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「これまでも、これからも」700人が全員在宅勤務!その極意を社長が明かす

プレジデントオンライン / 2020年4月20日 9時15分

700人全員がフルリモートワーク。顔を見なくても「むしろ管理はしやすい」(中川代表) - 写真提供=キャスター

新型コロナウイルスの影響で、日本各地の会社で半強制的に広まったリモートワーク。各企業が対応に追われる中、フルリモートワークを6年前の創業時から実現し、現在は700人以上が働くキャスターという会社がある。24時間365日の在宅勤務で創業以来、増収を毎年続けている。代表の中川祥太氏は「フルリモートは、出社させるよりもマネジメントしやすい」と話す。

■クライアントが会いたくてもお断り

キャスターが掲げるミッションは、「リモートワークを当たり前にすること」。事業内容は人材事業運営で、秘書・人事・経理などの業務をサポートするオンラインアシスタントをはじめとした15の事業を展開している。700人のうち、雇用契約を結んでいる300人強の社員はフルタイムで働き、残りの400人弱は働きたいときだけ稼働する業務委託契約をとる。採用の段階からリモートで行われ、メンバーが出社する場や機会はない。

「フルリモートを創業時から貫いています。従業員は住んでいる場所だけでなくライフスタイルや家庭環境もバラバラです。例えば長崎県のある地域に住んでいる社員は、下水道さえ通ってない過疎地に暮らしていて、東京の実家まで帰るのに10時間かかるそうです。たとえクライアントから『会って話を聞きたい』という要望があっても、お断りしています。断りを入れること自体に苦労や不都合に感じたことはないですね」

■フルリモートのほうがマネジメントしやすい

業務のプロセスは、問い合わせがあったクライアントに、営業がビデオ会議ツールを使って商談し、契約が決まればオンライン契約ツールで締結。そして、フロントと呼ばれるポジションがクライアントとやりとりして依頼内容を詰めていき、担当チームがつくというもの。ホラクラシー型組織(役職や肩書をなくして、上司や部下といった上下関係が存在しないフラットな組織体制)だ。

「役職者は取締役とマネージャーの15〜20人で、階層はほぼないに等しいフラットな組織が特徴です。担当チームにはリーダーがいますが、あくまでも役割で、役職ではありません。チームのコミュニケーションはチャットで行われ、全体で数千あるうち、私は会社の重要なポイントとなるチャットに100弱入っています。フルリモートワークでも、チャットなどを活用すればいつでも業務状況を把握できますし、むしろマネジメントしやすいです」

リモートワークは、「目が届かないのでサボるのでは」という懸念を抱かれやすい。そのため、コロナ禍で急遽(きゅうきょ)リモートワークを始めた企業によっては、写真に画面のキャプチャを記録させたり、ビデオ通話を繋(つな)ぎっぱなしにさせたりなど、監視体制を敷くことも少なくない。だが、キャスターではそういった監視を一切行っていないという。では、どうやって仕事を課しているのだろうか。

■ネット上で監視せずに人事評価を下す方法

「仕事の様子を監視するのではなく、時間と業務量を掛け合わせて稼働状況がわかるようになっています。グループ内で、Aさんは勤務時間中に80%稼働していて、Bさんは60%しか稼働できていない、といったことがわかるのでサボりは抑制されます。

どのような仕組みかというと、クライアントの依頼内容に対して、過去の履歴や他の似たような案件を参照し、業務量を時間の単位に落として料金を請求しています。この時間内で最大限に仕事を終わらせたことがグループの成績に跳ね返り、それが給与に反映される。すると、ベテランになればなるほど決まった時間の中で最大量をこなすようになります。入社したての人からは『ベテランの人のスピードに追いつけない』という声も多いですね」

リモートワークは、仕事をしている人とそうでない人との差がハッキリと表れやすいと言われているが、まさにその性質を利用して程よい緊張感を保っているようだ。また、仕事上の堅苦しいやりとりだけではなく、雑談のような緩いコミュニケーションも行われているという。

■インターネット上で自然な雑談も

「一応雑談用のチャットもありますが、そこだけに限定されていません。どれだけ真剣なグループでもある程度雑談しています。普通のオフィスでも、業務中に余談を挟むことはありますよね。それとまったく同じで、リモートワークを6年もやっていると、普通のオフィスで起きるようなコミュニケーションがオンライン上で自然に行われるようになります」

従業員同士の雑談もオンラインで。もちろん従業員同士は原則直接会ったことはない
従業員同士の雑談もオンラインで。もちろん従業員同士は原則直接会ったことはない

■3月にリモートワーカー協会を設立した

従業員の傾向を分析すると、日本の労働環境の歪みも見えてくる。働いている約9割は女性だが、事務仕事だから女性が多いという単純な理由だけではないようだ。

「同一労働同一賃金が適応されていないのは地方で、さらに女性となると、就業条件に恵まれていない。求人は男性向けのブルーカラーの仕事が多く、女性が働こうとすると、水商売かわずかなホワイトカラーの仕事、どちらかといった状況も少なくありません。そのせいで、人気のホワイトカラーの仕事は求人倍率が高くなり、賃金は安く買いたたかれてしまっている。弊社は全国統一賃金で、仮に東京の最低賃金より多少高いくらいの金額からスタートとなっても、地域によってはそれだけで1.5倍くらいになるのです。決して意図していたわけではないですが、地方の女性に需要があるとわかりました」

中川氏は社団法人リモートワーカー協会を設立することも発表している。会社の事業を超えて、リモートワークに関する情報を発信し、政府・自治体への働きかけを行っていく。リモートワークの急激な需要に応えていくために設立を決意した。

■どこに住むという権限を会社が握ること自体、おかしい

「そもそも、誰がどこに住むという権限を会社が握っていること自体が、パワーバランス的におかしい。その権利は、働く側にあるというスタンスでいます。それに、通勤というのは、言葉を選ばずいえば、日本のサラリーマンのエンターテインメントのようなもの。部室にたまって群れている部活動のようなマインドで、それが楽しくない人も全員付き合わなくてはならない状況でした。

しかし、コロナの一件で、出社しなければ業務が遂行できないことや都市に人を集中させることは、あまりにもダメージが大きいと社会全体が痛感しました。今後は会社のBCP(事業継続計画)としても国のリスクヘッジとしても、リモートワークは必然になっていくでしょう」

中川氏は、「これからの社会にリモートワークが絶対必要だと思ってやってきました。私たちがリモートワークを広げていくつもりが、コロナにその役目を取られてしまいましたね」と、リモート取材の画面越しにやりきれない表情を浮かべていた。

(フリーライター ツマミ 具依)

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