絶望…安倍晋三のコロナ経済対策は「大大失敗」に終わる
プレジデントオンライン / 2020年4月28日 9時15分
■矢継ぎ早に経済対策を打ち出す、米トランプ大統領
新型コロナウイルスに関連した経済対策として、ドナルド・トランプ米大統領と米連邦議会による「第4弾」の財政支出の調整がつき、米国政府は巨額の経済対策を矢継ぎ早に打ち出してきた。米国政府は3月6日の第1弾、3月18日の第2弾、3月末に成立した第3弾・約220兆円の追加予算に加えて、第4弾の主な内容は中小企業の給与肩代わりをメインとした予算を組み上げた。これらの追加予算には企業存続・雇用維持に全力を注ぎ、米国の産業競争力を保ってV字回復を狙う、というトランプ政権の強い意志が色濃く反映されている。第1弾から第4弾の合計予算額は約300兆円に迫る超大型の補正予算群となっており、金額面からもその本気度を推し量ることが可能だ。
トランプ大統領は公約である200兆円の巨額のインフラ投資予算を上記の第4弾に盛り込もうとしていたフシもあり、今後第5弾の財政支出を検討する段階では巨額のインフラ投資が組み込まれてくる可能性がある。また、11月の大統領選挙の結果として、仮に民主党大統領・連邦議会が誕生したとしても、このインフラ投資政策に対する政権の意欲は変わらないことが予測される。そのため、インフラ投資による巨額支出は、米国政府内ですでに立案されており、遅かれ早かれ公表されることになると看做すことが妥当だ。
■日本の経済対策は「Too little, Too Late, Too Fake」
米国が巨額の追加予算を次々と組み続ける理由は、間もなく未曽有の経済不況が各国経済を直撃することを理解していることにある。IMFが4月15日に発表した「World Economic Outlook」によると、2020年の世界経済はマイナス3%と急激に縮小することが予測されており、米国のGDP見通しはマイナス5.9%の大幅減という数字となっている。失業者数も歴史上の最大に達することが予想されるため、今このタイミングで適切な経済対策を断行しなければ、米国の経済・社会が大混乱に陥ることは想像に難くない。同レポートでは来年には各国ともにV字回復が予想されているものの、それも年内で新型コロナウイルス問題が収束し、金融機関のシステミックリスクなどが起きず、その産業競争力が維持されている、という希望的観測を前提としたものに過ぎない。したがって、トランプ政権と米連邦議会が尋常ならざる覚悟を持って経済対策に臨んでいることは必然的なことだ。
一方、米国と比べて日本の経済対策は「Too little, Too Late(少なすぎる、遅すぎる)」の典型と言ってもいいだろう。さらに「Too Fake(偽物すぎる)」を付け加えたほうがより適切かもしれない。
■与党内の事前調整すらままならない政権運営のグダグダぶり
米国は国内でパンデミックが発生している大混乱の中、連日のようにホワイトハウス・共和党・民主党が必死になって予算折衝を実施し、前述のような補正予算を次々と組み上げてきた。日本は米国のようなパンデミックによる混乱状態に陥っていないにもかかわらず、4月末になって第1次補正予算がようやく組み上がりそうというありさまだ。IMFのレポートによると、2020年の日本のGDP見通しもマイナス5.2%となっており、安倍政権の危機感のなさはあまりに異常すぎる。その上、閣議決定された補正予算が公明党からの一喝で組み直しになるなど、与党内の事前調整すらままならない政権運営のグダグダぶりは尋常ではない。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う補正予算の事業規模は約117兆1000億円とされている。政府はこの事業規模の数字を強調して説明するが、一般会計からの歳出(真水)は26兆円前後だと推量される。当初の補正予算案で16兆円前後とされていた真水の金額に比べれば一律給付金の追加分が上乗せされたことで若干増額したものの、第2四半期でマイナス25%(前年比)とされる日本経済を下支えする経済対策としていかにも心もとない。安倍政権は日本経済に襲い掛かる経済危機の波を正確に認識できていないのではないかとさえ心配になる。
■政府の対応が輪をかけて経済的な問題を引き起こす
また、修正された補正予算では国民の大半の人が受給できない30万円給付金は削除されることになり、全員が一律10万円の給付を受けられる形となった。これ自体は評価したいところであるが、米国ではすでに国民一人頭12万円の給付金が既に4月12日から配布され始めている。日本では早くても給付金の受け取りは5月中とされているのに比べ、日米では給付金を人々の元に支給するスピードも雲泥の差だ。経済対策は必要な時期を逸すれば途端に有効性が落ちてしまうものだ。日本政府の政策は、一事が万事、少なすぎる、遅すぎる、偽物すぎる、を地で行く状況となってしまっている。
では、日本を未曽有の大不況に突き落とす原因は一体何であろうか。もちろん、新型コロナウイルスの存在が問題であることは言うまでもない。しかし、政府の対応自体が輪をかけて経済的な問題を引き起こしている。
日本の緊急事態宣言は、欧米のような強制力を持った都市封鎖を行うものではなく、国民に自粛を求める仕様となっている。しかし、それでもメディアによる私刑と組み合わさった政府の「要請」は、事実上の強制力を持っていることは自明のことだ。たとえば、大手企業であれば自らのブランドイメージを保つため、政府に率先して協力せざるをえないことは大人なら誰でもわかる。
■無能ぶりを世間に晒し続けている安倍晋三
一方、資金繰りに余裕がない中小の店舗では営業を継続するところもあるかもしれないが、こちらは政府に大義名分を与えられた“正義マン”による事実上の摘発活動が盛んになっている。たとえば、4月20日まで大阪府ではコールセンターに、特措法の休業要請の対象となっている店が営業しているという通報が500件以上寄せられており、テレビメディアも自粛に必ずしも十分に応じていない商店街や行楽地などを槍玉にあげる報道を継続している。このような動きによって自治体が「要請」に従わない施設の名称を公表し、SNSなどでの私刑を実質的に推奨する結果を招きかねない状況も生まれている。
東京都などが独自の補償措置に動き始める中、安倍政権は補正予算の一部を地方自治体が補償に使用することを渋々認めた。しかし、家賃の補填については、いまだに政府案を作るのか、与党案を作るかさえも定まらず、その無能ぶりを世間に晒し続けている。危機に際して民間に責任をほぼ丸投げにするなら、政府に支払う税金など溝に捨てるのと同義だ。
■今のままでは民間企業の負荷があまりに重すぎる
本来、政府が実施するべきことは、民間企業が営業活動を再開・継続していくためのガイドラインを示し、可能な限り平時の環境に近い状況を維持することだ。現在の環境下で個々の民間企業が世間の批判にさらされることを覚悟し、その営業活動を再開・継続する負荷はあまりにも大きすぎる。したがって、政府が身体を張ってその責任を引き受けることは当たり前のことだと言えるだろう。
安倍政権はいつ終わるとも知れない戦いに国民を巻き込んでいる。仮に緊急事態宣言が成功裏に解除されたとしても、「はい、今から通常通りの営業活動に戻ってください」と言ったところで、失われた産業や雇用が簡単に元通りになるはずがない。
米国ではすでにトランプ政権がロックダウンを継続する州知事に対し、ロックダウンの解除を要請し、社会機能を復帰させるための経済人の会議を招集し、その復帰プロセスについてのガイドラインを示している。政府としての能力だけでなく、その意思決定の責任を取るという覚悟の差は著しい。
■安倍晋三が日本経済のためにやるべきこと
したがって、筆者はすでに安倍政権の新型コロナウイルス問題に対する経済対策について、危機意識、能力、覚悟の全ての面で期待することを半ば諦めている。しかし、安倍政権には日本経済のためにやるべきことがまだ1つだけ残っている。
それは同政権が5%から10%まで2回の増税を通じて引き上げてきた消費税率を元通りに戻すことだ。この際、百歩譲って新型コロナウイルスは予期することができなかったアクシデントで対応ができなかったとしても良い。ただし、消費税増税によって昨年10~12月期に記録したマイナス7%超のGDPマイナスは、安倍政権自体の経済運営の失政そのものだ。新型コロナウイルス問題で曖昧になっている感もあるが、消費税増税が日本経済に与えた影響は大きく、確実にその回復に向けた動きの足枷となるだろう。
安倍政権の新型コロナウイルスに関する経済対策への期待は既になくなった。ただし、最低限のこととして、消費税減税を実現することで自らの政権が日本経済に与えたダメージの尻ぬぐいをしてから政権を退陣するべきだろう。
※編集部註:初出時、「消費税増税によって昨年10~12月期に記録したマイナス7%超のGDPマイナス(前年比)」としていましたが、前年比ではないため、「(前年比)」を削除し、訂正します。(4月28日14時22分追記)
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早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。米国共和党保守派やトランプ政権と深い関係を有する。
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(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)
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