習近平の操り人形…なぜ、WHOは中国に牛耳られたのか
プレジデントオンライン / 2020年4月23日 15時15分
■WHOに寄付するビル・ゲイツは正しいのか
米マイクロソフト創業者であり、慈善基金団体の運営者にして世界長者番付トップ3入りの常連のビル・ゲイツ氏。先日の彼のツイートに目がとまりました。
トランプ大統領がWHOへの資金拠出停止を実施したことが大きな話題となり、そのことをゲイツ氏は「WHOが新型コロナウイルス感染拡大を抑えており、代わりを務める組織が存在しないため、(資金拠出停止)は非常に危険」と警鐘を鳴らしています。
一方でWHOはコロナの対応などを巡って「中国贔屓(びいき)だ」などとも批判されています。台湾からの警告を無視するなどの行為が非難を浴びており、ゲイツ氏の意見も疑問視する声がネット上などで多く挙がっています。
■WHOはなぜ、台湾の警告を無視したのか?
米国・欧州がコロナウイルスの対応に苦慮する中、台湾はウイルスの封じ込めに成功しているといえる数少ない国です。今月14日には新規感染者数ゼロを達成しており、IQ180の大臣・オードリー氏の妙案で政府がマスクを買い取り、一部の人による買い占め防止に打って出るなどその手腕は見事なものです。
そんな台湾は昨年12月末に、中国・武漢で原因不明の肺炎が蔓延しており「人から人の感染の可能性」についてWHOにメールで通報しています。しかし、WHOはこれを無視。それどころか今年1月に「人から人への感染は少なく、緊急事態にはあたらない」などと台湾の主張を否定しました。
中国は台湾のWHO参加は「一つの中国」原則を認めない方針であり、中国への忖度をするWHOが台湾の主張を無視した格好です。
結果的に各国で感染拡大防止策が遅れることとなり、パンデミックが起きたことでトランプ大統領はWHOへの資金拠出停止につながったのです。
■なぜ中国がWHOを今牛耳っている、と言われるのか
よく「WHOはチャイナ・マネーで買収された」という主張が見られます。ただ、WHOへの拠出額をみるとそうでもありません。2018年の実績で言えば、米国が3.4億ドルで中国は4400万ドルですから、圧倒的に拠出しているのは中国ではなく米国です。
一方で、WHO事務局長は国連加盟国によって、平等に1国1票の投票で選ばれます。投票数を稼ぐには、国の数が多い新興国から支持を得る必要があります。そして中国は途上国への輸出総額は世界1位、輸入総額で言えば2位の立場にあります。
「ニューズウィーク」に寄稿した中国問題グローバル研究所の遠藤誉所長は、テドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長の選出について以下のように解説しています。
「(テドロス事務局長の出身地)エチオピアは「一帯一路」の要衝の一つで、たとえば鉄道建設などにおいて中国が最大の投資国(85%)となっている。チャイナ・マネーなしではエチオピアの国家運営は成り立たない。そのことを熟知している中国は、それまでの香港のマーガレット・チャンWHO事務局長の後任選挙でテドロスの後押しに走り回ったが、2017年5月23日のWHO総会における選挙で見事に成功している。中国の狙い通りテドロスが当選し、2017年7月1日に事務局長に就任したわけだ」(引用元:習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす)
投票も健康支援も新興国と密接に関わっている特殊性と、新興国と関係の深い中国の関係性から「WHOは中国に牛耳られている」と指摘されているのです。
■テドロスと習近平はじっこんの仲
遠藤氏は上記記事で、テドロス事務局長について「習近平国家主席とは入魂(じっこん)の仲」「中国の王毅外相とも非常に仲が良い」と述べています。
実際、WHOのテドロス氏は明確に中国を称賛する発言をしています。
「中国の対応も過去にないほど素晴らしい」
「中国の尽力がなければ中国国外の死者はさらに増えていただろう」
「中国の対応は感染症対策の新しい基準をつくったともいえる」
「習近平国家主席のリーダーシップを他の国も見習うべきだ」
「中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」
目下、感染拡大の渦中にある米国は、今回のパンデミックの責任は中国政府の隠蔽工作や、虚偽の情報発信にあり、防疫対策を怠った責任について厳しく非難しています。米国政府によると、中国政府はウイルスの発生した事実、感染者数、症状の事実を隠蔽、歪曲したことで他国の防疫対策の遅れを招いたと痛切に指摘をしています。
「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的に設立されたWHOが中国政府寄りの発言を続けたことで、「WHOは過度に中国寄りだ」と指摘されるのも無理からぬことに思えます。
■WHOがパンデミックを引き起こしたのか
歴史を振り返ると、度々パンデミックは発生しています。直近では2009年の新型インフルエンザによるパンデミックがあり、日本でも2000万人もの感染者を出したことで記憶に新しいものとなりました。
今回の新型コロナウイルスについて、パンデミックになった理由はいくつかあります。まず、WHOが英語語彙で用いる“novel virus”、“new strain”には「これまでにヒトで検出されていなかった新しく発見されたウイルス」という意味合いがあります。今回の新型コロナウイルスについても、WHOは「novel coronavirus」としており、人類にとって未知であり、かつ抗体を持った人がいない中で流行し始めたことが感染拡大の一端を担っています。
未知の肺炎が中国の武漢で発生したのですから、いち早く国際社会やWHOへ正しい情報を報告することで各国が防疫対策を取ることができたでしょう。今の時代は網の目のようにグローバルサプライチェーンが張り巡らされており、ビジネスや観光などでも人の往来や、物流で物の流通が広がっています。未知のウイルスがその往来に乗って拡大することは予想できたことです。防疫対策をさせる機会を失わせたことで、中国政府の情報隠蔽や歪曲に厳しく批判が集まっているのです。
武漢で眼科医をする李文亮氏は、早くも昨年12月に新たなウイルスのアウトブレイクの危険性に気づき、インターネットを通じて投稿しました。その後、中国公安省の職員が医師のもとを訪れ、「虚偽の発信で混乱を招く行為は直ちにやめるように」と、情報の発信をやめる旨を書簡に署名させました。
■天然痘撲滅の哲学を失ったWHO
人類はウイルスによって、度々存亡の危機に瀕する歴史を繰り返してきました。人類が歴史上、唯一根絶できたのは「天然痘」であり、この根絶にはWHOの活躍抜きには語ることはできません。
天然痘は古くは紀元前より存在するウイルスといわれており、イギリスの医学者エドワード・ジェンナー氏(1749~1823年)が牛痘由来の天然痘ワクチンを開発するまで、人類はこのウイルスの脅威に生殺与奪を握られてきました。WHOは1958年に「世界天然痘根絶計画」を可決して根絶宣言を開始させました。
当初は全人類に対して種痘を植える「皆種痘」が推奨されるも、医療整備が整っていない新興国においては、皆種痘の実現が困難とされました。しかし、1967年にWHOは方向転換、患者を発見することに全力を挙げ、患者および接触した人々に限定して天然痘種痘を行うという戦略的なウイルスの封じ込めを行う指針を打ち出しました。
当時は根絶困難とされたインドにおいても、この作戦は功を奏し、1980年WHOは世界に撲滅宣言をすることになったのです。有効な作戦立案だけにとどまらず、ウイルス撲滅に尽力したことでWHOの活躍は誰もが認めることとなりました。この功績は「人類をウイルスによる病魔から救う」という明確な哲学に裏打ちされたものだったのです。
昨今のWHOはこの天然痘撲滅時の哲学を失い、中国への忖度に終止する腐敗した機関のようにも見えてしまいます。かつての獅子奮迅の活躍を取り戻して、新型コロナウイルス終息に向けて取り組んでもらいたいものです。
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フルーツビジネスジャーナリスト
果物専門店「水菓子 肥後庵」代表者
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(フルーツビジネスジャーナリスト 黒坂 岳央)
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