的なもの。水道管自体が古くなり、新しいものに付け替えないといつまた破裂事故が起きないとも限りません。HS工事の担当者も「できれば、新しい水道管に替えることをお勧めします」と話していました。

水道管の破裂事故が起きたのは1階でしたが、2階部分もよくありませんでした。2階の洗面台の水道のうち、お湯が出ない状態が数年、続いていたのです。そこでHS工事の担当者を2階に上げて、ちょっと見てもらうと「これも直したほうがいいですね」。

水道工事の素人であっても、1階・2階、別々に工事をするよりはまとめて工事をしたほうが手間もお金も省けることは分かります。そこで、私は1階・2階合わせての見積もりを出してもらおうとすると、なぜかR伯母が感情を爆発させていたのです。

■なぜか伯母が大激怒

R伯母はこう言いました。「うちはそんなにお金ないですから。1階だけでいいです! それも分割払いでないと無理。あんた、今度から1階で寝て!」。

いやいや、ホテル代わりにしている自分が言うのもなんだけど、当然ながら夜中まで仕事をすることもあるわけで。2階も直したほうがこちらとしてもありがたいし。それに対してR伯母は「じゃあ、もうホテルに泊まりなさい! うちじゃなくて」。

そう、このR伯母、病弱であってもなくても性格がきついのです。ちょっとしたことで感情を爆発させてしまうのは昔からで、後期高齢者になって収まったわけではありません。「1階を工事するならついでに2階も工事をしたほうが結果的には安上がりだよ、それに2階部分はこちらが負担するから」という説明をしても、まあ、聞いてくれません。

この堂々巡りをHS工事の担当者に聞かせても無意味なので、ひとまず帰っていただきました。

■伯母に内緒で13万円を自腹で支払う

HS工事の担当者が帰っても、まだ、「2階の工事は不要、1階だって分割払いでないと払えない」とR伯母は言い張っています。しかし、2階を使うのは私だけでなく、R伯母・E伯母とも同様のはず。二人とも1階で寝ることもあれば、2階で寝ることもありました。

仮に、2階の水道工事をちゃんとしないまま、2階の部屋で寝起きをするとどうでしょうか。夜、トイレで起きたとき、2階のトイレが使えず、1階まで降りることになります。階段の上り下りで事故を起こさないとも限りません。だったら、2階を工事するほうが、誰にとっても一番のはず。一方、R伯母は「工事は不要」と言い張っています。

となると、答えは一つ。見積もりなどは私で止めて、費用を分割することです。2階部分は私が負担し、1階部分は伯母2人が分割払い。伯母2人には低い金額を伝えておけば、納得するでしょう。

そこで、後日、HS工事の担当者には、「伯母があの性格で言い出したら聞かない。見積もりは私に出していただきたい。で、請求は2分割にして、2階の分は石渡負担として、私の方に請求書を出してほしい」と伝えて、了承を得ます。

■水漏れは収まったが、事務手続きに漏れあり…

その結果、1、2階の水道管を総とっかえで43万円という見積もりがでてきました。そこで、HS工事には改めて「43万円のうち、13万円を石渡負担。残りを伯母が負担で分割払い」、という形でまとめました。それで、水道管工事は2019年9月に実施して、無事に終了。それ以降、特に水漏れなどは起きませんでした。

ところが、このHS工事、水漏れはちゃんと直してくれたのですが、事務手続きには漏れがあったようです。翌月、請求書を送ってきたのですが、総額43万円の請求書をR伯母に送付してしまいました。

というところでもう1回、続きます。

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石渡 嶺司(いしわたり・れいじ)
大学ジャーナリスト
1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。2018年は「大学ジャーナリスト」として、テレビ出演が急増。主な著書に『大学の学科図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)『女子学生はなぜ就活に騙されるのか』(朝日新書)など累計28冊。取材で移動が多いこともあり、ANAはダイヤモンドクラス、JALはプレミアまで到達するほどのマイラー。

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(大学ジャーナリスト 石渡 嶺司)

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